サザビーリーグのリトルリーグカンパニーといえば、好調セレクトショップ、ロンハーマン(RON HERMAN)の運営元。ただし、同社はセレクトショップの運営だけでなく、海外ブランドを引っ張ってくる(輸入代理する)ことにも長けている。例えば大人気ダウンの「カナダグース(CANADA GOOSE)」や、類似品を多数見かけるネオプレン素材のバッグ「ステート オブ エスケープ(STATE OF ESCAPE)」も同社が輸入代理を手掛けている。そんな目利きの同社は2020年春夏から、ニューヨーク発のウィメンズブランド「マーレット(MERLETTE)」の輸入代理を開始する。ヒット確実と期待される「マーレット」とは一体どんなブランド?
「マーレット」は、オーストラリア・シドニー生まれで、パリとロンドンでファッションの仕事をしていたというマリーナ・コートバゥイ(Marina Cortbawi)が16年に立ち上げたブランド。ティアードドレスがアイコンで、価格は4万~6万円台が中心だ。
先ほど「ヒット確実」と書いたが、実はこれは間違い。なぜなら、既に日本市場で結構売れているからだ。ロンハーマンの他、トゥモローランド(TOMORROWLAND)、ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)などが同ブランドのドレスをここ数年販売しており、記者自身、この夏に渋谷などの街で何度か「マーレット」のドレス姿の女性を見かけた。ファッション業界の常として、「ステート オブ エスケープ」同様に類似品も多数出ている。大手SPAなどは今夏、恐らく「マーレット」にインスパイアされたであろうティアードドレスを、その10分の1以下の価格で販売していた。そうした類似品と「マーレット」で一番違うのはシルエット。「これだけ生地分量をたっぷり使っているから、ティアードのラインがきれいなんですよ」と同社の広報担当者。
同社が輸入代理を手掛けるようになったことで、20年春夏は地方の有力個店にも卸先が広がった。とはいえ無理な拡販はせず、ブランドらしさを保ちつつビジネスを進めていくという。そういった、売ることとブランドイメージを保つことのさじ加減が同社は本当にうまい。その勘所を知りたいと思っている同業他社は多いだろう。
ただし、それもこれもロンハーマンという人気セレクトショップがあるからこそ可能ともいえる。ロンハーマンで仕入れてみて、「いい!」と判断したブランドは輸入代理契約に切り替える。そして、他社に卸すと共にいつまでもロンハーマンで大切に売り続ける。ロンハーマンで売り続けている以上、ブランドイメージは下がらない。ティアードドレスのデザインを真似することはできたとしても、こうしたビジネスモデル自体は、一朝一夕で他社が真似できるものではなさそうだ。