※この記事は2019年7月10日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
攻める巨人、ウォルマート
なんていうか、もはやスケールが違いますよね、ウォルマート(WALMART)。年商55兆円、米国内に約4800店舗、泣く子も黙る世界ナンバーワンの小売企業です。アマゾン(AMAZON)に代表されるECの台頭により窮地に追い込まれましたが、2016年にEC界の奇才マーク・ロア(Marc Lore)を“acqu-hire(人材買収)”するなどデジタル化を急速に進めており、最近では生鮮品を顧客の冷蔵庫に直接配達するというかなり画期的な新サービスを発表するなど、ものすごい勢いで進化しています。同じ小売業や百貨店、モールがオンライン化の波に飲まれて衰退する中、一時大量閉店はしましたが、今は米国中にある店舗網を生かし、むしろ攻めに転じている観も。なんと申しますか、やはり小売りの王者だなと、感心します。
米国内におけるアマゾンとの覇権争いは、互いにあらゆる角度から消費者の生活の一部となるべく、あの手この手を繰り出しており、結構ドラマチック。二大勢力争いの構図って分かりやすくて好きです(笑)。
そんな攻防を米国で繰り広げつつ、今回の中国への投資です。この後もウォルマートが成長を続けていくためには、米国外での市場を獲得しなくてはなりません。その上で、巨大市場である中国とインドは外せないでしょう。中国ではまだ400店超ですから、ウォルマート的にも中国という市場規模的にもまだまだ序の口です。進出してすでに20年余り。中国2位のEC企業JDドットコム(JD.COM)との連携で未来が見えたということでしょうか。米中貿易戦争であらゆる米国企業が中国から生産拠点を移そうとしているタイミングで、追加関税の見送りが決まった直後の投資宣言――鮮やかです。
中国といえば、もはや生活インフラ企業になっているアリババ(ALIBABA)が展開するスーパーマーケット「フレシッポ(旧フーマーフレッシュ)」などオンライン発がオフラインとの融合を加速しています。アマゾンはアリババの牙城を崩せず、中国国内向けのマーケットプレイス事業を7月18日までに閉鎖します。いろいろな意味でホットな中国市場をウォルマートがどう攻略していくのか、注視していきたいです。
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