ジュエリーデザイナーのマリーエレーヌ・ドゥ・タイヤック(Marie‐Helene de Taillac)がリッツォーリ(RIZZOLI)社から出版した書籍「ゴールドとジェムストーン マリーエレーヌ・ドゥ・タイヤックのジュエリー(GOLD AND GEMS THE JEWELS OF MARIE-HELENE DE TAILLAC)」のサイン会のため来日した。カラフルな半貴石を使用した「マリーエレーヌ ドゥ タイヤック」のジュエリーは世界中の女性から高い支持を得ている。彼女が自身のブランドをスタートさせてから20年以上が経過した。来日したタイヤックにクリエイションについて聞いた。
WWD:ジュエリーデザイナーになろうと思ったきっかけは?
マリーエレーヌ・ドゥ・タイヤック(以下、タイヤック):ジュエリーは子どもの頃から大好きだった。1996年に最初のコレクションをデザインしたとき、ファッションはグランジ全盛期で「ジル・サンダー(JIL SANDER)」などミニマルなブランドの人気が高かった。私はカラフルなファッションが好きで、それに合うジュエリーが市場にはなかった。「ティファニー(TIFFANY & CO.)」のエルサ・ペレッティ(Elsa Peretti)のデザインは素敵だと思っていたけど、ゴールドが中心のジュエリーだった。ファッションに合うジュエリーが欲しいと思ったから96年に自分でデザインし、翌年に販売がスタートした。
WWD:自身の本を出版した感想は?
タイヤック:とてもエキサイティングよ。私のジュエリーは一点モノが多いから、書籍は、過去のさまざまな作品を記録する意味でも重要。ブランドを初めて20年以上が経過し、ジェリーも変化した。20年前を知らない若い顧客にもそれを見てもらいたい。私のシンプルなデザインはクラシックだったジュエリーの市場に影響を与えたと思っている。私自身もジュエリー関連の書籍のコレクターで、「カルティエ(CARTIER)」の1920年代の作品を集めたものや、古代ギリシャのジュエリー、20世紀の革新的なジュエリーデザイナーだったスザンヌ・ベルペロン(Suzanne Belperron)の書籍など、ありとあらゆるものを持っている。
WWD:クリエイションの過程で一番楽しいのは?
タイヤック:私のクリエイションの中心は宝石。何百万年もかけて地中で自然に形成された宝石に魅了される。フランス・パリには多くの宝石のディーラーがいるから彼らから石を調達し、インド・ジャイプールのアトリエでカットすることもあれば、マダガスカルなど採掘される場所でカットされたものを調達することもある。一番楽しいのは、石の形やカットをデザインするときね。カットされた石をテーブルに並べて頭の中でビジョンを描くの。クリエイションで絶対妥協しないのはカラーよ。ダイヤモンドばかり扱う人と色石ばかり扱う人では瞳の構造が違うみたい。私はより多くのカラーニュアンスを見分けることができる。
WWD:ブランドフィロソフィーは?
タイヤック:愛情を込めたブランドであるということ。石は感情を映し出したりエネルギーやムードを変えるものだから、自分が悲しいときは石に触らないようにしている。顧客には私のジュエリーを着けることでハッピーになってほしいから。職場環境にも気を使ってスタッフ全員が気持ちよく仕事できるようにしている。私一人で立ち上げた小さいブランドだけど、自分に正直に物作りができるし独立して自由に好きなことができるのは、ものすごくぜいたくなことだと思う。例えばブティックのサロンのテーブルに4万6000カラットものアクアマリンを敷き詰めたりと、クレイジーなこともできる。
WWD:他のジュエリーブランドと違う点は?
タイヤック:ステータスシンボルではなく、自分が楽しむための個人的なジュエリーであること。書籍のサイン会でいろいろな都市に行くけど、私と同じ感覚を持っている人たちが集まってくる。私は美しい石を使ってジュエリーを制作することに喜びを感じるし、顧客はそれを着けてハッピーだと感じてくれる。お互いにハッピーになれるのが私がデザインするジュエリーよ。クラシックなジュエラーは威圧的で入りにくいけど、私のブティックはリビングルームのようにリラックスしてもらえるような造りにしている。また、誰もがいろいろ試せるようなジュエリーを用意している。
WWD:カラフルな石がシグニチャーだが、一番好きな石は?石の組み合わせはどのようにする?
タイヤック:一番好きなのはパライバトルマリン。私はピンクが大好きだから、ルベライトも好き。レッドポピー色のスピネルの光沢感のある赤はすばらしい。たくさんのカラーバリエーションがあって布のような輝きを持つサファイヤも大好き。これらの石は私に話かけてくるようよ。石の組み合わせは、絵を描くようなもの。テーブルに石を置いて、互いにその美しさを引き立てるような組み合わせを見つけるの。瞑想的な仕事ね。
WWD:多くのジュエラーが18金を使うのに対して22金にこだわる理由は?
タイヤック:22金はアンティークゴールドのような色が美しく、時を忘れるかのよう。18金は人工的で私にとってはゴールドではない。
WWD:自分にとってジュエリーとは?毎日必ず着けるジュエリーは?
タイヤック:いつも喜びの源で、お守りでもある。宝石は地中の星。それらを見るとほほ笑まずにいられない。ムードによりけりだけど、毎日イヤリングとブレスレットは着けるわ。着けないとまるで裸のような気持ちになる。口紅と同じね。