ファッション

「冬のママアウター問題」優先するのはデザイン・機能性・価格のどれ? 働くママのざっくばらん“本音”トークVol.1 ファッション編

 「おしゃれで、価格が“ちょうどいい”ママアイテムが想像以上に少ない」。連載のきっかけはママになった元「WWDジャパン」記者の2人が、こんな共通意見を持ったことだった。中でも避けて通れなかったのが「冬のアウター問題」。抱っこしている子どもが快適で、見た目を妥協せず、かつ短期間で役目を終えるなら極力出費は抑えたい……。ママ連載第1回では、抱っこした子どもごと羽織れるママ(マタニティー)コートについて対談。自分一人で消化もしくはモヤモヤしてしまいがちな育児に関するあれこれを、これから冷静かつ率直な意見を持って議論します。

なかなか発見できない
“価格×見た目”両立のコート

一井智香子(以下、ちかこ):記念すべき第1回のテーマは「冬のアウター」問題。そもそもなぜ取り上げようと思ったのか、きっかけから説明する必要があるよね。

村上杏理(以下、あんり):この壁にぶち当たったのはちょうど1年前。子どもが生後6カ月を迎えた頃に、東北で冬を過ごしていて。手持ちのコートがどれもオーバーサイズだったので、ブランケットを抱っこ紐の上からかけて乗り切ろうと思っていたけど、耐えられないほど寒い!11月下旬から、さらにオーバーサイズのコートを探したけれど、“子どもの保温性”と“スマートな見た目”を考慮するとピンとくるものがなくて。結局、家からあまり出なくなっちゃって(笑)。

ちかこ:私は臨月が冬だったので、お腹が大きいときに着られる服がなかった。しかも妊娠期間中に16キロ太って、人よりお腹が出ていたので、それはもう苦しくて(笑)。自由に身動きがとれなかった。その頃からもう重い洋服は着られないと悟ったよ‥‥‥。

あんり:ただのデブじゃん(笑)。でも私も妊娠期間中に同じくらい太った。

ママになって知った
“ママコート”の衝撃

ちかこ:妊娠中の体型は一時的。せっかくなら子どもが生まれてからも着られるモノが欲しいし、実際にどんな機能が必要か、イメージが湧かないから洋服が買えなかった。その頃に“ママコート”の存在を知ったよ。

あんり:私は妊娠後期から実家がある北海道で過ごしていて、外は極寒だから徒歩3分以上の場所は車移動。少しの寒さは気合と根性で耐えてて。

ちかこ:それ、あなただからだよ(笑)。根性論とか、今のご時世気安く言うと炎上しちゃうよ。そんなあんりちゃんはいつ“ママコート”の存在を知ったの?

あんり:子どもが生まれてから。街で着ている人を見かけて、斬新なデザインとシルエットに激震が走ったの。思わずグーグルで検索したほど。抱っこしている赤ちゃんごと包み込めるダウンコートの前身ごろに、“ダッカー”と呼ばれる着脱可能な布がついている!

ちかこ:字面だけ見ると機能的で快適そうなダウンコートだよね。でも劇的にダサいんだなこれが。

あんり:でも普通のコートだと、前が閉まらないから寒い……。

ちかこ:だからといって、すぐ着られなくなる可能性が高いコートは買いたくない。妊娠中は、「ユニクロ(UNIQLO)」の「ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)」のダウンジャケットを買ってしのいだよ。子どもが生まれてからは、「ナゴンスタンス(NAGONSTANS)」でコートを購入。もこもこボアで大きくて雪男の"イエティ“みたいになれるからお気に入り。息子を抱っこ紐ごとすっぽり覆うことができて、何より温かい!クリエイティブ・ディレクターの植田みずきさんに後日そのことを話したら、このアウターはママ人気が高いと言っていたの。ご本人も持ってるらしい。でもこれ、すべてはオーバーサイズがトレンドだから成り立ってますよね。ひと昔前ならピンとくるモノは探せなかったかも。

“ママコート”を実際に試してみた

あんり:実は子どもが生まれてから、親戚にもらった“ママコート”のお下がりがあって、久々に出してみたの。このコートを含め定価1万5000円前後で購入できるモノは価格は合格でも、見た目や機能は納得がいかない。

ちかこ:このコート、普通の手持ちのダウンと比べても全然温かくないね。ポリエステル100%で、裏地はついているけど絶妙なピンク色!(白目)

あんり:しかも裾についているインナーギャザーに子どもの脚が引っかかって、自分の首を苦しめられる。

ちかこ:危ないね、それは。子どもにとっても引っかかりはストレスのはず。そして今年もやってきた「冬のコート問題」。もううちの巨大児は、ついに抱っこ紐におさまらなくなっちゃった。すぐ走って外に出ちゃうから、今年はパッと取れてパッと羽織れる上着がマストだと痛感。

あんり:ママになるまで、“動きやすい”ことがなぜ重要か、私はイマイチ分かっていなかったけれど、外出先で着にくい=子どもの面倒をすぐに見られないことは、大げさに言うと見失ったり事故につながったりする。2歳前後の今は、もたつかずに着られることは重要。

「ザ・ノース・フェイス」のママダウン、8万円は高い?安い?

ちかこ:ところで「ザ・ノース・フェイス」からマタニティーラインが発表された時、すぐあんりちゃんに連絡したよね。

あんり:そこからすぐにプレスルームに取材のアポを入れた。

ちかこ:元「WWDジャパン」記者として、「巷で話題になっているけれど、実際のところどうなの?」っていうスタンスで取材に挑んだのに、結論から言うと‥‥‥良かったよね。

あんり:スポーツウエア由来のマタニティーはありそうでなかったよね。双子のママでもあるキッズMDの女性がこの企画の発端。ダウンを試着して思ったのは、着丈のバランス、脚当たり、前身ごろだけ余裕を持たせた立体裁断など、よく考えられている。私たちは子どもの代わりにバックパックを抱いてダウンを着てみたけれど、スッキリ見える。

ちかこ:お腹が大きくない状態で着てもシルエットがキレイなのは、ポイントが高い。6月のプレス展でお披露目したときには、社内のママスタッフとママ編集者からの反響がすごかったらしいよ。10月7日に発売して11月中旬の取材時に消化率は80%弱。注目度の高さを感じるよね。次の春夏には第2弾も発売するらしい。

あんり:でも7万8000円という価格をどう捉えるか。10万円のコートをすんなり買える業界人は手が伸びるけど、一般的には高いんじゃないかな?

ちかこ:“ママダウン”だと思うと高い!でも、「ザ・ノース・フェイス」は通常のダウンコートが4万~5万円代。ゴアテックスを使っていること、付属品としてダッカーが付いていることを考えたら、お得かも。でも個人的にはまだロングダウンを着こなせる自信がなくて、買うのを躊躇してしまったよ。

あんり:体型が戻った後もスマートなダウンコートとして着られて、ダッカーはベビーカーにも取り付けられる。オシャレをしたいけど、着にくいものは嫌な子育て真っ最中のママたちの購買意欲をくすぐるポイントが満載だね。

ちかこ:実際、ファッション業界で働くママに聞いてみると、マタニティーアイテムを買っている人ってすごく少ない。みんな手持ちの服で間に合わせているってことは、思うところが一緒なんじゃないかな。

あんり:もちろんスマートなマタニティーウエアはたくさんあるけれど、ママ向けの通販サイトを見るとその半数はまだパステルカラーの野暮ったいウエア。男女平等や多様性が謳われているのに、そこだけ“良い母親像”とか“自己犠牲”とか、ひと昔前のイメージで止まっているような気がするのは私だけ!?

ちかこ:落ち着いてあんりちゃん!深く考えすぎじゃない。で結局、今年の冬はどうするの?

あんり:コートの立ち上がりに出遅れちゃって。来年までまたじっくり考えようと思う(笑)。

一井智香子/(いちのい・ちかこ)1986年神奈川・逗子生まれ。慶應義塾大学商学部を卒業後、三越伊勢丹に入社。伊勢丹新宿本店メンズ館1階の紳士雑貨でアシスタントバイヤーを務めた後、2011年にINFASパブリケーションズ入社。「WWDジャパン」記者として、主にメンズファッションを担当。ピッティ、ミラノ、パリメンズコレクション取材を始め、セレクトショップや百貨店、ファッションビルのビジネス動向を取材。現在はフリーランスとして、ファッションやライフスタイル系の記事執筆を手がける。1男児の母

村上杏理/(むらかみ・あんり):1986年、北海道生まれ。大学で日本美術史を専攻し、2009年にINFASパブリケーションズ入社。「WWDジャパン」記者として、東京のファッション・ウイークやセレクトショップ、販売員取材などを担当。16年からフリーランスで、ファッションやライフスタイル、アートの記事執筆・カタログなどを手掛ける。1女児の母

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