「グッチ(GUCCI)」や「バーバリー(BURBERRY)」のオープニングパーティーに来場し、「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」のミレニアルズ向けのショーや東京ガールズコレクションのランウエイを歩く高校生モデルのよしあきが12月26日、初のエッセー本「友達ゼロで不登校だった僕が世界一ハッピーな高校生になれたわけ」(KADOKAWA)を出版した。本の中では、中性的な言動がいじめの対象となり不登校だった過去を告白。その後、台湾での療養生活や帰国後のフリースクールでの恩師との出会い、原宿デビューなどを経て“世界一ハッピーな高校生”と思えるようになるまでの歩みをつづった。そんなよしあきに本の出版や現在の活動について話を聞いた。
WWD:今回の出版の経緯は?
よしあき:数年前にもお話をいただいていましたが、“暗い過去を売りにしたかわいそうな子”という目では見られたくなくて、保留にしていました。その後、自分と似たような経験をした子が悲しい結末で終わるニュースを目にする機会があり、僕がこんなに元気になれたんだから少しでも希望を届けられればと思い、もう一度お声が掛かったタイミングで出版を決めました。
WWD:不登校になったきっかけは?
よしあき:自分では最初はいじめだと思っていなかったんです。小学生の頃からサッカーよりおままごとが好きで、「女っぽい」とからかわれたことから、ちょっかいがどんどんエスカレートして、同級生から暴力を受けることもありました。深く傷ついていましたが、当時は誰にも話すことができませんでした。お母さんや姉のミチとも仲は良かったけれど、家では強がっていたのかもしれません。僕がキャパオーバーになり学校へ行けなくなって初めて、家族がいじめの事情を知りました。
WWD:本の中では家庭内暴力や自殺未遂などの過去についても赤裸々に語った。“ハッピー”と思えるようになるまでにはどんなことがあったか?
よしあき:不登校の時期には精神的に不安定になり、家庭で暴れてしまうこともありました。ミチが受験を控えていたことから、11歳のときに生まれの地である台湾に移住しました。日本の社会や人間関係からくるプレッシャーがなくなり、少しずつ元気になっていくのを感じました。一方でそのときにSNSで見た原宿のポップなファッションに憧れを感じて、帰国したら原宿に行くことを夢見るように。当時流行していたスキニーパンツがはきたくてダイエットもしたんです。
昔は悪目立ちをしないようにしていた自分が派手なファッションを楽しむようになった
WWD:13歳で帰国し、すぐに原宿へ行った?
よしあき:家族や親戚としか話さない日々が何年か続いていたので勇気が必要でした。お母さんたちが探してくれたフリースクールに通い、そこで恩師の先生との出会いがありました。恩師をはじめ仲間や人と関わることに慣れていったんです。そしてやっとミチに原宿に連れて行ってもらい、竹下通りを歩きました。はじめは緊張したんですが、髪の毛を緑に染めたり、ケミカルウオッシュのデニムにタイダイ柄のTシャツを合わせたり、ミチとおそろいのコーディネートをしたりと、だんだんと派手なファッションを楽しめるようになりました。昔は悪目立ちをしないようにしていた自分が、まさかこんな派手な格好して自信が持てるようになるなんて、ファッションの力って本当にすごいと思います。そんな中、街頭でテレビのインタビューを受け、そこから徐々にモデルの活動をさせていただくようになりました。
WWD:若者マーケティング研究機関「シブヤイチマルキューラボ(SHIBUYA109 lab.)」が発表した「トレンド大賞2019」のヒト部門では1位によしあき&ミチが選ばれた。
よしあき:2人ですごく喜びました!ミチは「わたしはずっと、遊びでも球拾いしかやらせてもらえない子どもだった」と言っていて、僕もなかなか仲間に入れてもらえない子でした。そんな僕にイベントでファンの子が「会えてうれしい」って涙を流してくれたりするんです。全てにおいて不正解の人間だと思っていましたが、今まで自分がやってきたことは間違ってなかったのかもって思えるようになりました。
WWD:現在インスタグラムのフォロワー数は36万を超える。ファンを獲得するために何か工夫していることはあるか?
よしあき:僕たちは人並みにしかやってないです。ただ、SNSでは悲しいことや暗いことは発信しないようにしています。もちろん落ち込むこともありますが、そんなときは大好きな酢豚定食を食べたり(笑)、友達に話したりしてストレスを解消しています。不登校やいじめを経て、ため込まないようにしようと決めたんです。ため込んで人に物事を伝えなかったのでいじめがエスカレートしたんだと思います。
僕の人生は誰にもあげたくない
WWD:過去に戻ってやり直したいと思うことはあるか?
よしあき:やり直したいとは思いません。もし普通の学校生活を送っていたら今の僕になれていないかもしれない。過去があったから今の僕があるんだと思います。フリースクールで恩師に会えたこと、家族が支えてくれたこと、モデルの仕事に出合えたことなどいろんな奇跡が起こったので、僕の人生は誰にもあげたくないです。
WWD:今回出版する本はどんな人に読んでもらいたい?
よしあき:人間関係で困っている人や不登校になってしまった子に読んでもらいたいです。僕のお母さんのインタビューも掲載しているので、同じような境遇のお母さんにも読んでほしいです。本を作る過程で、僕とお母さんの間には当時すれ違いがあったことを知りました。僕は「もっと構ってほしい」とか「お母さんにそんなに好かれていないかも」と思っていたら、お母さんはカウンセリングに通ったり学校を探していたりと、僕のためにいそがしくしてくれていたんです。本当に今が幸せすぎて過去を肯定できるようになったので、僕の経験を通してどんなにつらいことも絶対に超なんとかなるって、伝えられたらうれしいです。