※この記事は2019年8月9日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
「ソニア リキエル」が清算ですって
こんなにあっけなくていいのでしょうか?「ソニア リキエル(SONIA RYKIEL)」の最後。米「WWD」も長年追い続けていたブランドなのに、惜しむ声すら集めずにあっさりした記事で終了とは。2016年にソニア・リキエルが亡くなった時の方がよほど大騒ぎでしたし、エモーショナルでした。
「創業者の死と共にブランドが終わっていた」と言われれば決してそうではなく、18年は創立50周年ということで、3月のショーにはバナナラマが登場したし、クチュール期間中にも記念ショーをしたし、10月にはパリの小道が「ソニア・リキエル」と命名されたりと、だいぶ盛り上がっていました。
そんなアニバーサリーイヤーの翌年に清算って……。
でもさすがに売上高が11年の半分以下になっていて、赤字は15倍以上に膨れ上がっていたというのですから仕方がないですよね。12年にブランドを買収したファースト ヘリテージ ブランズ(FIRST HERITAGE BRANDS)は一体何をしていたのでしょう?香港の大手商社リー&フォン(LI & FUNG)傘下の投資会社で、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」や「セリーヌ(CELINE)」で要職を務めたジャン・マルク・ルビエ(Jean-Marc Loubier)氏が社長を務めるという、アジア資本と欧州ラグジュアリービジネスのベテランの強力タッグでしたが、どうやらおよそ2億ドル(約242億円)を「ソニア リキエル」につぎ込んでいたみたいです。それで赤字が膨らんで清算って……。
私は09年にH&Mが「ソニア リキエル」とコラボした際にパリのイベントを取材したのですが、H&Mの狙いは明らかにフランス市場でした。数少ないパリジェンヌによるパリブランドとして「ソニア リキエル」がフランス人に深く愛されていると実感したことを思い出します。
「え、なんで?」と思うようなブランドに買い手がつくこともあるのに、あれだけの創業デザイナーレジェンドがあって、ニットというアイコンもあり、パリ左岸サンジェルマン通りの歴史的旗艦店もあったのに、本当にもったいない。「ジャン・パトゥ(JEAN PATOU)」とか「スキャパレリ(SCHIAPARELLI)」のようにいつか復活する日が来るのでしょうか? なんとも残念な結末です。
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