ファッション

ユニクロなども導入する身体採寸技術「ボディグラム」がフィットネス領域に参入 その理由は?

 独自AIを活用した身体採寸テクノロジー「ボディグラム(BODYGRAM)」が、フィットネス領域への参入を発表した。これに伴い、競泳オリンピックメダリストで、現在はスポーツジム「クロスフィット(CROSSFIT)」のトレーナーとして活動する松田丈志氏が同社の公式アンバサダーに就任。今後は松田氏と共に、新たなトレーニングメニューや商品の開発など、フィットネスジムへの導入を想定したデータの活用方法を模索してくという。「ユニクロ(UNIQLO)」やファッションEC「ショップリスト(SHOPLIST)」などでも導入されている「ボディグラム」は、フィットネス領域への参入で何を目指すのか。ジン・コー(Jin Koh)ボディグラム・ジャパンCEOと松田氏の2人に聞いた。

WWD:「ボディグラム」が身体採寸を行う仕組みは?

ジン・コー=ボディグラム・ジャパンCEO(以下、ジン):使い方は非常に簡単で、スマートフォンで正面と側面からの全身写真を撮影し、いくつかの数値を入力するだけ。特別な洋服に着替える必要も、撮影する際の背景に気を使う必要もない。これは、われわれが独自に開発したAIが可能にしている。ボディグラム社のミッションは、最高の身体測定機械をポケットサイズにし、世界中の人に使ってもらうこと。ユーザーが究極的に簡単に使えることを重視している。

WWD:現在、どういったところで使われている?

ジン:アパレル業界では、「ユニクロ」が提供しているアプリの「マイサイズ カメラ(MYSIZE CAMERA)」や「ショップリスト」、ライフスタイル領域では寝具メーカーのエアウィーヴなどに導入されている。エアウィーヴに関しては、2020年の東京オリンピックに向けて、来日するアスリートに向けたカスタムマットレスの開発用のデータを得られればと考えている。そのほか、まだ発表はできないがヘルスケア領域で複数の会社と話している。

WWD:フィットネス領域への参入を決めた経緯は?

ジン:松田さんの存在が大きい。彼とはエアウィーブのイベントで出会い、ランチをしたのだが、その際に体型のことや、デジタルを活用したフィットネスの話で意気投合した。私個人としてももちろん、ボディグラム社としても彼のインサイトが非常に魅力的に映り、フィットネスの分野で何か一緒にできないかという話になった。今後、トップアスリートでありトレーナーとしても長く活動している松田さんにはアーリーアダプターとして、われわれにフィードバックをしてもらえればと思っている。アパレルよりもフィットネスの方が計測データの精度に対する要件は厳しいため、さらにブラッシュアップできるはずだ。

松田丈志(以下、松田):ジンCEOと話す中で、「ボディグラム」はフィットネス領域で非常に大きい可能性があると感じました。僕が現役の競泳選手だった時、全身のデータを取るためには大掛かりな3Dスキャナーで、専用のスーツを着て測定する必要があったのですが、時間と場所の制約から、年に1、2回程度しか使えなかった。結局、一番日常的に使っていたのは体重計だったんです。「ボディグラム」は体重計よりも取れるデータが多く、かつ日常的に使用できる。個人的には、アスリートを見ていく指標の一つとして、「ボディグラム」が体重計を超えることができればと考えています。僕自身、今後はアンバサダーとして「ボディグラム」でデータ計測しながら自分の体を見ていくつもりです。

WWD:松田氏は「ボディグラム」が体重計を超えるために必要な要素は何だと考えている?

松田:計測の簡便化は既にできているので、取得したデータで何が分かるのかをユーザーにどう伝えるかが重要だと考えています。「ボディグラム」ではいろいろなポイントのデータが取れるので、それをもとに、ユーザーにどんな傾向があるのかなどを導き出せるようになると、有益性が増すと思います。

「ボディグラム」はフィットネスでどう活用できる?

WWD:具体的には「ボディグラム」のデータを活用し、どのようなトレーニングメニューやフィットネス製品などの開発を考えている?

ジン:私はトレーニングに関しては素人なので(笑)、松田さんのフィードバックを受けて学んでいくつもりだ。ただ、素人目線で見るとサービスにおいて大事なのはモチベーション(動機づけ)とエンゲージメント(持続性)。この2つを成立させるには、ユーザーが自身の進化を常に感じ続けられることが必要だと考えている。

松田:トレーニングメニューに関しては、古いモノから新しいモノまで無限にあり、トレーナーはユーザーやアスリートの目的に応じたトレーニングを組み合わせて処方しています。例えばヒップラインを綺麗に見せたいとか、特定の筋肉を特化して鍛えたいとかですね。「ボディグラム」では、その目的を明確にしながら、サポートができると考えています。アスリートの研究データと組み合わせればより詳しい提案ができるようになるなど、可能性はさらに広がるはず。製品に関しても、「ボディグラム」が蓄積したデータとメーカーが持っている製品のデータがクロスオーバーすれば、ユーザーがフィットネスをする際に最適な製品の選択や開発ができると思います。

WWD:「ボディグラム」を通じて今後、目指すものとは?

ジン:われわれはヒューマンセントリック(人間中心、の意)のサービスとして、使いやすさや精度、セキュリティーを徹底し、「ボディグラム」をより多くの人に使ってもらえるようにしていきたい。そういった中でフィットネスは非常に大きい可能性を秘めている。今後はヘルスケアや保険、ライフスタイルなどに広がっていくかもしれない。「ボディグラム」というサービスがいろいろなところでつながり、世界的に普及していってほしいと考えている。

松田:僕の中での一番大きなテーマは、スポーツを通じて社会に貢献すること。より多くの人に普段から体を動かしたり、運動習慣を身に付けたりしてほしいと考えています。それが結果的に、健康的な時間を伸ばす。「ボディグラム」のテクノロジーを使えば、運動への志向がさらに進むと思います。先ほどジンCEOが言ったように、最終的にはいろいろな分野に波及し、人々に貢献できる一つの技術となれるのではないか、と期待しています。

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