※この記事は2019年7月16日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
村上隆さんへラブコール
名刺ひとつで会いたい人に突撃できるのがこの仕事の魅力ですが、今インタビューをしたい一人がアーティストの村上隆さんです。という訳で先週、名刺を持って中野ブロードウェイにある「アニマンガ・ジンガロ」で開催されたビリー・アイリッシュ(Billie Eilish)とのコラボイベントで村上さんにアタックしてまいりました。
中野ブロードウェイと言えば、漫画、おもちゃ、時計(ここ重要)、食堂(カフェではない)など趣味と生活が混然一体としたショッピングビルですが、公式ホームページによるとここ数年は「ベンチャービジネスの起点として注目を浴びており、ビッドコインや3Dプリンターなどの店舗も増えている」そうです。横に長い構造からか、エスカレーターがうまく見つけられず階段で昇降しがちなこのビルはホント不思議な存在です。
村上隆さん率いるカイカイキキはこの中野ブロードウェイに、ギャラリーやバーなどいくつかのスペースを構えており、国内外の村上ファンのメッカとなっています。昨年12月にお土産ショップ「トナリ ノ ジンガロ」をオープンした際には、フランスのラグジュアリーブランドのCEOがプライベートで訪れており、偶然会った私に「ところでここはどういう場所なのか?」と質問してきて答に窮しました。青山や銀座から車で来てこのビルに突然入ったらさぞかし不思議でしょう。「東京の中心から電車で20分、サブカルのシンボルです」と答えましたが、さて理解してもらえたかどうか。そのあと彼は、ご家族と一緒にブロードウェイ内の居酒屋へ向かったそうなのできっと体感で理解してくれたと思います。見るべきモノは自分の目で見るCEOのフットワークの軽さは見習いたいですね。
このCEOの訪問が象徴するように、村上さんはファッション、特に欧米のラグジュアリーとも深くつながりを持っています。マーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)時代の「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」にはじまり、カニエ・ウェスト(Kanye West)からつながるヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)との親交はよく知られているところです。「コンプレックスコン(ComplexCon)」でのアートディレクターとしての活躍や「ポーター(PORTER)」とのコラボも話題です。
そんな村上さんから今のファッションやファッション業界がどう見えるのか、ぜひ聞いてみたい。現在は、日本のメディアのインタビューには応じていないそうで、そう聞くとさらに燃えます!「芸術起業論」や「芸術闘争論」(いずれも幻冬舎)を改めて読み、彼が繰り返し説いてきた「芸術には、世界基準の戦略が必要である」「文脈の重要性」などの意味を今一度考察しながら、アタックを続けたいと思います。
なお、ビリー・アイリッシュとのコラボイベントの見どころは、ビリーの巨大スカルプチャーもですが、100枚以上の原画に村上隆さんが書き込んだ指示出しの言葉をじっくり読むのが個人的にはオススメ。アートってこうやってできあがってゆくのだ!と知ることができるのと同時に、「広島くん、どうしよう?」「広島くん、これもどうしよう?」など、スタッフ?の「広島さん」の名前が多出して信頼関係が垣間見えたりして、面白いです。
【追記】
こちらのコラムを執筆後に村上隆さんへのインタビューが実現しました。「WWDジャパン」2019年9月7日号の特集「村上隆、超ロングインタビュー なぜ世界のストリートが彼を求めるのか」をぜひお読みください。
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