※この記事は2019年9月4日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
米中貿易摩擦からの、アフリカ!
もはや泥沼ですね……米中貿易摩擦。クリスマス商戦に影響のあるアイテムは適用が延期されましたが、中国からの多くのアパレルやシューズの輸入品に追加関税がかかり、米国企業は値上げか企業の利益を削って価格据え置きか、どちらか選択せざるを得ない状況に追い込まれています。15%の追加関税って、大概の利益を吹き飛ばしますし、もともとが薄利だったら値上げは必至……。政治的駆け引きの結果の値上げって、消費者だけでなく、小売りサイドのマインドも落ち込ませますよ……。
二大市場が出口の見えない“我慢比べ”に入った今、明るい兆しを探そうとするとアフリカに行き着きそうです。
高関税を避けるべく、米アパレル企業は調達先を中国から東南アジアの国々へ移していますが、大きなポテンシャルを秘めるのがアフリカです。アフリカは人口が増え続けており、2050年には世界の人口の4分の1を占める見通しです。しかも若年層の比率が高いので、「この先50年は好調が続く」といわれています。
まだまだ額は少ないですが、対米アパレル輸出も大きく成長しており、「米中貿易摩擦や中国を含む世界各国での人件費の上昇を踏まえると、そうしたリスクが比較的低いアフリカが“世界のアパレル生産工場”となるチャンスは大いにある」というモロッコ投資輸出促進庁コンサルタントの弁には説得力があります。
ストライプインターナショナルも来年からエチオピアでの生産を本格化するとか。そう遠くない将来、“Made in Etiopia”の文字を目にする機会が訪れるかもしれませんね。
アフリカは昨今、生産地としてだけでなくクリエイションが生まれる地としても注目されています。ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)やカニエ・ウェスト(Kanye West)といったアフリカ系アメリカ人のブラックコミュニティーが、ファッションシーンにおいて影響力を増していることは言うまでもありませんが、今年のLVMHプライズには初めて2人のアフリカ出身デザイナーがファイナリストに選出されています。
「ファッションにおける新しさは、もはやテクノロジーやイノベーションをもってしないと生まれないのかも」と私自身思うことがあるのですが、もしかしたらアフリカには私たちにとって新鮮な美の世界が広がっているかもしれない――そんな期待も抱かせます。
パリ現地時間の9月4日夕方、LVMHプライズの受賞者発表が行われます。もちろん昨年の「ダブレット(DOUBLET)」井野将之さんに続いて、今年は「アンリアレイジ(ANREALAGE)」の森永邦彦さんに優勝してもらいたいですが、ここでアフリカ出身デザイナーが受賞すると、さらにアフリカへの注目度が増すのは間違いないでしょう。なんとなくですが、今アフリカからの風が吹いているように感じます。
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