ファッション
連載 新米男性記者ビューティを学ぶ

新米男性記者のためのビューティ講座 コレクションメイク編・ビジネス視点も考えられている

コレクションメイクとトレンドメイクの違いとは

 新卒で入社して3年目、4月に「WWDビューティ」編集部に異動となり、メンズコスメを担当しています。ビューティ記者としての一歩を踏み出したものの、分からないことだらけで勉強の日々が続いているのですが、見かねたベテラン先輩記者が業界ビギナーの僕にビューティの基本を教える、そんな連載をスタートさせました。

 第4回目は、コレクションメイク編。パリやミラノなどに代表されるファッション・ウイークのコレクションでは服以外にメイクにも注目が集まります。メイクもルックの一部としてブランドのコンセプトを明確に表現する役割を果たしています。今回の講座では、10月に開催された「楽天 ファッション ウイーク東京(以下、RFWT)」でバックステージを始めて取材した後輩Kが、そもそもバックステージとは?というところから取材時に感じた疑問などを、17年秋冬シーズンからニューヨーク・ファッション・ウイークのバックステージ取材を担当している先輩記者Kに教えてもらいました。

先輩K:今年の10月に行われた「RFWT」のバックステージ取材に初めて入ったんでしょ?どうだった?

後輩K:実は「WWD ビューティ」編集部に異動する以前からコレクションのヘアメイクに関心があったので、ついに取材できたなと!多忙な1週間でしたが、学ぶことばかりですごく刺激的でした。

先輩K:バックステージにはいろいろな発見があると思う。いつも思うのは、ショーは5分ほどの短さで終わってしまうけれど、その裏側ではたくさんの人がショーの始まる何時間も前から一生懸命準備している。だいたい4~5時間ぐらい前に集合しているよね。私たちもショーの開始2~3時間前には取材に入っているし。準備を見られるのは貴重だしバックステージの魅力でもあると思う。

後輩K:デザイナーはもちろんのことヘアメイクアップアーティストやモデル、フィッター、カメラマン、ショーの運営スタッフなどたくさんの人が一つのショーの裏側で尽力していて、その熱量を最前線で感られたことが、バックステージを取材して一番貴重な経験になりました。

先輩K:あるカメラマンが始めて東コレの撮影に入ったときの話なんだけど、その一体感に圧倒されて、ショーが終わったあと「感動しました!」ってバックステージに戻ってみんなが抱き合ってお互いを称えている様子まで撮ってたよ(笑)

後輩K:僕もバックステージを取材した後にショー本番も見ましたが、拍手が止まらなくて本当に感動しました。今回の「RFWT」も多種多様なヘアメイクでしたが、誰がバックステージの指揮を執っているんですか?

先輩K:ヘア・メイク・ネイリストのそれぞれのリードアーティストって呼ばれる人がいるの。そういった役割の人たちが全体のヘアメイクを統率していて、他のアーティストにも指示をしているの。

後輩K:なるほど……。今回の東コレだと「ヨシキモノ(YOSHKIMONO)」には「ナーズ(NARS)」グローバルアーティストリーディレクターの伊藤貞文さん、「ボディソング(BODYSONG.)」では「M・A・C」シニアアーティストの池田ハリス留美子さんがリードを務めていましたね。

先輩K:そういった人たちがモデルに施しているメイクを見て、疑問に思ったことを聞きに行くのがバックステージを取材するときの必須事項。例えば「デザイナーからどんな要望があったのか?」とか「なんでリップを2種類使ってるのか?」とかね。

後輩K:海外のコレクションのバックステージだと、どういった人がリードアーティストを務めているんですか?

先輩K: いくつものメゾンブランドでリードを務めているパット・マクグラス(Pat McGrath)やダイアン・ケンダル(Diane Kendal)、グイド・パラウ(Guido Palau)などの大御所アーティストはよくバックステージで取材するよ。

後輩K:なるほど。そういったひとたちがバックステージを統率しているんですね。今回「スリュー(SREU)」では「RMK」の上荒磯(かみあらいそ)秀俊メイクアップアーティストがリードアーティストを務めていましたが、使用しているアイテムを尋ねたところまだ発売されていない製品でした。そういったことってよくあるんですか?

先輩K:コレクションショーはメイクアップブランドにとってもブランドのコンセプトを伝えられる大事な場所。先んじて発売前の製品を使用することで、実際に売り場に並ぶときにもプロモーションになるしね。ファッションショーといっても、 “売れない”ものを見せる訳ではないから、サポートするブランドもビジネスとしての視点も持ち合わせているのよ。一般でも売れるかなと考えて作っていると思う。

後輩K:ビジネス面でもコレクション自体に大事な役割があるんですね。先輩Kはショーやバックステージはどんなポイントに気をつけて見ていますか?

先輩K:まず、コレクションってあくまで服が主役だからヘアメイクは、デザイナーがどういったコンセプトで服を作って、それらを通してどういったイメージを伝えたいかというのを演出する役目だよね。バックステージを取材しているからメイクはもちろんのこと、ファッションも理解していないとトレンドを見出せない。だからバックステージ取材に行くときはルックを見ることが基本中の基本かな。バックステージって画像や映像で見るのと実際に現場で見るのとでは印象が違わなかった?

後輩K:なるほど。ショーのリハーサルや本番も出来る限り見るっておっしゃっていましたもんね。バックステージはブランドによってはゆったりした雰囲気のところもあって少し意外でした。取材に入るまでは慌ただしくバタバタしているのが当たり前と思っていたので、今回バックテージに入ってみて印象が少し変わりました。今季は比較的ナチュラルメイクのブランドが多かったようでしたが、海外でもそうなんでしょうか?

先輩K:私がこれまで東京ファッション・ウイーク(東コレ)のバックステージを取材してきて、たまに派手なヘアメイクのブランドもあるけど、基本ナチュラルメイクが多い印象かな。東京以外の都市のコレクションもナチュラルメイクの傾向だと感じていて。私が昔見ていたブランドのコレクションを久々に見直したら、モデルやメイクの雰囲気が全然違うの。みんな同じようなヘアメイクだったし、黒人モデルは今と違って、ほとんどいなかった。でも今は時代の流れもあって、ダイバーシティーの価値観が世界的に浸透してきているから、当時のようにみんなを同じメイクにする必要がなくなって、ナチュラルメイクになったのが要因かなって思う。何シーズンか前の「マイケル・コース コレクション(MICHAEL KORS COLLECTION)」のバックステージ取材に入ったときは、「メイクはしない」って言われちゃって(笑)。理由は「シミやそばかすなども個性だから」ってことだった。

後輩K:でも、ナチュラルメイクはモデルの個性が際立ちますよね。ヘアだと特に顕著に表れていて、今回の「RFWT」でも縮毛やくせ毛、髪の長さなどに無理に手を加えるのではなくモデルの個性を生かしているブランドもありました。だからこそヘアメイクを単体で見ても楽しいんだと思います。

先輩K:私がコレクションショーを見始めたのは高校生のときだったかな。当時はすごく遠い存在で、謎に包まれた華やかな世界って感じだったけど、今はショーがブランド公式サイトやSNSなどでライブ配信されていて、バックステージも見られるようになった。ヘアメイクも昔のフルメイク!派手!というよりも、今はどこか引き算していないと消費者がついてこないと思うの。昔はブランドがトレンドを生み出していたけれど、今は消費者から上がってくるトレンドも多い。そういった動きで消費者とブランドの双方からトレンドが生み出されて、みんながその輪に入れるようになっている。ナチュラルメイクがはやっている背景には一般の消費者も取り入れやすいメイクを意識していることがあると思う。

後輩K:消費者もきちんと視野に入れてビジネスとしてクリエイションを演出しているんですね。先輩Kはコレクションを見ていて、このメイクは自分にも応用できるかなと思って見ていたりしますか?赤リップや艶感のある肌、ウエットなヘアスタイルなどはかわいいなって思います。

北坂:私、今季の「アナ スイ(ANNA SUI)」と「マックスマーラ(MAX MARA)」のヘアメイクはめちゃくちゃ可愛いと思う!

後輩K:僕は昔から少し長めのヘアスタイルが好きで、女性誌のヘアカタログのページを読んだり、コレクションのヘアメイクも参考にしています。カーリーなふわふわヘアやウェットでピチッとタイトに仕上げたヘアはまねしやすいですよね。でも今回、バックステージでブいくつもランドを取材していても、どこもコンセプトがばらばらでメイクトレンドがあまり把握できなかったです……次回はメイクトレンドについても教えてください、先輩!

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