韓国で圧倒的な知名度と人気を誇る美容整形外科医院「バノバギ(BANOBAGI)」クリニック。江南(カンナム)地域に整形外科医院と美容皮膚科医院を抱え、最近は日本の来院者も増えている。また、日本では銀座のビアンカクリニックと提携しているほか、オリジナルブランドのスキンケアはサイバーエージェント(CYBERAGENT)が展開するアベマTV(ABEMA TV)の韓国コスメ通販番組、「カンコスホリック」で取り扱っている。
「バノバギ」クリニックの皮膚科医院を率いるバン・ジェヨン院長に最近の韓国の美容医療トレンドや、オリジナルブランドのこだわりを聞いた。
WWD:美容医療先進国の韓国で人気ナンバーワンの実績だが、そこまで支持を得ている理由は。
バン院長(以下、バン):「バノバギ」は美容皮膚科と整形外科が一緒になっているクリニックの中では、韓国でナンバーワンの売り上げと知名度を誇る。整形外科は1日250〜300人ほど、皮膚科は50〜100人ほどが来院している。先生の腕はもちろん、「バノバギ」の哲学に共感してくれる人が多いことが人気につながっているのだと思う。テレビに出ているような芸能人に憧れる人が多いので、昔はそういった「理想の顔」に合わせて整形手術をしていたが、それだとみんな同じ顔になってしまう。韓国で“江南美人”という言葉があるが、それはみんなが同じような顔を目指して整形をしたからだろう(江南地区には多くの美容整形外科が存在することに由来する)。でも「バノバギ」では、一人一人の個性を生かしながら美しくすることをポリシーに掲げている。
WWD:最近人気の治療は?
バン:皮膚科の施術だとエイジングケア系の治療が一番有名。中でも最も件数が多いのはサマジーとウルセラというレーザー。2つのレーザーは10年以上の歴史があるので、非常に安定していて効果も高い。ウルセラは顔に少し脂肪がついている方向け、サマジーは脂肪がなくともリフトアップしたい人向け。そのほかピコレーザーも人気だ。最初は入れ墨を除去する目的で使われたが、毛穴の開きや肌表面のテクスチャーの改善、色素治療についても効果があったので、いろいろな研究で使い道を広げているところ。整形だと輪郭手術とあご削り。どちらも「バノバギ」の得意分野でもあり、日本人のお客さまからも信頼されている。
WWD:韓国がここまで美容医療界のリーダーになったのは?
バン:まずは手術の件数が多く、クリニックも多いので競争が激しい。そうすると自然と技術も上がってくる。また韓国人の国民性もあると思うが、医者の研究心と好奇心が強い。アメリカ人と日本人は研究の安全性を一番に求め、ある意味慎重だという。それに対し、韓国は効果を求める。だからこそ新しい施術や技術が次々と生まれる。そして韓国人は新しいものに挑戦することを好むので、韓国でしか受けられない施術も多い。例えば水光注射やシンデレラ注射も韓国から生まれたものだ。
WWD:韓国人の肌悩みやニーズの傾向は。
バン:日本も一緒だと思うが、20〜30代女性は敏感肌で悩んでいる人が多い。生まれつきの人もいれば、外的刺激などで後天的になった人もいる。さまざまなタイプや症状があるので、治療は必ずしもレーザー治療とは限らない。間違った化粧品の使い方で肌のバリア機能を崩している人も多いので、まずは化粧品の使い方についての指導をし、その後にその人にあった化粧品をアドバイス。その次に飲み薬や塗り薬を処方し、もっと効果的な治療があればレーザーなどクリニックでの施術を案内している。いずれにせよ炎症を起こし敏感になってしまった肌はきちんと管理しないと悪化していく一方なので、丁寧に診る必要がある。
WWD;日本では若い人がプチ整形することが増えていおり、整形の口コミアプリも人気。韓国ではどうか?
バン:韓国でも同じ。プチ整形への抵抗が弱くなっているので、手を出す人が多い。韓国では大学受験が終わると整形をする人も多い。中でも二重形成や鼻の手術が人気。ほか涙袋形成や唇をふっくらさせるものの需要が高い。
WWD:オリジナルコスメを作った理由は。
バン:韓国では現在、ドクターズコスメが増えている。例えばいま人気の「ドクタージャルト(DR .JART)」は、実は兄のバン・ジェサン院長(整形外科の医院長)の先輩が作ったブランド。われわれは市場を長年見てきて、さらに皮膚治療にも携わってきたから、プロが提案するスキンケアの需要があることは知っていた。また、韓国では“ケミカルフォビア”という言葉ができるくらい、悪い成分に対しての偏見がある。実は以前、加湿器から肺に悪い成分が出るという事件があり、それ以来肌に悪い成分に対しての警戒心が日本より高い。だから成分を調べるアプリも人気だと思う。「ファへ」はアプリの人気ラインキングで1位を取ったほど。われわれは成分についても詳しいので、敏感肌の人でも使うことができつつも高い効果を誇るものを作っている。敏感肌向けに開発した「ミルクシスル」ラインは、メチルパラベン、エチルパラベン、ベンジルアルコールといった一般的なフェイスマスクに含まれる化学成分を使用しておらず、「ファへ」でも高い評価を得ている。生産はもちろん全て韓国で行っている。
WWD:今後の目標は?
バン:2019年は日韓関係でいろいろあったので、日本市場には目を向けていたものの、政治的な影響でプロジェクトをストップせざるを得なかった。20年からは、日本での認知度をさらに高めたい。よりグローバルな展開をするために、さまざまな広告を展開する。また現在「バノバギ」は30代のお客さまが多いので、今後は若い人向けのコスメも開発していきたい。