2019年に最も躍進した企業といえば、作業服のワークマンだろう。2019年4〜11月の既存店売上高は、前年の同じ時期に比べて31.3%増。好業績を受けて株価は年始の2.8倍に急上昇し、時価総額は8471億円(12月27日時点)となって、上場するジャスダックでは日本マクドナルドを抜き去り首位を独走する。
ところでワークマンの記事はさまざまなメディアで紹介されているが、店に入ったことのない人も多いのではないか。特に都市部が生活圏の人はそうだろう。
全国に854店舗(10月末時点)の「ワークマン(WORKMAN)」「ワークマンプラス(WORKMAN PLUS)」を構えており、数だけ見れば「ユニクロ」の817店舗(8月末時点)よりも多い。にもかかわらず、繁華街では見かけない。東京でいえば、新宿にも渋谷にも銀座にも店舗はない。それどころか山手線沿線や山手線内に一つもないのだ。
昨年秋にスタートした新業態「ワークマンプラス」は郊外型ショッピングセンターにいくつか出店しているが、ほとんどの店舗は幹線道路沿いにある。建設や土木の現場で働く人たちが仕事の行き帰りにクルマで立ち寄ることを想定した立地だ。同社の場合、店舗の大半はフランチャズ(FC)契約で地元のオーナーが運営するため、家賃が高い商業一等地は採算的に難しいという事情もある。
だが、カジュアル需要を取り込む「ワークマンプラス」の拡大を図る中、今後は直営などによって市街地に近づくケースが増える可能性がある。同社は18年12月に「ワークマンプラス」の等々力店(東京・世田谷)を出店する際のニュースリリースで、「これまでの既存店はホワイトカラーの多い地域を避けてきましたが、今後は立地条件が拡大されます」と書いていた。
今のところ東京における“都心最前線”は、環七(環状七号線)か環八(環状八号線)である。環八沿いには「ワークマンプラス」の等々力店のほか、練馬石神井店(練馬区、19年3月開店)などがある。環七沿いには「ワークマン」の大森環七店(大田区)がある。
もともと郊外で誕生した「ユニクロ(UNIQLO)」は1998年の原宿店出店と同時期に巻き起こしたフリースブームが一世を風靡した。出店コストに厳しかった「ファッションセンターしまむら」も今では高田馬場、下北沢、茗荷谷に出店している。
ワークマンはECで注文した商品を店舗で受け取るタイプのクリック&コレクトを掲げており、そのためには1500〜2000店舗の拠点が必要になるという。ワークマンが世評の通り「ポスト・ユニクロ」に名乗りを上げるならば、今後は都市部への出店が次のステージになるだろう。