オーガニック・ナチュラルコスメに対する消費者の関心が高まっているにもかかわらず、市場が拡大しきれていない――。その一因が、一般化粧品と混在している売り場にあるのではないかととらえ、本物(リアル)のオーガニック・ナチュラルな製品を明確化するための“リアルオーガニック・ナチュラル”マークの導入が今秋から売り場で始まった。
日本独自のオーガニック認証はないものの、欧米が定めたオーガニック認証を取得した製品やそれと同等の製品を取り扱うメーカーが増えている。しかし、市場拡大が思うように進まないのは、売り場で消費者に分かりやすい提案ができていないと分析したのが、小松和子=オーガニック・ナチュラルコスメプロデューサー兼ナチュラルコスメメイクアップアーティスト。そこで、「本物を身近に、楽しく、わかりやすく『リアルオーガニック・ナチュラルコスメ』を!」を掲げ、今年6月にナチュラルライフ&ビューティーアソシエーションを設立し、理事に就任。“リアルオーガニック・ナチュラル”マークの普及を始めた。
バラエティーショップなどの売り場担当者からも売り上げの伸び悩みを相談されることが増え、あらためて売り場を分析すると「売り場がごちゃごちゃしている」「一般化粧品と混在している」「商品の背景が分かりづらい」といった問題点があった。それを解消するためにも“リアルオーガニック・ナチュラル”マークの必要性を強く感じたという。現在は、小松理事が小売店と連携を取り、売り場改革を進めるのを基本としている。
同組織が定めるリアルオーガニック・ナチュラルコスメとは、自然の原料を主とする化粧品で、一定の基準(表参照)を満たしたオーガニック認証コスメとそれと同等レベルのナチュラルコスメのこと。基準を満たしたブランドにはマークを付与する。(ただし、認証ではないので商品にはマークはつけない)。マークへの基準は小売店用とメーカー用を用意する。
刷新した店舗は売上高40%増
小売店のモデルケースとなったのが東急ハンズ銀座店。7月に“リアルオーガニック・ナチュラル”マークのブランドを中央部分に、該当しないブランドを外側に陳列するという売り場にリニューアルした。一つ一つのブランドの世界観を伝わりやすくしたこともあり、来店客の滞留時間も伸び、リニューアル後の売り上げは前年の40%増と好調に推移する。中央部分へ該当ブランドを置くことで、“本物”が伝わりやすくなるが、該当外のブランドを排除するのではなく、製品を購入する際の選択肢を明確にするのが狙いだ。
「セルフの売り場ではカウンセリングがなくても売れるテクニックが必要。そのためには、売り場を手掛けるスタッフの知識も必須」であることから、同店では18年9月から勉強会を定期的に実施している。今回のリニューアルに際しては「店舗で扱う商品を一つずつ“リアルオーガニック・ナチュラル”マークに該当するか選別しなくてはならない。地道な作業が続くが結果はついてくる」と小松理事は語る。東急ハンズは20年に他店舗でもリニューアルする計画だ。また、ナチュラルハウスは全店で導入する。
一方、マークを付与されたブランドは「トリロジー」「ドクターハウシュカ」「クオン」「琉白」など約30。マークはブランドごとに付与するため、「商品の中に基準に満たないものが数点あるケースも。その場合は、その商品を販売休止したり、リニューアルしたりと、メーカーもわれわれの取り組みに応えてくれているので、お互いに成長できている」(小松理事)と全体の底上げにもつながっている。
マークに対する期待は高く、店舗での導入の引き合いも多い。しかし、スタッフの教育から売り場改革まで時間と知識が必要である。ナチュラルライフ&ビューティーアソシエーションでは「伝える側の人的な問題もあるため来年にはスタッフを増員する予定」という。また、有機JAS認定よりも厳しい基準を持つ日本オーガニック&ナチュラルフーズ協会のサポートを受け、勉強会なども増やしていく予定だ。マークが契機になり、オーガニック・ナチュラルコスメ市場拡大につながるかもしれない――。そんな期待もかかっている。