【8ページ目】PAUL SMITH(ポール・スミス)

■PAUL SMITH(ポール・スミス)のはじまり

1970年、24歳だったポール・スミス(Paul Smith)はイギリス・ノッティンガムに小さな店舗をオープン。メンズアイテムを中心としたセレクトの他、自身が手掛けた商品を販売し、自身の名を冠したブランドをスタートした。76年に小規模ながらコレクションを初披露し、79年にはロンドン、80年代に入りニューヨークに店舗を持つ。83年に伊藤忠商事とライセンス契約を締結し、日本での事業を拡大。イギリスを代表するファッションライフスタイルブランドとして確立する。

■PAUL SMITH(ポール・スミス)の歴史

1970年10月9日、ノッティンガムのバイヤードレーン6番地に1号店をオープン。窓のない3メートル四方の小さなスペースを“ポール・スミスの紳士服”(Paul Smith Vetements Pour l’Homme)と名付けた同店では、自社のシューズやパンツ、ブレザーだけでなく、他ブランドのメンズウエアも販売。ポールは、愛犬のアフガン・ハウンドのホーマーと一緒に週に数日営業していた。4年後に数軒先のより大きなスペースに移転した(2017年に閉店)。
76年、パリのホテル・オデオンの部屋で初のメンズ・コレクションを発表。シャツ4点とニット2点、ジャケット1点、パンツ2点のみ。バイヤーに手書きの招待状を送ったが、来場したのは最終日に1人だけだった。79年、英コヴェント・ガーデンにロンドン1号店をオープン。
80年代に入り、ニューヨークの5番街に海外初店舗を構える。83年、日本では伊藤忠商事とライセンス契約を締結。マスターライセンシーとして日本事業に関わる。その後、伊藤忠はポール・スミス社の株式を一部取得する。93年、日本では60店舗に拡大。子ども服やアクセサリー、ウィメンズ・コレクションも始めた。94年、アイウエアやラゲージ、ウオッチのコレクションもスタート。
98年、ロンドン・ファッション・ウイークに初参加。メンズとウィメンズの香水をローンチ。2003年、インテリアにも参入し、家具や雑貨のデザインも開始。06年、長年日本のマスターライセンシーであった伊藤忠商事は、ポールの妻であるポーリーン・デニア・スミス(Pauline Denyer Smith)と、ポール・スミス社元社長のジョン・モーリー(John Morley)から同社株式の40%を取得。アジアなどグローバル戦略におけるパートナーとなる。
2007年、「ポール・スミス」のディフュージョンラインとして「ポール バイ ポール・スミス(PAUL BY PAUL SMITH)」が誕生。また日本や 米国以外への世界展開を本格的に開始し、ヨハネスブルクやケープタウン、サンクトペテルブルクにショップをオープンした。10年、「ポール・スミス ジュニア」のレーベルで男女の子ども服をリローンチ。
15年、ブランド編成を図る。16-17年秋冬シーズンから、「ポール・スミス ロンドン(PAUL SMITH LONDON)」「ポール・スミス ジーンズ(PAUL SMITH JEANS)」などのラインを終了し、「ポール・スミス」とディフュージョンラインの「PS ポール・スミス(PS PAUL SMITH)」に統合した。
17-18年秋冬コレクションからは、ウィメンズ・コレクションの発表の場をロンドンからパリに移し、メンズとウィメンズの合同ショーに切り替えた。17年、「PS ポール・スミス(PS PAUL SMITH)」の国内初路面店が原宿にオープン。19年10月、大阪店をオープンし、メイド トゥ メジャーのスーツのパターンオーダーサービスを日本でもスタート。
20年、パリでブランド誕生50周年を記念する20-21年秋冬コレクションを発表。日本では150以上の店舗を構え、全体の売上高の40%以上を占める。10月には、クリエイティブな人々に有益なアドバイスをすることを目的にした「ポール・スミス財団(Paul Smith’s Foundation)」を設立。21年、銀座に旗艦店をオープン。22年、ポールが新進気鋭のクリエイターと取り組むコラボレーションプロジェクト「&ポール・スミス(&PaulSmith)」をスタート。「ポール・スミス財団」の支援を受け、クリエイティブなパートナーシップのための新たな取り組みを始めた。9月、マーション アイウェア(MARCHON EYEWEAR)とグローバルライセンス契約を締結。11月、初のホームフレグランスコレクションを発売。
22年現在、世界60以上の国と地域で展開し、欧米には約50の直営店を持つほどに成長。

■PAUL SMITH(ポール・スミス)のデザイナー

ポール・スミス:

1946年、イギリス・ノッティンガム生まれ。12〜17歳まで自転車レーサーとして活動しプロになる夢をかなえるため、15歳で学校を自主退学する。しかし自転車事故により夢を断念。後に妻となるアートスクール教師のポーリーン・デニアと出会い、アートやデザインについて知識を培う。70年10月9日、24歳の時にショップをオープン。イギリス全土を巡って商品のバイイングを開始すると同時に、夜間にテーラリングを学びつつ、さまざまなショップやファッションブランドのコンサルティングを手掛けた。また初のコレクションを小規模で発表した76年には、ロンドンのセレクトショップ「ブラウンズ(BROWNS)」で週に数日、デザイナーとして勤務する他、70年代後半〜80年代初頭にかけて、ザ・ウールマーク・カンパニー(THE WOOLMARK COMPANY)のフリーランスデザイナーとして働いた。81年、初めて来日。83年に伊藤忠商事と日本におけるライセンス契約を締結したことについては「人生で初めて安定した収入を得るようになった」と話す。
2000年、英国ファッション界への貢献を認められ、バッキンガム宮殿で英国皇太子からナイトの称号が与えられた。03年、英国ファッション評議会(The British Fashion Council)が主催する「ブリティッシュ・ファッション・ アワード(現ザ ファッション・アワード、The Fashion Awards)」のメンズウエア・デザイナー・オブ・ザ・イヤー賞、ウィメンズ・コンテンポラリー・デザイナー・オブ・ザ・イヤー賞を受賞。
13年、展覧会「ハロー、マイ ネーム イズ ポール・スミス(Hello, My Name Is Paul Smith)」がロンドンのデザインミュージアム(Design Museum)で開催。15年のブランド編成を経て、18年、創業者であるポールがクリエイティブ面の指揮を再び執ることを発表。
16年、ロンドン・ケンジントンのフランス大使公邸で、1802年にナポレオン・ボナパルトによって創設され、軍人・文化人を表彰するフランス最高位の 勲章であるレジオン・ドヌール勲章を授与される。自転車から建築、ファブリック、音楽まで幅広い関心を持つポールは“アート愛好家”としても知られ、アート作品や本、記念品、ファンや顧客からの贈り物で埋め尽くされたロンドンのコヴェント・ガーデンにあるデザインスタジオ兼本社の一室は雑誌などでもよく取り上げられる。22年、英国ファッション界への貢献を称えられ、「コンパニオン・オブ・オナー勲章」を受勲。ファッションデザイナーとしては初。

■PAUL SMITH(ポール・スミス)のブランド・ライン

「ポール・スミス」:

1970年にイギリス・ノッティンガムに小さなショップをオープンし創業。国内でバイイングしたアイテムの他、自らデザインしたメンズアイテムを並べスタート。以降、ウィメンズやジュニア、アクセサリー、インテリアアイテムなどにカテゴリーを広げ、イギリスを代表するファッションライフスタイルブランドにまで成長する。40種類の色で構成される“シグネチャーストライプ”や、創業以来のコンセプト「classic with a twist(ひねりのあるクラシック)」のデザインがブランドの特徴となる。
2016-17年秋冬シーズンに他ラインを含む再編成を行い、「ポール・スミス」は「ポール・スミス ロンドン」と統合。12年以降は、「ジョンロブ (JOHN LOBB)」や「アングルポイズ(ANGLEPOISE)」「ランドローバー(LANDROVER)」「グローブ・トロッター(GLOBE TROTTER)」や「ニューバランス(NEW BALANCE)」「ライカ(LEICA)」などと協業するほか、18年には衣装デザイナーのペニー・ローズ(Penny Rose)に協力し映画「メン・イン・ブラック:インターナショナル(Men in Black : International)」の登場人物のスーツを制作。後に映画に着想したカプセルコレクションも発表した。22年には、「ミニ(MINI)」や「ポーター(PORTER)」「デ パドヴァ(DE PADOVA)」などとコラボ。

「PS ポール・スミス」:

「ポール・スミス」のデザインDNAを受け継いだメンズ&ウィメンズのディフュージョンライン。スポーツウエアやミリタリー、イギリスのユースカルチャーからインスピレーションを得て、ウエアを中心にアクセサリーやバッグを展開する。オーガニックコットンやリサイクルナイロン、天然ゴムなど環境に負荷の少ない素材を積極的に採用している。21年春夏には、“PS Paul Smith Happy”というロゴが誕生し、さまざまなアイテムを発表している。

■公式サイト

www.paulsmith.co.jp

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