茅ヶ崎発、
音楽に生きる新世代ボーカル
音楽だけでなくファッションにも注目が集まる期待の新世代バンド、サチモス(Suchmos)。そのフロントマンYONCEが「アディダス」そして“NMD”を選ぶ理由を地元・茅ヶ崎で垣間見た。
PROFILE
YONCE(ヨンス)
神奈川県茅ヶ崎市出身。アシッドジャズ、ソウルを軸にした独特のミクスチャー・サウンドが話題のバンド、サチモスのボーカル。ライブやミュージックビデオで着用する「アディダス オリジナルス」のトラックトップがアイコン
茅ヶ崎の街が育んだ人間性と音楽性
サチモスはフジロックフェスティバル’ 14の「ROOKIE A GO-GO」ステージでトリを務めたことで注目され、またたく間に東京ミュージックシーンの中心へとやってきた。メンバー全員が神奈川県出身で、ボーカルのYONCEは茅ヶ崎に生まれ育ち、今もその街で暮らしている。休日にはこの街のトレードマーク、烏帽子岩を背景に海岸沿いをよく散歩するという。この日は、雲一つない晴天だったせいか、ライブやミュージックビデオで見るエッジーで夜っぽいイメージの彼とは大きく違う印象に見える。嫌味も気取りも一切ない湘南の好青年で、人当たりがすごくいいナイスガイといった感じだ。最近は飼っているイタリアングレーハウンドのルチアを可愛がり、「実はこいつ、僕と同じ誕生日で、マイケル・ジャクソンとも同じ8月29日生まれなんだ」と、ボーカリストらしい枕詞を添えて紹介する。
「サチモスの曲のほとんどは、バンドメンバーとのジャムセッションの中で生まれてきたもの。リハーサルスタジオに入って、実際にみんなで演奏しながら、『それいいね』『あれ良かったね』といった具合。誰かが作曲したりだとかはあまりないかもしれない」。そんな前置きをしながらも、散歩がてら海でアコースティックギターを弾いたりすることもあるという。
「中学生の頃に『バンドがやりたい』と叔父に言ったら、このアコギとニルヴァーナのCDを譲ってくれた」。この叔父が、地元・茅ヶ崎ではちょっとした有名人らしく、ハリソン・フォード似という理由で“ハリーさん”と呼ばれる音楽好きだ。「物心ついた頃から実家の隣でバーを営んでいて、10人くらいしか入れない小さな店だけど、そこにはレコードがぎっしり詰まっていて。地元の人にレコードを聴かせるためにやっているらしい」。サチモスが色濃く影響を受けるソウルミュージックも、この叔父に聴かされたオーティス・レディングやカーティス・メイフィールドが由来らしい。
彼がよく立ち寄るのは辻堂にあるブリッジ ルーム(BRIDGE ROOM)というコーヒーショップ。国道134号線のそばにある同店は、オニバス・コーヒーの豆で淹れる本格派コーヒーが人気といい、それほど広くはない店内にカウンターとテーブルを配置したアットホームさが魅力だ。
「オーナーとは昔から仲が良くて、家も近いのでよく話をしに来る」とのこと。聞けば、オーナーの吉野氏はライブハウス「クラブ リザード(CLUB LIZARD)」の店長らしく、サチモスが横浜でライブをする時には必ずそこを使うというほど、親交が深い。店の外にはテイクアウト専門のカウンターもあり、地元の仲間がしきりに顔を出しては、他愛もない話をして帰ってゆく。彼がテイクアウトで頼んだコーヒーを待つ間、店長との世間話にも花が咲く。「写真撮ろうよ」と声をかけられても気さくに応じるYONCE。今や有名人となった彼にとって、ここは地元ならではの交流を楽しめる癒しの場所なのだ。
YONCEはとにかくよく歩く。休みの日には、そばを食べるためだけに市内のはずれまで歩いて行くほどの散歩好きだ。ステージでは“キャンパス”や“スタンスミス”などのクラシックモデルをよく履く彼だが、最近はBOOSTフォームがお気に入りの様子。「この間買ったのもBOOSTフォームのシューズだったかな。試着しただけで気に入って店内を練り歩いちゃって。友だちにおすすめしたら、そいつも気に入って同じものを買ったんだ。今回の“NMD”も履き心地は抜群。友だちに薦めたらまたおそろいになっちゃうかも」と、その履き心地にぞっこんのようだ。
九州まで車一つで移動することも珍しくないというサチモス。日本各地で精力的にライブを行っているだけあって、移動が多いツアー時のシューズには相当こだわるようだ。「持っていく靴はいつも1足。移動もライブも同じスニーカーだから、長時間履いていても不快にならない快適さがまさに欲しかった」と語る。ジェットセッターをはじめ、都市間を積極的に移動する現代人に向けた“NMD”はまさにうってつけかもしれない。
いつの間にか「アディダス」が欠かせない存在に
サチモスが広く受け入れられた理由は、音楽同様に自由なスタイルのファッションにある。特別ハイブランドを身につけているわけではなく、流行だけを追っているわけでもない。古着をメーンに、自然とストリートの旬を捉えたスタイルが実に洒落て見えるのだ。「仕事終わりにメンバー6人で横浜の郊外にある古着屋に行くことも。古着なんていいものでもなくて、目利きされたものを置いているわけでもない。本当にただのリサイクルショップだけど」。
YONCEと言えば、ジャミロクワイのボーカル、ジェイソン・ケイをほうふつとさせる「アディダス オリジナルス」のトラックトップがアイコンになっている。「普段から本当に好きで着ていて、それでステージに立っているだけ」と言うが、最近はその姿が浸透しすぎてしまったせいか、ライブなど“ここぞ”という時にだけ着るようにしている。自身のSNSでも「特攻服」と語るように、彼にとっては「アディダス オリジナルス」のトラックトップが気合いを入れるスイッチのような存在なのかもしれない。
YONCEに「ファッションで影響を受けた人物は?」と聞くと、「ロックが好きだった頃はジョー・ストラマーやカート・コバーンなどスターの服装に憧れた。でも、最近は自然と自分のまわりから影響を受けるようになった気がする。特にひと回り離れた姉の存在は大きい」と言う。「年が離れているから、小さい頃は着せ替え人形みたく遊ばれてたのかな。肩肘張らないさじ加減は姉の影響で、今でもたまに小言を言われたり」。
「個人的にシンプルなものが好きで、選ぶのは無地ばかり。プリントTシャツを着るとなると、例えば好きなリバプールFCのものだったりと、デザインに何かしら理由がほしい」。“NMD”を気に入った決め手は、一体になったアッパーにシュータンがなく、着脱のストレスがないからだという。「面倒くさがりなので、かっこよくて楽で調子がいいもの。それだけで最高」。常に自然体を見せる彼のスタイルこそが、オーディエンスを惹き付ける魅力になっているのかもしれない。
「限界無き都市冒険」のために創られた一足、“NMD”
Sneakers for Urban Exploration