ストリートフードを愛し
旅するピザ職人

ニューヨークスタイルの本格スライスピザが食べられると話題の人気店「ピザ スライス(PIZZA SLICE)」。本場を知る職人であり、店のオーナーも務める彼の物語、そして足元を彩る“NMD”を追いかけた。

PROFILE

Hiroki Sarumaru(猿丸浩基)

兵庫県神戸市出身。ニューヨークスタイルのスライスピザを本場で学び、2013年、28歳で「ピザ スライス」を東京・渋谷にオープン。撮影ロケ地としても使われる洒落た内装を生む美的感覚も持ち合わせる、ストリートフード・カルチャーのキーパーソン

あてもなく足を踏み入れたスライスピザの世界

午前10時。 滑らすように伸ばしたピザ生地に慣れた手つきでトッピングを施し、すでに火の付いた釜に放り込む。世間話をしながらも、計るわけでもなく一定時間をおいて釜を開け、ピザに火を通す。スタッフともども、黒のニットキャップとボトムスに白衣をまとい、ピザにのるサラミのごとくコーディネートのアクセントとなった赤い“NMD”に小麦粉がかかることも気にすることなく開店を急いでいた。

猿丸浩基がピザの世界に足を踏み入れたのは、6年前のこと。中学生の頃にハワイでスライスピザに出合ってから夢に描いていたその道を目指すべく単身渡米、「無給でいいから働かせてほしい」とニューヨークのローワーイーストサイドにある「チャンピオン ピザ(CHAMPION PIZZA)」の門を叩いた。「最初のうちはメキシコ人たちから面倒な仕事ばかり押し付けられてね。粉まみれになって仕事を終えると、帰り道にあった白人たちが集まるリカーバーがすごく眩しく見えたよ」。帰国後、2年前に彼がオープンさせたこの「ピザ スライス」は、壁から床まできれいなタイル貼りで、女性客からも好感を持たれている。ここには、「あんな眩しい場所でスライスピザを食べてもらいたい」というニューヨークへのオマージュが込められているという。

ケータリングの注文があった時は、自転車でデリバリーすることもあるという。フロントにピザボックスがすっぽり収まる特殊な仕様の自転車も、どこかニューヨークスタイル。「普段は散歩がてら徒歩で店まで来ているけど、1日中ピザを焼き続けなければいけないハードな週末は決まって自転車移動。散歩でも自転車でも“NMD”は柔軟性があって楽」。フルスエードのカジュアルスタイルにBOOSTフォームの機能美が融合した“NMD”は、あらゆる移動手段を用いる彼のライフスタイルを足元から支える。

考えごとはいつも神社を散歩しながら

旅好きだと公言する彼の趣味は神社巡り。聞けば、中学生の頃からヒッチハイクを始め、長崎の神学校で寮生活を送った高校時代にもよく九州を回っていたそうだ。「宮崎の高千穂神社はやっぱりいい。周囲の渓谷そのものが荘厳な雰囲気でね」。日本各地を旅するたびにその土地の神社を参拝するらしく、なるほど、参拝する様は堂に入っている。

一人旅に慣れているため、東京でも一人の時間が多いそうだ。「パワースポットとかを気にするタイプではないけど、境内を散歩しながら考えごとをする時間は好き。明治神宮は近所なので。参拝して、宝仏殿前の芝生広場で昼寝するのがお決まりのコース」。黒のレザーコートに黒のスキニーといういつものワントーンで闊歩する彼の立ち振る舞いは、地に足付いている。朱塗りの鳥居を前に一礼する彼の足元に、鮮烈な赤の“NMD”。最先端技術と「アディダス」の伝統が融合した“NMD”は、不思議と日本古来の風景にすら馴染んでしまう。

ヒントとチャンスは異国の地で見つける

お店にオフィスはなく、デスクワークは外ですることが多いという。散歩途中に行きつけのカフェに立ち寄った。新たなプロジェクトへの参加が決まり、内装やメニューなど新たなアイデアのインスピレーションを探しているという。ピザカッターをはじめ「ピザ スライス」で使う道具は、アメリカ製が彼のこだわりだ。「日本製で使いやすく良いものももちろんあるけど、渋谷にいながらニューヨークをそのまま体感してほしくて。ディズニーランドみたいなものだね」。人の目にもなかなか留まらないディテールに、“本物か否か”が表れることを彼は知っている。

彼は備品の買い付けも兼ねて年に2度、ニューヨークへ足を運ぶ。「日本で店舗を増やすことはあまり考えていない。海外出店……、色んな国で若い子が集える店を作りたいんだ」と、台湾に新店舗をオープンする予定があることも教えてくれた。物件リサーチやピザエキスポなど、ビジネスの海外渡航も多く、「荷物は少なくトランク1つで行って、現地調達して4つ持って帰ってくるイメージ。持っていく靴は1足だけで、絶対にスニーカー」と、物もアイデアも持って帰ることに備え、とにかく身軽な旅を好む。「いくら歩いてもかかとに疲れを感じない」と“NMD”のソール全面に配置されたBOOSTフォームのクッション性が気に入った様子。新プロジェクトに向けて間もなく発つニューヨークでも、きっと“NMD”が役立つことだろう。

「限界無き都市冒険」のために創られた一足、“NMD”

Sneakers for Urban Exploration

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