前進し続ける
多才なファッションアイコン
これまで多くのブランドを手掛け、モデルとしても多大な影響を与えるファッショニスタでありながら、プライベートでは母でもある。多才な顔を持つ彼女の目に移った“NMD”の姿とは。
PROFILE
Ena Matsumoto(松本恵奈)
三重県伊勢市出身。プロデューサーとしてファッションブランド「エモダ(EMODA)」を手掛けた後、独立。2015年2月に自身のブランド「クラネ(CLANE)」を立ち上げ、ウィメンズに加えてメンズファッションも提案する。モデルとしても活躍する他、母という顔も持つ
ファッションのプロも惚れ込む“NMD”のデザイン性
圧倒的な勢いで人気を獲得した「エモダ」の元プロデューサーであることはあまりに有名だろう。多くのフォロワーを持つ彼女は、綺麗に切りそろえられた黒髪と端正な顔立ち、そのルックスから天才肌のアーティストのような雰囲気を醸し出すが、松本恵奈を支えているのは確かな下積み時代だ。「高校生の頃からアパレル業界で働き始めて、長い間販売員を務めてきた。何度となくお客さんと直に接して生の声を聞いてきたことは、すごく良い経験だったと思う」。
その経験と下積みで培ったのは、トレンドをキャッチする勘だという。現在手掛ける「クラネ」のコレクションは非常にミニマル。高品質素材であっても手頃な価格、だからこそ素敵なデザインをデイリーに着ることができる。日本人好みのリアル感が愛される要因だ。このさじ加減には、顧客をイメージする彼女の勘が生きているのだ。だからと言って「クラネ」はごまんとあるブランドに埋もれてしまうような世界観ではない。そのわけは、彼女がつぶやいた「私、シンプルだけどひとクセあるものが好き」という一言に込められているように感じた。
「久々に『これはいい!』と直感的に感じた。私が作る服ともすごく相性が良い」と、“NMD”の第一印象を話す。「スニーカーに合うようなコーディネートで単純にスニーカーを履いても面白くない。品があるウエアにスニーカー、モードっぽい格好にスニーカー、この“NMD”はそういう風に合わせられる大人好みのデザインだと思う」。確かに“NMD”は、いわゆる“スポーツスタイルスニーカー”とは一線を画す。“マイクロペーサー”や“ライジングスター”“ボストンスーパー”といった「アディダス」を代表するランニングモデルのアーカイブからアイコンパーツを採取しながらも、現代の都市型生活者のためにデザインされた、いわば“ライフスタイル・スニーカー”なのだ。
「クリエイションにおいてインスピレーション源は何か?」と言う質問に対し、「特にないかも……。服を見に行くだけの目的で、年に数回海外に行く程度」と答える。いつも決まってニューヨークのブルックリンに行くという彼女は、「最近は買い付けや撮影で自然と海外に行く機会が増えてきた」と残念そうに話す。聞けば、意外にも元々はそれほど海外旅行が好きなタイプではなかったらしい。
それにしても、彼女は座らない。デスクはあるが、会議や電話でほとんど一定の場所にいることはないという。そんな彼女が「あれほど楽な履き心地はない」と絶賛するのが、“NMD”にも搭載されているBOOSTフォームのミッドソールだ。これだけ動いていれば、ハイテクなスニーカーに頼りたくなる気持ちも分かる。ようやく落ち着いたのは、アトリエ近くでよく行くというランチタイムの「シティショップ(CITY SHOP)」だった。
母に求められるのはアイデアと快適なフットウエア
趣味を尋ねるものの、「『クラネ』を始めてからは仕事ばかり。一人で色んな役割をしなきゃいけないから、趣味を探す時間もないの。休日は娘と遊びたいな」と本音をもらす。彼女は家庭では母なのだ。「休日には六本木ヒルズをブラブラしたり、子ども服を買いに行ったり、公園でいっぱい遊んだり」。愛娘の写真はフィルムで撮るといい、「コンタックス」の“T3”というファッション・ディレクターらしいアイテムを愛用している。「写真は仕事でも生かせるから、長く続いている趣味と言えるかも」。
子育てしていても着やすい服という点でも、「クラネ」は女性の支持を得ている。「母としてのアイデアが求められている気がするの」。最近では保育園の制服をプロデュースする新たなプロジェクトにも取り組んでおり、そこでは子どもが着る制服だけでなく、保育士のエプロンまでも手掛けるという。これまでウィメンズからメンズまで幅広くファッションを提案してきた彼女の才能は、さらに多方面へと広がり続けているようだ。
これまで子どもと遊ぶ時も、「アディダス」のスニーカーが活躍していたという。しかし、以前履いていたスニーカーは、小学校に通う姪に奪われてしまったそうだ。「この上ない楽さ」と彼女が絶賛するBOOSTフォームのミッドソールに、プレミアムな素材を使ってアッパーにもディテールを加えた“NMD”は、ライフスタイルにおける快適性・デザイン性で他を追随させない。「“NMD”は子どもに奪われないようにしないと」と笑顔を見せる。
「限界無き都市冒険」のために創られた一足、“NMD”
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