仲間を愛する
街乗りメッセンジャー

いつの時代も、勢いのある者たちはどこか反抗的。権威にたて突き、真の自由を追求してきた。そんな心意気を継ぐ自転車乗りとともに、ニューヨークの街をさっそうと駆け抜ける“NMD”の姿を追った。

PROFILE

Cordell Murray(コーデル・マーレイ)

ブルックリン出身。バイクメッセンジャー、フォトジャーナリスト。街の自転車乗りを撮影したドキュメンタリー「Stay Alive」が好評。ニューヨークだけでなく、米国各地やパリやロンドンなど海外のメッセンジャーも巻き込む注目のインフルエンサー

住む場所と自転車で「変わった、ライフスタイルも考え方も人生も」

「お前、自転車持ってないの?」。さかのぼること5年、コーデルは友人たちに急かされた。「俺たち、こんな自転車日和に、地下鉄なんか乗らないよ」。生まれも育ちもブルックリン。年頃の男が欲しいモノといえば、「新しいスニーカーと彼女と車」だった。それが一転、「車よりも自転車が欲しい」。コーデルがそう思ったきっかけは、ブルックリンの奥地からウィリアムズバーグ地区へ移り住んだことだった。そこは誰もがうらやむ人気エリアである。

こう言ってはなんだが、「自由人」をうたう彼がどうやって……。そんな疑問がよぎった。単刀直入に聞いてみると、コーデルは「抽選に当たったんだよ」とにっこり。その抽選に当たるというのは相当な運の持ち主ということになる。そう、ニューヨークでは「運も実力のうち」なのだ。

自転車を手にして以来、ライフスタイルは「劇的に変わった」。メッセンジャーという性に合った天職に出合い、気づけばコーデルを急かした周りの誰よりも、自転車にのめり込んでいる。その理由は、「自由が手に入ったから」。スピードも時間も、自分で操ることができる自由だ。そして、何よりの財産は「素晴らしい友人の輪が広がったこと」。そういいながら頬を赤らめる。

写真を始めたきっかけは、祖父だった。「じいちゃんが、写真が好きでさ。結構うまかったんだ」。高校生の頃には、自分でデジカメを購入し、気のおもむくままに撮ってみるものの、どうしてもじいちゃんみたいに撮れない。「なぜだ?」。その疑問が彼を写真の世界へと引き込んだ。技術は自分で身につけるしかないし、今は技術をサポートしてくれる高機能のカメラもたくさんある。「だったらアートスクールなんて行かなくてもいい」というのが彼の持論。「結局、大切なのは技術よりも感性だと思う」。

自由を追求する、はみ出し者たちの記録「Stay Alive」

「自転車乗りの生きざまは面白い」。そのことを伝えたくて、約2年前に始めたのが「Stay Alive」という自主プロジェクトだ。写真、ときに動画で自転車乗りたちの想いや生きざまを記録してきた。その醍醐味を聞くと、「良くも悪くも、自転車乗りには、風変わりな”はみ出し者”が多い」と笑う。だが、かくいう彼もきっと“はみ出し者”なのだろう。だからこそ、社会に埋もれた声なき声を感じとり、表現できるのだ。

予定調和を嫌い、“ふつう”や“安定”という言葉にツバを吐きかけ、己の道を進む自転車乗りたち。リスクを顧みることなく、大都会をさっそうと駆け抜け抜ける姿は、「今が楽しければ、命なんて惜しくはない」と言わんばかりだ。勢いよくペダルを漕ぐコーデルの足元には“NMD”がよく似合う。そもそも、スニーカーは昔から「アディダス」一筋だというコーデル。「スニーカーには必ずそれぞれ何らかのストーリーがあるもの。それを自分のフィルターにかけて、好きなものを選んできたんだ。その結果が『アディダス』だった。この“NMD”は未来的なフォルムが今の気分にも合っている。しかも紐なしだから、車輪に引っかかる心配もない。だからいいんだ!」。

D.I.YよりD.I.T(Do It Together)、協働ではぐくむ温かなコミュニティー

なるほど。彼らは刹那に生きているのではない。“Stay Alive”とは「ギリギリでいいから、自分らしく生きろ」。そんな、はみ出し者への応援歌に聞こえてきた。「俺たちみたいなメッセンジャーは、“自転車が好き”という、それだけで友だちになれる人種なんだ。例えば、今日親しくなったメッセンジャーに10人の自転車仲間がいたとする。そしたら俺は、そのプラス10人とも友だちになったも同然ということ。相手も、俺の自転車仲間の全員と友だちってこと」。これが、コーデルによるところの「メッセンジャー精神論」だ。

事実、彼は非常に顔が広い。自宅から3分のところにあるウィリアムズバーグ橋の中間地点に着くまでにも、通りすがりの自転車乗りたちがひっきりなしに彼に声をかけていく。「調子はどう?」「久しぶり!」。ハイファイブ、時に止まってハグ。なんだか、彼の周りには古き良き下町のような人付き合いが根付いている。その温かさは、意外にも、この無機質なニューヨークの街によく似合う。「“NMD”のプライムニットのアッパーは仲間の目にも止まるみたい。褒められたのは今日だけでもこれが3回目。気分が上がるね」と、彼は爽やかな笑みを浮かべてペダルを漕ぐ足に力を込める。

「限界無き都市冒険」のために創られた一足、“NMD”

Sneakers for Urban Exploration

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