ファッションとサステイナビリティの未来を考える
Illustration by Ms.Little Chico
入社4年目。普段から紙資料を使わない、充電をつなぎっぱなしにしないなど、エシカルには積極的。でも、そのくせ、意味はイマイチ分からず、何となく格好いい気がしている
フュートゥラディションワオ代表理事
コレクション取材を通じてサステイナビリティの大切さに気付き、取材・普及活動を続ける日本の第一人者。今年、日本エシカル推進協議会の副会長に就任
入社以来、体重増加が止まらずダイエットのためにランニングを開始。高機能ウエアを探しているが、エコでかっこいいものなんてないと思い込んでるひねくれ者
フュートゥラディションワオ代表理事
コレクション取材を通じてサステイナビリティの大切さに気付き、取材・普及活動を続ける日本の第一人者。今年、日本エシカル推進協議会の副会長に就任
入社4年目。普段から紙資料を使わない、充電をつなぎっぱなしにしないなど、エシカルには積極的。でも、そのくせ、意味はイマイチ分からず、何となく格好いい気がしている
入社以来、体重増加が止まらずダイエットのためにランニングを開始。高機能ウエアを探しているが、エコでかっこいいものなんてないと思い込んでるひねくれ者
生駒芳子・代表理事(以下、生駒):まず、一連の取り組みは全て「エシカル」という大きな傘の下にあります。その中で、無駄を出さずに地球を大切にできているか、不当な労働を強いていないかなどを問う「サステイナビリティ」と、どうやってものが作られているのかを明らかにする「トレーサビリティ」という考え方があります。
.企画制作部H(以下、H):では、どんな活動がサステイナブルなんでしょうか。
生駒:2015年にニューヨークの国連本部で採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」という指標があります。ここでは、貧困・飢餓を終わらせること、健康的な生活を送ること、不平等の是正、住み続けられる都市を作ること、平和と正義を持続することなど、分かりやすい目標が立てられました。これらの目標に向かって活動することは全て「サステイナブル」なんですね。例えば、平和な世界を目指すこともサステイナブルなんです!
ファッションと
サステイナビリティの関係って?
生駒:そんなことないですよ!ファッションとサステイナブルはすごく深い関係にあるの。私がサステイナビリティに興味を持ったきっかけは、肌で感じた地球温暖化だったんですが、ヨーロッパのコレクションを取材していた2000年前後に、冬なのにそれまでの気候と違って、とても暑く、異常に感じられたんです。そんな中でステラ・マッカートニーがエシカルを訴えたり、ラグジュアリーブランドが環境保全宣言をしたり、雑誌でエシカル特集を組んだりと徐々にその流れを感じていました。07年くらいには、いよいよファッション業界でもエシカルブームが来るな!と思いました。
.H:私たちが知らないだけでずっとファッション業界でも動きがあったわけですね。でも、なぜここ数年で急速にサステイナビリティという言葉を耳にするようになったんでしょうか?
生駒:ネットの普及もあり、「ウエアラブル」なんかも出てきて、もはや着るという概念が変わってしまった。ファッション・マーケットでは旧来の売り方が通用しなくなったんですね。トレンドや着こなしの提案以上に、ライフスタイル・作り方とその過程などを強く打ち出すようになったことが、エシカルに火をつけた一つの要因です。一方で、ラグジュアリー業界は、目に見えない部分で実はずっとエシカルな活動を貫いているんですよ。
.S:もうこの時代のファッション業界では、“当たり前のこと”なんですね。
.H:とはいえ、一部では「サステイナブルなものはダサい」という話も聞きます。環境に良いものだってわかっているけど、ダサいものを身につける気にはなれないなあ……。
生駒:確かにこれまでは質素というイメージも強く、エコだから買うという概念がありませんでした。しかし、「エシカル・クリエイティブ」という言葉も出てきたように、どんどんおしゃれなものが増えています。ほら、コレクションブランドでもたくさんサスティナブルでおしゃれなアイテムがいっぱいあるでしょ?何より、世の中のマインドも「エコは当然」というふうに変わってきました。4月22日にはアースデイというイベントがおこなれますが、とってもノリが良くて、いい意味でファッション的ですよ。
日本はもともとエコな国。
だからこそ普及しづらい!
生駒:そこがまた難しいところなんです。日本での普及率は少し低いかもしれないですね。ただ、ここ3〜4年はメディアが取り上げるようになったり、政府が後押しをしたりしていることで、認知度は上がっていると思います。最近は地方からの発信がすごいんです。例えば、千葉の木更津市がオーガニックシティーを宣言したり、熊本県や名古屋市や逗子市はフェアトレードタウン宣言、徳島県はエシカル宣言と、独自にサステイナビリティを推進しています。今年は日本にとって「エシカル元年」になるかも。
.S:え?すごく意外です。どうして日本では普及しづらかったんでしょう?
生駒:日本の社会には、江戸時代に代表されるように、昔からエコ、エシカルの精神が根ざしています。みながエシカルやエコのマインドを持っていて、意識しないからこそ、広まりにくい。例えば、ヨーロッパではもともと土壌の状況が厳しいからこそ、農作物を大切にしようという考えからオーガニックが広まった。日本は、もともと豊かだということも、エコやエシカルが広まりにくい原因ですね。でも、あなたたちのような今の10〜20代は「サステイナビリティ」に対してとても敏感で、政府の打ち出しもあって、波は確実に大きくなっています。
スポーツもサステイナブルな時代?
.S:4月19日には“ADIDAS Z.N.E ZERO-DYE”というサステイナブルなパーカを発売すると聞きました。
生駒:オーガニック食品が話題となって、その後オーガニック・コスメ、ヘアケア、ファッションと徐々にサステイナブル商品が広がってきた中で、スポーツ業界も参入となると、とても面白い!
.S:染料を使わず、素材本来の色を残しているそうですね!
生駒:「アディダス」はもともとアスリートのためのウエアを作っているブランドなので、選手が必要とする水の大切さを改めて考えたのかな。そこで、水を大量に使う“染める”という工程を無くしたわけですね。一説ではファッションは農業よりも水を使うと言われているので、この着想は興味深い。
.H:スポーツとサステイナブルは馴染み深いものなんでしょうか?
生駒:何のために服を着るのか、目的が明確なスポーツウエアからは新しいアイデアが生まれやすいんだと思います。また、素材そのものを生かすという意味で、“染めずに使う”というのはある意味贅沢なんですね。こういう視点を持つことが、「サステイナビリティ」を考える上では非常に大切なこと。とはいえ、スポーツウエアもファッションなのだからおしゃれじゃないと嫌ですよね!あくまでも、説明的になるんじゃなくて、ビジュアルとしてかっこいい。これがスポーツウエアも含めてファッションとサステイナブルを考える上ではやっぱりはずせないですね。
.S:確かに、スポーツもファッションも環境を維持しながらかっこいいものを作るという共通点があるんだから、スポーツ業界でもサステイナビリティという考えが出てくるのは当然かもしれないですね。
.H:アスリートだけじゃなくて、スポーツを愛する人たちも、スポーツを通じて高みを目指しながら、さらにサステナビリティにも気を配る、それって最高にかっこいいですよね。
PROFILE:「ヴォーグ・ニッポン」「エルジャポン」の副編集長を経て04年に日本版「マリ・クレール」編集長に就任。08年に独立し、ファッションやアート、ライフスタイルを中心に社会貢献、サステイナビリティなど多岐にわたる分野で雑誌・新聞への執筆を行う。現在はクール・ジャパン事業の一貫として、伝統工芸のプロジェクトを企画する一般社団法人フュートゥラディションワオの代表理事を務めており、今春発足する日本エシカル推進協議会でも副会長を務める
アディダスグループお客様窓口
TEL:0570-033-033