前例のない挑戦が
作品づくりの源
清川あさみ(以下、清川): 獅童さんとの最初の出会いは、私の作品「男糸」ですよね。まさに唯一無二の存在です。
中村獅童(以下、獅童) : 清川さんのことはそれ以前から存じ上げていたので、できあがりも楽しみでしたしうれしかったです。最近はますます輝いていますよね。お子さまも生まれて、さらにきれいになっている。
清川 : そんなことを言ってくださる獅童さんは女性の味方です!獅童さんは歌舞伎役者として古典的な面も持ちあわせながら新しいことに挑戦し続けていますが、モノ作りのこだわりはなんですか?
獅童 : “伝統と革新”です。400年以上続く歌舞伎の伝統を守りつつ、“獅童らしい”革新を追求すること。自分らしく生きるとはどういうことかをいつも自問自答していますし、そうしないと道は開かれないです。父親が歌舞伎役者ではないので、世襲制である歌舞伎の世界において人と同じことをしても、一歩抜きん出ることはできないんです。
清川 : 私も常に新しい生き方を考えています。モデルとしてキャリアをスタートしましたが、もともと持っていた自分の多面的な部分をどう生かすかを考えたときに、自分が前に出るのではなく作品を通してより広い世界観を作る方が向いていると思ったんです。そうしないと頭の中の面白いと思う世界を表現できなくて。それに普通に生活していても世の中の不思議な部分やゆがみが見えてきて、そのモヤモヤをどうやったら人に伝えられるだろうと考えました。ただ、アーティストになってから知ってくださった皆さんは、モデル時代の私と今の私がつながらなかったみたいです。
獅童 : でも、モヤモヤがないと良い作品は作れないですよね。すべてが満たされちゃうと意味もないし、作品を作るってことは世の中に対してどこかアナーキーな気持ちがある。満たされないからこそ自分は芝居を演じるし、清川さんはアートを作るんでしょうね。表現者って、ジャンルは違えど根っこは一緒。じゃないとつまらないです。
清川 : 私も人が敷いたレールの上を歩くことだけが正解だとは思わないし、誰かがやらないと何も始まらない。
獅童 : そうですよね。僕は自分で自分の名前を大きくしなきゃいけないし、役者として最初は群衆の一人としての役しかつかなかったので、空いた時間にとにかくオーディションを受けましたよ。たまたま受かったのが映画の「ピンポン」。あれが世の中に出させてもらったきっかけです。
清川 : そういう話最高です!
獅童 : 最近上演した「女殺油地獄」だって、歌舞伎を倉庫やライブハウスみたいな場所で演じることに賛同する人もいれば、「あいつは何をやっているんだ」とネガティブなことを言う人もいたかもしれない。でも、それは気にしません。前例のないことをやることに意味があって、勇気が必要だけど、演じていてすごく楽しいし、批判をする人たちには「すごい」と言わせればいい。結局は自分にかかってるんですよね。
清川 : 前例のないことに挑戦するのは楽しいです。