「WWDJAPAN」が半年に一度、全国の百貨店や商業施設、注目ブランドに商況や売れているブランド・アイテムなどを尋ねる「ビジネスリポート」の通り、ラグジュアリー・ブランドの躍進が続いている。一方の国内勢などは、ラグジュアリー・ブランドよりも手頃な価格の商品を販売しているにも関わらず、コロナ前の水準に戻せないブランドも。なぜ、ラグジュアリーだけがこんなに好調なのか?ラグジュアリーの取材歴が長いベテラン記者2人が分析する。
村上要「WWDJAPAN」編集長(以下、村上):なぜ、ラグジュアリーだけがこんなに好調なのでしょう?
向千鶴「WWDJAPAN」編集統括兼サステナビリティ・ディレクター(以下、向):日本だけじゃなく、世界共通の動向です。ただし、すべてのラグジュアリー・ブランドが売れているわけでもありません。思うに売れているラグジュアリーはまずブランド力、そして商品力、最後にマーケティング力が優れています。
村上:根本的な話ですね。
向:はい、やはり根本が重要かと。まずブランド力の高いブランドは、歴史という塗り替えられない財産を持っていて、超エリート経営者やクリエイティブ・ディレクターがそれを戦略的に掘り起こして活用しています。戦略がすごく明快なのが、ブランド力につながっています。
村上:例えば、どんなブランドのどんなエリート経営者が、歴史を戦略的に掘り起こしていますか?
向:やはりベルナール・アルノー(Bernard Arnault)LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)会長兼CEOと、フランソワ・アンリ・ピノー(François-Henri Pinault)ケリング(KERING)会長兼CEO、それにエルメス インターナショナル(HERMES INTERNATIONAL)のジャン・ルイ・デュマ(Jean-Louis Dumas)5代目CEOではないでしょうか?それぞれが日本で言えば東大・京大的存在の名門スクールで学び、企業のトップとしてブランド力を最大限に生かすべく歴史を掘り起こし続けています。
村上:商品力に関しては、才能あるデザイナーと職人の双方が重要です。最後にマーケティング力とは、時代に即したカスタマージャーニーが提供できているか?リアル店舗やデジタル、最近では仮想空間など、時代に応じたカスタマージャーニーを提供するマーケティング戦略の柔軟性がブランドや商品をさらに多くの人たちに知らしめ、マーケットシェアを拡大しています。1つ1つ、もう少し具体的に掘り起こしてみましょう。まず歴史の力って、やっぱり偉大なものでしょうか?
向:やはり塗り替えられないという点で、歴史があるブランドは圧倒的な先行者利益を有していると思います。古くは1780年創業の「ショーメ(CHAUMET)」など18〜19世紀に王室や貴族を顧客に創業したジュエリー、その次に馬具の「エルメス(1837年)」や旅行鞄の「ルイ・ヴィトン(1854年)」などの革製品、続いて20世紀初頭の「シャネル(CHANEL、1910年)」「バレンシアガ(BALENCIAGA、1917年)」などのオートクチュール、そして70年代以降には「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI、1975年)」といったプレタポルテ(既製服)の順番で世の中に現れますが、いずれもその原点にはすごいアントレプレナー(起業家)や目利きがいて、画期的な発想でビジネスを興しています。ラグジュアリーブランドは、そんな先駆者が先行して築き上げた財産をずっと大事にしていると思います。
繰り返し開かれる展覧会が果たす役割
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