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「ハイプビースト」創業者が明かすメディア誕生秘話とNYの「ハイプフェスト」

 ストリートファッション&カルチャーのオンラインメディア「ハイプビースト(HYPEBEAST)」は、10月6〜7日、同メディア初となるフェス「ハイプフェスト(HYPEFEST)」をニューヨーク(NY)・ブルックリンで開催する。ロサンゼルスの「コンプレックスコン(COMPLEXCON)」や中国・上海の「インナーセクト(INNERSECT)」など、近年、世界中でストリートヘッズを熱狂させているコン(コンベンションの略で交流の場の意味)やフェスに「ハイプビースト」も参戦することになる。「ハイプフェスト」には、藤原ヒロシや昨年閉店したパリのセレクトショップ、コレット(COLETTE)のサラ・アンデルマン(Sarah Andelman)元クリエイティブ・ディレクターがボードメンバーに名を連ねていることもあり、業界内では早くから話題になっていた。ますます存在感を増しているハイプビーストの創業者兼最高経営責任者(CEO)のケヴィン・マにコンタクトをとり、次なる一手に迫った。

WWDジャパン(以下、WWD):まずは「ハイプビースト」を立ち上げるまでのケヴィンの生い立ちについて教えてください。

ケヴィン・マ(以下、ケヴィン):僕は香港で生まれて5歳の時にカナダのバンクーバーに移住した。カナダで育ってカナダの大学を卒業したんだ。大学の時はファションを専攻していたわけではないけど、日本や香港のファッション誌を見て、日本のストリートファッションやスニーカーカルチャーに興味を持った。それで、スニーカーを集め始めた。その頃、オンラインでも最新の情報をいろいろ集めていて、オンラインの方がスピードが早いから、自分で「ハイプビースト」って言う個人的なスニーカーブログを始めたんだ。それが2005年の大学最後の年。まだその時はただのブログだったから、ここまでビジネスにつながるとは思っていなかった。だから大学卒業後に6か月銀行で働いた。普通に就職をして、9~17時で働いていたけど、その間も「ハイプビースト」は更新し続けていた。そしたら6カ月後には銀行の給料よりもブログで稼げるようになった。それで、銀行を辞めてフルタイムでメディアに専念することにした。稼げるんだったら親もハッピーだから別にいいよねって感じで(笑)。

WWD:「ハイプビースト」のコンセプトは?

ケヴィン:僕は東京やパリ、NYみたいなファッション都市で生まれたわけじゃないから、全て得る情報は雑誌からだった。バンクーバーは教育に力を入れているけど、情報は限られているから自分たちのネットワークだけで、情報を得たり、インスパイアしたりしていたけど、自分にとっては雑誌を通じて知りたいことを得るってことが日常になっていた。それが僕にとってのファッションで、「ハイプビースト」の生まれたきっかけでもある。情報を開拓してきたことがメディアを作る根源になっていたんだ。だからコンセプトは、僕たちの知りたい情報を伝えることだと考えている。

WWD:ターゲットは?

ケヴィン:特にターゲットを絞っているわけではなくて、学生だってお年寄りだってクールって思えればそれでいい。実際の読者は18~30歳の男性が多いけど、最近は女性からの支持もすごく集まっている。それで、メディアを分けたんだ。「ハイプビースト」は男性に向けて、「ハイプベイ(HYPEBAE)」(16年~)は女性に向けて、そして「ハイプキッズ(HYPEKIDS)」(17年~)は、自分たちの子どもにクールなモノを買ってあげたい親たちに向けている。11年には「ハイプビースト」で情報発信したモノを買いたいっていう人のためにeコマースの「HBX」をスタートした。6年以上経って、今は200以上の世界中のブランドが集まっている。

WWD:スニーカーは男性のカルチャーというイメージが強いけど、女性の支持が高まっているのはなぜだと思う?

ケヴィン:女性もたまにはカジュアルなスタイルを好むからそこがスニーカーのカルチャーにマッチしたんだと思う。スニーカーを履いてもバッグは「シャネル(CHANEL)」だったりするし、今はユニセックスなスタイルが台頭していて、男女の境界線がどんどん無くなってきているからね。

WWD:ケヴィンは今もスニーカーに興味があるの?

ケヴィン:もちろん。昔ほどクレイジーじゃないけどね(笑)。今は、一つコレっていうより、スポンジみたいに常にいろんなことを吸収したい。旅で何か吸収することもあれば、食べ物だったり音楽だったり、何にでも興味ある。それに一番影響を受けるのは、やっぱり周囲の人たちから。今はこんなにデジタルが発達しているから、何でも情報は入ってくるけど、多すぎるし、本当に何がいいのかは分からない。根本的に大事なのは、自分の周りにいる人だと思う。例えばあそこのお店が美味しかったとか、あの映画が面白かったとか。そこから新しい何かを発見して次につながっていければいいね。

WWD:現在のチーム体制は?

ケヴィン:香港、NY、ロンドン、日本、韓国、上海、パリ、LAの世界8都市にチームがあって、グローバルで300人ほどのスタッフがいる。僕はもう香港に10年以上住んでいるんだけど、今はチーム体制を強化するために世界各位を回っていろんな人に会っている。ベースは香港で時々NYと東京かな。

WWD:今回は1カ月間、日本にいたみたいだけど、来日の理由は?

ケヴィン:詳しいことは言えないけど、「ハイプフェスト」の準備とか。最初は自分もエディターだったから例えばパリに行くとなると12時間ぐらいかかっていて、今の時代12時間もメディアを更新しないことなんてあり得ないからできなかったけど、今はチーム体制も強化された。だから1カ月も日本にいることができる。

WWD:「ハイプフェスト」の開催経緯は?

ケヴィン:「ハイプビースト」はデジタルを主体にしている。でも人と直接会うことは、やっぱり大事なことだし、僕自身も人と人とのかかわりを大切にしてきた。だからこそ体験できる場所を作りたいと思ったんだ。自分たちの好きなブランドや人、ミュージシャンを集めて、いつもデジタルで見ていてくれている人たちに自分たちがいいと思ったモノを目で見て直接体感してもらう場所を作りたかった。いろんなブランドを知ったり、デザイナーに会ったりすることだってできるから、例えば学生が将来ファッション業界に携わりたいなって思うようなきっかけにもなると思う。直接教えることはできないけど、そういう場所を提供することはできるからね。

WWD:「ハイプフェスト」のボードメンバーに藤原ヒロシと元コレットのサラ・アンデルマンがいるとか?

ケヴィン:そう。メンバーはサラとヒロシを中心とした僕たち。自分たちがこれまで影響を受けてきたモノやブランド、アイデアを持ち寄って、来場者にもその影響を与えられるようなイベントにしたい。

WWD:NYだった理由は?

ケヴィン:オフィスがあるからかな(笑)。それは冗談だけど、NYには意外とストリートファッションに特化したイベントが今までなかった。それにNYっていろんなモノが混ざっているところだからピッタリだと思ったんだ。詳しい場所はまだ明かせないんだけど、NYのブルックリンで開催するよ。

WWD:参加ブランドは?

ケヴィン:インスタグラムで随時アップデートしているけど、50以上のブランドが参加してくれて、ミュージックパフォーマンスやDJ、トークショー、フードもある。「シュプリーム(SUPREME)」や「ベイプ(BAPE)」が好きな子たちに、そのブランドを知ってもらいたいとも思っている。みんながおいしいって言うレストランはもちろんおいしいけど、ローカルな人しか知らないようなレストランみたいに、そういうブランドをみんなでかき集めてNYで集約した。

WWD:「ハイプフェスト」が他のコンベンションと違うところは?

ケヴィン:多くのコンベンションはショッピングができるイベントだけど、僕たちは体験できるイベントをコンセプトにしている。ショッピングならオンラインや店舗でできるからね。例えば、「ザ・コンビニ(THE CONVENI)」も出店するんだけど、東京にしかないモノを東京に行けない人に体験してもらうことは大きな意味があると思う。会場のアートワークは(SF漫画「AKIRA」の)大友克洋が手掛けている。「AKIRA」は僕が子どもの時に見ていたものだけど、今の12歳の子たちは知らないだろうから、自分たちが好きだったものを次の世代にも伝えたい。過去、現在、未来を表現できるような場にするよ。

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