ファッション
連載 コレクション日記

1日の新規感染者46万人越えの中、パリ・メンズ開幕 22-23年秋冬メンズコレ現地突撃リポートVol.5

 ボンジュール!欧州通信員の藪野です。ミラノに続き、1月18日にパリ・メンズも開幕しました。今季もリアル&デジタルで開催されるので、パリから現地取材リポートをお届けします。ベルリンを発つ時点ではフランスの新規感染者は1日30万人超と連日報じられていたので、戦場ジャーナリストのような気持ち(ちょっと大げさ)で渡仏したのですが、いざ着いてみたら、パリの街はいたって普通。開幕日の18日には過去最多となる新規感染者46万5000人と発表されていたものの、レストランで食事している人も大勢いますし、視察に行った百貨店にも、混雑とはいかないもののお客さんが結構いました。ただ、油断は禁物!ということで、今回は基本自炊&睡眠時間を確保しつつ、健康第一でコレクション取材を乗り切りたいと思います。ぜひ、最後までお付き合いよろしくお願いします!

1/18(火)

初日は、若手デザイナーのショーやプレゼンがたくさん。普段はウィメンズを取材することが多いので、初めて見るブランドが盛りだくさんでした。若手に関しては、今季一緒に取材しているジャーナリストの井上エリさんが後日まとめてくれるので、ここでは個人的に気になった順にザザっと紹介します。

1位:BLUEMARBLE

2位:LUKHANYO MDINGI

3位:EGONLAB.

1/19(水)
10:00 BIANCA SAUNDERS

朝イチは、2021年「ANDAMプライズ」でグランプリを獲得したビアンカ・サンダース(Bianca Saunders)。早めに会場に着くと、ショー前から爆音でダイアナ・キングの「Shy Guy」やマキシ・プリーストの「Close To You」が流れていて、一気に目が覚めました。より国際的な知名度を高めるために決めたパリでの初のショーでフォーカスしたのは、タイムレスな美しさ。得意とするカッティングの技術を生かしつつ、生地を折り込んだり摘んで折り畳んだりしたデザインやプルオーバーに仕立てたシャツやジャケット、魚眼レンズを通して見たような歪んだチェックで、さりげない捻りを加えています。一見シンプルで派手さはないけれど、立体的で細かいこだわりを感じるデザインは、やっぱり直に見るのがいいなと実感しました。 

11:30 LEMAIRE

ルメール(LEMAIRE)」はコロナ禍ではデジタルで発表していたので、2年ぶりのリアルショーです。陽の光が注ぐ空と大地が描かれた大きな幕が地上から上に広がり、ショーはスタート。今季もアースカラーを中心とした落ち着いた色合いのワントーンスタイルや包み込むようなシルエットといった軸は変わりませんが、今季はキルティングアイテムやアノラック風のトップス、両胸にパッチポケットをつけたユーティリティーなシャツ、肩から掛けた水筒やさまざまなショルダーバッグなどが印象的。自然の背景も相まって、モデルたちは時にさ迷いながらも前へと進むノマドのようです。ただ土臭くならず、都会的に仕上げているところはさすが!オーバーサイズのアウターをガバッと羽織ったスタイルも心地よく、新たな日常に取り入れたくなりました。
 そういえば、つい先日、「コム デ ギャルソン オム プリュス(COMME DES GARCONS HOMME PLUS)」の22-23年秋冬コレクションを発表した時に川久保さんも「何にも属さず、自由に生きるノマドがうらやましい」と語ったそうですが、今季は”ノマド”という言葉をよく耳にします。コロナ禍という自由に動けない時間を経験して、縛られないノマドな生活を夢見る人が増えているのかもしれませんね。

14:30 AMI PARIS

 「アミ パリス(AMI PARIS)」のショー会場は、旧証券取引所。インビテーションは地下鉄の切符と09年まで定期券として使われていた”カルト・オランジュ”を再現したカード(しかも写真付きでパーソナライズされたもの)がパスケースに入って届きましたが、ショー会場も入り口に改札があったり、モデルが駅の通路のようなところから出てきたりと、パリの日常を象徴するものの一つである地下鉄を演出に取り入れました。その理由は、「地下鉄は、社会的地位や文化的ルーツの違いも、ローカルか観光客かも関係なく、いろんな人が入り混じる唯一の場所だから」だそう。リアリティーを大切にするアレクサンドルらしいチョイスです。

 コレクションは、いつもよりセンシュアルな要素が強く、成熟してドレスアップすることを楽しんでいるといったイメージ。メンズはボクシーなテーラードスーツやジャケット、オーバーサイズのロングコートが中心で、ウィメンズはサテンのシャツとミニスカートを合わせたり、ランジェリーライクなキャミソールをワイドパンツにタックインしたり。その上にジャケットやロングラインのチェスターコートを重ねています。ショー後は、久々のリアルショーで興奮冷めやらぬアレクサンドルに話を聞いたので、詳報はまた後日お届けします!

17:00 FACETASM

ファセッタズム(FACETASM)」はデジタル発表に加え、パリでもプレゼンテーションを開催。沖縄の森林で撮影したというコレクション映像にちなんで、会場に湿った雰囲気の森を再現し、そこにモデルが登場しました。“MUI”と名付けた今季は、直感に従って制作したというコレクション。おなじみのファスナーによって変形するデザインやプリーツ使い、脱構築的なアプローチを取り入れながら、遊び心と自由な感覚を持って作り上げたのだと感じます。特にバーシティジャケットとパファージャケットを組み合わせたアウターなどが印象的でした。

20:00 Y/PROJECT

Y/プロジェクト(Y/PROJECT)」の会場は、パリ北端18区にある宅配業者DPDの物流センター。雨の降る中、会場にようやく到着したと思ったら、客席はだだっ広い空間の奥の方。しかも横にきっちり1m以上間隔を空けて2列で椅子が並べてあり、自分の席は横約125席中97番目だったので、また延々と歩くことに……一日の最後にこれは堪えます。コレクションは、良くも悪くも「Y/プロジェクト」という印象。ボタンの開閉や中に仕込んだワイヤーでシルエットを変えたり、重なった襟などのパーツをアレンジできたりする、着用者に着こなし方を委ねるデザインが満載でした。新鮮に感じたのは、チュールを重ねたスーツや、ジャン・ポール・ゴルチエ(Jean Paul Gaultier)にオマージュを捧げる男女の裸体をプリントしたトロンプルイユアイテム。同ブランドを率いるグレン・マーティンス(Glenn Martens)はゲストデザイナーとして手掛けた「ゴルチエ パリ(GAULTIER PARIS)」のコレクションを26日に発表しますが、それに先駆けてプレタポルテのコラボアイテムを披露したそう。昨シーズン手掛けた「サカイ(SACAI)」の阿部さんに続き、グレンが来週のショーでどんなものを見せてくれるのか、期待が高まります。にしても、「ディーゼル(DIESEL)」のクリエイティブ・ディレクターもやっているし、大忙しですね。

おまけ:今日のワンコ

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

リーダーたちに聞く「最強のファッション ✕ DX」

「WWDJAPAN」11月18日号の特集は、毎年恒例の「DX特集」です。今回はDXの先進企業&キーパーソンたちに「リテール」「サプライチェーン」「AI」そして「中国」の4つのテーマで迫ります。「シーイン」「TEMU」などメガ越境EC企業の台頭する一方、1992年には世界一だった日本企業の競争力は直近では38位にまで後退。その理由は生産性の低さです。DXは多くの日本企業の経営者にとって待ったなしの課…

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

@icloud.com/@me.com/@mac.com 以外のアドレスでご登録ください。 ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。