毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2022年3月21日号からの抜粋です)
益成:パリに出張した「アデライデ」の長谷川(左希子マネジング・ディレクター)さんに買い付けリポートをお願いしたのですが、藪野さんの現地リポート同様、ロシアによるウクライナ侵攻の影響が色濃く出ていました。長谷川さんもジョージア出身のデムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)率いる「バレンシアガ(BALENCIAGA)」が一番印象に残ったようです。
藪野:「ヴェトモン(VETEMENTS)」を初期から買い付けていて、東欧ブランドのディストリビューションを手掛けていたこともある長谷川さんは、東欧の人たちとつながりが深いんですよね。
益成:そうなんです。デムナの弟であるグラム・ヴァザリア(「ヴェトモン」クリエイティブ・ディレクター)とも仲が良くて、彼らが難民だったときの話を聞いてショックだったと。「グローバルなファッション業界で働く身として、常に世界情勢に目を向ける必要性を再認識した」というコメントが印象的でした。
藪野:まさにそう思います。デムナがすごいのは、時代性や社会を読み、即座にショーに反映させる決断力と行動力。侵攻が始まったのはショーの11日前でしたが、すでに完成していたコレクションと演出に彼自身の過去も盛り込みながら新しい文脈を加え、本当に力強いメッセージを発信しました。
益成:このような状況だと、ファッションどころじゃないという気持ちにもなりますよね。
藪野:クリエイション以上に、デザイナーやブランドがこうした問題にどうアクションを起こすのかに目が向いてしまいますね。僕はドイツ在住だから特に感じるのかもしれませんが、陸でつながっているし、ウクライナ人の友人もいるので、全然他人事ではなくて。
益成:モスクワの友人も心配です。国外に出られないようで 。あらゆる物価......が上昇するし、日本も平和ボケしていられません。
藪野:今シーズンは、気持ち的に原稿に集中するのも難しく、書いていても時々やるせなくなりました。ファッション・ウイークを報じることに戸惑いがあったのも事実です。でも、僕らにできるのは伝えること。きちんとデザイナーのメッセージを届けなければいけないと思いました。