「クリスチャン・ラクロワ(CHRISTIAN LACROIX)」は、35周年のパーティーをメタバースの一つとして注目されるプラットフォーム、ディセントラランド(DECENTRALAND)で7月28日に行った。NFTのプラットフォームであり、メタバース上の不動産デベロッパーでもあるエクスクルーシブル(EXCLUSIBLE)とのパートナーシップにより、マドンナ(Madonna)が着用した2002-03年秋冬のクチュールコレクション“レッド ブライド”のドレスやレディー・ガガ(Lady Gaga)が11年のMV「Judas」で着用した08年のクチュールウエディングドレスなど、ブランドの過去のアイコニックな作品を3Dおよびデジタルで再現してパーティー会場で展示した。
パーティーの来場者にはカスタムできるバーチャルTシャツが配布されたが、事前にNFTを購入していたVIPゲストには「クリスチャン・ラクロワ」のシグネチャーでもある“パセオ(Paseo)”柄のデジタルスーツが配布された。「クリスチャン・ラクロワ」のメタバース戦略は、エクスクルーシブルとバーチャルのペントハウスを6月に賃貸契約したところからスタートした。その直後に「オープンシー(OpenSea)」でブランド初のNFTをリリースした。日本語で“シルクの夢”を意味する“レーヴ・ドゥ・ソワ(Reves de Soie)”と名付けられたNFTコレクションは、ブランドのスカーフ“カレ(Carres)”をベースに、350種類のデザインを用意。合計700のNFTを発売した。
「クリスチャン・ラクロワ」によれば、これらのプロジェクトは同ブランドをWeb3.0に進出させるための構想の一部であり、各段階で他とは違う面を打ち出してきたという。例えば“レーヴ・ドゥ・ソワ”はプリペイド形式にすれば先行購入することができた。NFTにおいて、事前登録やドロップのアラートといった先行特典はよくあるが、直接取引につながるような販売方法は珍しい。さらにこのデジタルのスカーフはジェネラティブミュージックを基盤にしている点もユニークだ。ジェネラティブとは、1つのオリジナル作品からシステムやアルゴリズムによってさまざまなバリエーションが生み出され、独自性のある作品が複数誕生すること。この仕組みにより希少性が高まるので、買い手にもメリットがあるという。現在、音楽業界ではジェネラティブミュージックの使い方が模索されているが、その手法をNFTに取り込んだのは新しい。このような独自の手法を市場がどう受け止めてたかは未知数だが、このNFTの買い手たちはその価値を早期に見出していたのだろう。
ニコラ・トピオル(Nicolas Topiol)「クリスチャン・ラクロワ」最高経営責任者(CEO)は「NFTの所有者は7月末から8月の初旬までに申し込めば、本物のスカーフというリアルアイテムも入手できる。我々はこうして2つの世界をつなぐことができると考えている」と明かす。同氏によれば、エクスクルーシブルと契約したバーチャルのペントハウスはミーティングやイベントの会場のほか、「ラクロワ」のインテリアやプリント、テキスタイルのショールームとしても活用していくという。「我々のプリントはインテリアやライフスタイルの分野でも愛されているので、バーチャルのペントハウスもプロデュースした。また半年から1年後には、NFT所有者向けにワークショップを開催する計画をしている」。トピオルCEOは、Web3.0への進出は簡単に利益を出すためのものではなく、メタバースという新しい世界を学び、その中でどうブランドを表現し、ブランドを知らない人たちにアピールするかを模索することが目的だということを強調した。
バーチャルペントハウスやNFT、パーティーなどプロジェクトの過程に多く関わってきたエクスクルーシブルのオリヴィエ・モワンジョン(Olivier Moingeon)共同設立者兼CEOは、「コレクターは好奇心旺盛だが、ブランドについての知識はあまりないため、彼らが理解できるところからスタートする。NFTはブランドを発見するための新たな方法だ」と、プロジェクトのプロセスについて説明する。モワンジョン共同設立者兼CEOは「カルティエ(CARTIER)」「ゴヤール(GOYARD)」「パルファム ドゥ ラ バスティード(PARFUMS DE LA BASTIDE)」など、ラグジュアリーブランドで20年以上の経験があり、ラグジュアリーとテクノロジーの融合を目標としている。トピオル「クリスチャン・ラクロワ」CEOは「彼は我々のルーツやブランドコードを理解している」と彼を評価している。