「菲薄化(ひはくか)」ケアを提唱するブランドが増えてきている。「菲薄化」とは、加齢とともに弾力のある肌を支える真皮のコラーゲンやエラスチンの量が減少し、肌が痩せてしまう現象のこと。菲薄化が進行する肌は、微弱ながら慢性的な炎症が起きており、女性ホルモンの減少もひとつの要因だといわれている。今回は、トレンドともいえる「菲薄化」ケアを提唱するブランドを紹介する。
「エトヴォス」の “アルティモイストライン”
スキンケア売り上げの25%を占める
数あるブランドの中でも、早くから「菲薄化」に着目していたのが「エトヴォス(ETVOS)」。
肌の表皮菲薄化を解決するために必要な保湿サイエンスの研究・商品開発を行い、2021年に“アルティモイストライン”が誕生。同ラインは、いまや「エトヴォス」のスキンケア売り上げの25%を占めるまでに成長している。前年比1.1倍超と好調に推移し、自社ECサイトでの口コミは5点満点中4.7点、リピート率が高いのも特長だ。
江利山結美「エトヴォス」PR担当は、「肌は表皮、真皮、皮下脂肪の3層から成り立っている。20代後半~30代の肌に着目したところ、すでに表皮の菲薄化が始まっていることが判明した。また、表皮が薄くなっていくと水分量が減少していく様子がみられる。つまり、加齢とともに表皮が薄くなればなるほど乾燥が進むと言える」と説明する。
“アルティモイストライン”のキー成分は、ブランドが長年大切にしてきた保湿成分・ヒト型セラミドとナイアシンアミドの独自ブレンド「セラミディアルコンプレックス」だ。江利氏は「表皮の菲薄化をケアするために、表皮幹細胞の細胞づくりに着目したところ『HIF-1α』というタンパクが密接にそのカギを握っているということが分かった。そして、そのタンパクに働きかける成分を探索し、見出したのがナイアシンアミドだ。また、細胞づくりを完成させる『角層バリア機能』にとって必要なもう1つの成分がヒト型セラミドであり、この2つを独自配合したのが『セラミディアルコンプレックス』。現在、特許出願中のサイエンスとなっている」。
コラーゲン研究のパイオニア的存在「再春館製薬所」
日本で初めて基礎化粧品にコラーゲンを配合するなどコラーゲン研究のパイオニアとして知られる再春館製薬所。今吉裕隆・再春館製薬所 研究開発部 上席研究員 研究員は「菲薄化はエイジングサインの一種。年齢とともに水分保持ができず、表皮が硬くなる現象だ。細胞がうまく機能していないので、ハリ感のなさ、シミ・シワといった複合的な肌悩みが出ている状態」という。
菲薄化ケアには、生クリームのような濃厚泡で包む「ドモホルンリンクル(DOMOHORN WRINKLE)」の“泡の柔肌パック”(80g、1万3200円)をすすめる。ブランドの主要原料のひとつ、中国吉林省で7年かけて育つ高麗人参・長白参の根由来「オタネニンジン根エキス」は肌をすこやかに保ち、レッドクローバーの花由来の「アカツメクサ花エキス」が肌のキメを整える。“泡の柔肌パック”も適役だが、化粧落としジェル、洗顔石鹸、泡の柔肌パック、保湿液、美活肌エキス、クリーム20、保護乳液、光対策 ドレスクリームの「8点数ハーフセット」(3万6300円)のライン使いで、より本格的な菲薄化ケアがかなう。
非薄化ケアに特化したスキンケアブランド「ラコシェ」が誕生
ホーウッドが9月に新たにローンチしたスキンケアブランド「ラコシェ(RACOSIE)」が提唱するのも「菲薄化」ケアだ。同社がキー成分とするのはマンダリンオレンジ果皮エキス、セイヨウハッカ葉エキス、アーチチョーク葉エキスからなる「植物エキスカプセル」。菲薄化のメカニズムは、ストレスや皮脂による炎症、紫外線などの刺激によって細胞内にある「NF-κB(エヌ・エフ・カッパー・ビー)」という因子が活性化し、炎症反応を誘導。それによってコラーゲン減少、メラニン増加、表皮が厚くなる角化異常を招いてしまうという。特にアーチチョーク葉は、肌の炎症抑制に効果が期待できるという。“クレンジングミルク”(200mL、4620円)、“モイストエッセンス”(30mL、9350円)、“モイストローション”(150mL、5500円)の3種をそろえる。
「津田コスメティックス」では菲薄化を「皮フ痩せ」と表現
「津田コスメティックス(TSUDA COSMETICS)では、菲薄化を「皮フ痩せ」と表現する。皮フ痩せとは加齢、紫外線、乾燥、ストレスなどによりヒアルロン酸、コラーゲン、細胞間脂質、NMFなどが減少し、肌が痩せてしまう現象を表現した造語。ブランドを代表する保湿クリーム“スキン バリア クリーム”(35g、6050円/65g、9680円)はサクラン、フィトステロール、セラミド2・3・6などからなる独自成分「植物由来バリアアップ複合体」を配合しバリア機能をサポート。着色料、香料、防腐剤、アルコール、紫外線吸収剤フリー設計だ。
女性特有の悩みに、先回りケア
上品なザクロの甘みで続けやすい「ニニ(NINI)」“nini 熟成発酵ザクロペースト”
インナービューティでも菲薄化を意識した商品がある。おすすめは、スーパーフードとして名高いザクロとデーツを発酵した「ニニ(NINI)」の“nini 熟成発酵ザクロペースト”(10g×7包、2000円/10g×30包、8640円)。一般的に、砂糖、甜菜糖、黒糖などを加えて発酵を促すのだが、糖類不使用というから驚き。また、最高品質とされるペルシャ・サーヴェ産マスラ種のザクロを収穫後、甘みを増やすために藁をかけて約1カ月間熟成。その後、400種の中から厳選した甘み豊かなデーツで発酵するという。スティック1本にザクロ約1.5個分のポリフェノールの一種・エラグ酸、18種類のアミノ酸など豊富な栄養素を含む。ザクロエキスの卸売りも行っているため、原材料のトレーサビリティも確保しているのもポイントだ。個人的には、抗炎症や抗酸化にアプローチする「美容おやつ」として続けている。