今シーズンのパリ・ファッション・ウイークは、新たに就任したデザイナーによるデビューショーが多い。初日のアンソニー・ヴァカレロによる「サンローラン」に続き、9月28日には、 「ランバン」がブシュラ・ジャラール=アーティスティック・ディレクター就任後初のショーをパリ市庁舎で開催した。ジャラールはニコラ・ジェスキエール時代の「バレンシアガ」や「オスカー デ ラ レンタ」などでキャリアを積み、自身のブランドではプレタポルテだけでなくリアリティーのあるクチュールを手掛けてきた実力派。安定感のあるコレクションでランウイデビューを飾った。
ショー前日のプレビューでは、「マダム・ランバン(創業者のジャンヌ・ランバン)は常にモダンなビジョンを持っていた女性。私も、素材とプロポーションで自分自身の新しい『ランバン』のボキャブラリーを表現したい」と語っていたジャラール。その言葉を象徴するファーストルックは、白いシルクサテンのパンツスーツに薄いシルクのマキシ丈のシャツドレスを合わせたコーディネート。男性的なアイテムを光沢や透け感のある素材で作ることで女性らしい装いに仕上げている。その後もツイードやバイカラーのレザーで仕立てたライダースジャケット、袖をシフォンで切り替えた真っ白なコート、ビジューやレースを飾った透け感のあるドレス、風をはらむマキシドレスなどを織り交ぜ、マスキュリンとフェミニンが交差するエレガントなスタイルで見せた。コレクションの核になっている端正なテーラリングや、フェザーやビジュー、スパンコールなど装飾からは、クチュリエとしての力量が感じられる。コートやファーアイテムが得意な彼女だけに次の秋冬シーズンも楽しみだ。