繊維大手の東レが、新たなアパレル生産の仕組みを構築する。同社は、ユニクロとの間で2016〜2020年の5年間で累計1兆円の取り引きを目指す戦略的パートナーシップ契約を締結しており、これまでも両社は東レの日本、中国、ASEAN、欧州にまたがる糸からテキスタイル、縫製までの生産拠点をフル活用する取り組みを進めていた。ユニクロが、“情報製造小売業”を掲げ、大幅な生産時間の短縮を求められる中、その中で最大のボトルネックになっていた縫製工程を革新する。繊維事業を率いる大矢光雄・東レ専務は、「香港子会社の自社工場では随分前から、自動化も含め、生産性を上げるための研究開発を行ってきた。詳細は明かせないが、最新のミシンなどを導入し、すでに一人で数台の機械を動かすような取り組みを実践しているし、(協力工場を含めた)我々の工場では、SKU単位でどこで何をどのくらい生産しているかをリアルタイムで把握している」と、縫製工場のIoT化に取り組んでいることを明かした。東レは素材メーカーであると同時に、17年3月期でグループ合計約2700億円を出荷する、アパレル製品のサプライヤーでもある。「世界でも最先端の仕組みだ」(大矢専務)と胸を張る同社の仕組みは、アパレル製品の作り方を大きく変えようとしている。
東レは繊維事業で、日本と中国、タイ、インドネシア、マレーシア、イタリア、イギリス、チェコにまたがって糸やテキスタイルの自社工場を持っており、こうしたグローバルな生産拠点を、効率的につなぐ、垂直統合型のビジネスを標榜してきた。同社の繊維事業の売上高は17年3月期で約8500億円。アパレル製品での出荷額2700億円は、全体の3割に達している。東レの繊維事業には、カーシートやエアバッグ、オムツ用の不織布なども含まれており、衣料向けにはかなりの部分が、こうした一貫型にシフトしていると見られる。
最大の売り先であるユニクロ向けに供給する“ヒートテック”はゆうに年1億枚を超えており、東レはミスなく供給するため、東レの生産ラインでは、ユニクロに先んじる形で、RFID(無線タグ)タグを導入するなど、いち早くITをフル活用した生産ラインを構築していた。
東レの日覺昭廣・社長も、生産スピードの大幅な短縮について、「製造面ではすでにITなどの導入で、糸やテキスタイルの生産スピードを上げるのは限界に近い。アパレル製品の革新的な生産短縮化は、つまりは情報の共有化と、需要予測の精度の向上がカギになる」と語り、緻密な需要予想に基づき、テキスタイルを生産。そうしてストックしたテキスタイルを、ジャストインタイムで縫製して供給する体制になることを示唆した。