H&Mヘネス・アンド・マウリッツ(H&M HENNES & MAURITZ以下、H&M)は欧州と米国での店舗休業の影響を受けて3月の売り上げが46%減だったことを発表した。3〜5月期は損失計上となる見通し。
業界大手で体力もあると見られていた同社だが、店舗休業の影響に対処するため、調達の調整や賃借料の再検討、開店する店舗数の削減、多数の従業員の一時解雇や投資の延期など迅速な対策をとってきた。3月31日以降、5065店舗のうちの3788店舗が休業となっている。
ヘレナ・ヘルマーソン(Helena Helmersson)最高経営責任者(CEO)はアナリストらとの電話会議で、「これほど厳しい状況はいまだかつてなかった」と語った。同CEOは、今年度の配当金支払いを中止し、上級幹部の給与を3カ月間20%カットする計画だと明かした。
金融機関のRBCヨーロッパ(RBC EUROPE)のリチャード・チェンバレン(Richard Chamberlain)は、H&Mの3〜5月期の見通しは「非常に厳しい」状態で、また6〜8月期にも「影響は続くだろう」と述べた。
H&Mは技術投資や店舗形態の見直し、定価販売の維持など大規模な改革を進めていたが、6〜8月期には商品の値下げを行う必要が出てくるかもしれないという。同社幹部らは、値下げによる対策は一時的だとして、19年12月〜20年2月期の在庫レベルが下がったことを挙げて改善努力の効果が表れていると述べている。
中国では一時は店舗の64%が休業となる中で売り上げも89%減ったが、10週間後には店舗の1%が休業中の状態で売り上げの落ち込み幅は23%にとどまったという。
同社幹部らは、「中国での回復の状況はオンラインと店舗とで異なっている」と言い、「今回の危機的状況によりオンライン販売への移行が加速するだろう。同時に両チャネルは補完し合う関係にもなっている」と述べた。ヘルマーソンCEOも、「今までオンラインで買い物をしていなかった顧客がネットで買うようになったことで、デジタルへの移行は予想より早く進むだろう」と述べている。
RBCヨーロッパのチェンバレン氏は、H&Mが新型コロナウィルス感染拡大危機以前の19年12月〜20年2月期にはドイツでの新たなプラットフォームにけん引され、オンラインの売り上げが48%増加していたことに言及し、同社が確実な回復の道をたどっていると述べている。
同社の2019年12月〜20年2月期の売上高は、前年同期比7.7%増の549億4800万スウェーデン・クローナ(約5494億円)、営業利益は前年同期比167.6%増の26億9000万スウェーデン・クローナ(約269億円)、純利益は前年同期比140.1%増の19億2800万スウェーデン・クローナ(約192億円)で、売上総利益(粗利)率は51%に改善した。