人種差別への抗議行動が続く米国に本社を置く医薬品大手のジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson 以下、J & J)が、美白効果があるとされてきた化粧品の販売を中止することを決めた。米国時間19日、ニューヨーク・タイムズなどが報じた。それを受け、日本のSNSでは混乱と疑問の声が広がっている。
販売中止対象とされている製品は、アジアや中東で販売されている「ニュートロジーナ(NEUTROGENA)」の「ファイン フェアネス」や、「クリーン&クリア(CLEAN & CLEAR)」の「クリア フェアネス」で、白人のような肌の白さが手に入るように思わせる広告表現に批判が寄せられていた。米国内では美白化粧品を販売する他企業に対しても批判が高まっており、J & Jは他社に先駆け“手を打った”形になる。なお、該当製品はすでに公式サイトから削除されている。
しかし日本のSNSでは、米国での美白化粧品に対する批判に困惑の声が集まった。「なんで過激派の人たちは『アジア人には美白を求めている人が多い』という事実を『白人に憧れている』って捉えるんだ?」「美白化粧品を禁止したところで、肌にコンプレックスを持つ人は誰も救われない」「日本でも江戸時代から美白化粧品はブーム。 “色の白いは七難隠す”なんて言葉もあるほど、人種とか関係なく美白は美意識にすり込まれたもの」という声も上がった。
日本や韓国、中国など、極東アジアで美白化粧品といえばシミ・ソバカスやくすみのケアを想定したものが多い。しかし、米国やインドなどでは“肌の漂白(Skin Bleaching)”の意味合いが強く、アフリカも空前の美白ブームといわれている。そういった美白ブームの反面、粗悪な美白化粧品には健康を害する成分が含まれていることや、それによる死亡例も報告されており、“白い方が美しい”という価値観に対して疑問の声が上がっているのも事実だ。
今回のJ & Jの取り組みは「白人文化による価値観の植え付けをやめる」という意思表示の一環ではあるが、各国に古くから根付いた“美白をめぐる価値観”の違いを浮き彫りにした。SNSユーザーからは、「インドもフィリピンもアジアだし、そこでは日本とはまた違う問題がある」「『美白』という言葉自体には昔から問題を感じていたのは確か。だって“肌が白くなる化粧品”だと勘違いする」という声のほか、「今の時勢的に企業イメージのために美白製品の販売中止を選ぶことはまぁわかるよねって感じ。賛同するわけではないけど理解はできる」という、米国の人種差別抗議運動の裏にある“問題“を指摘する声も上がっている。