ヘアケア製品を手掛ける「パンテーン(PANTENE)」は、毎年6月のLGBTQ+(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー等の性的少数者)コミュニティーの権利啓発を促す「プライド月間」に合わせて、ジェンダー規範から自由(ジェンダーフリー)なサロン体験の普及を促進する「ドレスコード・プロジェクト(DRESSCODE PROJECT)」に寄付する。
「ドレスコード・プロジェクト」はLGBTQ+の顧客向けに、個人の性表現を尊重するサロンや美容室の運用を目的として2017年に始まったグローバルな取り組みだ。自分の認識している性や出生時に当てられた性別などから、現代社会のジェンダー観に属していないと感じる人にとって、髪を切りに行くことが不安を生むこともある。この取り組みの狙いは会員制サロンや店舗、スタイリスト、美容室などに継続的な資源とトレーニングを提供し、全ての人が肯定される体験につなげること。
今回「パンテーン」は、インスタグラムでノミネートされたジェンダー包括性の高い複数のサロンに計8万ドル(約848万円)のほか、最大150店のサロンの会員費を免除するために3万ドル(約318万円)を寄付する。この支援のきっかけは「プライド月間」だけでなく、新型コロナウイルスの感染拡大によって大きな経済的損害を被ったサロン業界を考えてのことだ。多くのヘアサロンが閉店に追い込まれ、解雇も相次いだことを踏まえて金銭的援助に乗り出たという。
ジェンダー規範に縛られないサロン体験は、ヘアスタイルの表現に使われる言葉を見直すことや、多くの料金表に使われている男性・女性用のメニューに選択肢を増やすことなどが含まれる。女性らしい髪型や男性らしい髪型といった慣習的なステレオタイプに基づいた表現方法をやめて、髪型の説明に特化した表現に言い換えることもできる。このようなサロン体験を提示するクリスティン・ランキン(Kristin Rankin)「ドレスコード・プロジェクト」設立者は、「立ち上げたきっかけはトランスジェンダー女性の顧客がお店に来て、その次の日にツイッターで『初めて美容室で女性らしく扱ってもらえた』とメッセージをくれたこと。それぞれの感じるままに、自分を見せられたらいいと思う」と語り、現状について「男か女のどちらかに属していないと、簡単に排除されてしまう」と述べた。ほかにも「ドレスコード・プロジェクト」は、会員向けにジェンダーフリーな髪型のカウンセリングや、サロンのメニューにジェンダーの包括性を促進するガイドラインを設けている。
ランキン設立者は欧州の「パンテーン」と2018年以来パートナーシップを結んでおり、同ブランドのグローバルアンバサダーとしても活躍している。しかし米国に向けてキャンペーンが発信されるのは今年が初めてだ。「プライド月間」は6月いっぱいで終わるが、「パンテーン」と「ドレスコード・プロジェクト」は引き続き手を組む。進行中のプロジェクトの一つである「ジェンダーフリー ヘアカット クラブ(Gender-free haircut club)」では寄付金や地域の協力者によって、金銭的余裕のないLGBTQ+の当事者に無料のヘアカットを提供しており、「パンテーン」はその取り組みへの支援も行っている。「私たちは取り組みを世界規模のものにしようと『パンテーン』とともに協業している」とランキン設立者は語った。