「アン ドゥムルメステール(ANN DEMEULEMEESTER)」のセバスチャン・ムニエ(Sebastien Meunier)=クリエイティブ・ディレクターが7月2日に退任した。同ブランドは新デザイナーを探すとともに、オーナーとなる企業も新たに模索しているようだ。
ブランド獲得に名乗りを上げているのは、伊セレクトショップのアントニオーリ(ANTONIOLI)だ。オーナーのクラウディオ・アントニオーリ(Claudio Antonioli)は、ECサイト「ファーフェッチ(FARFETCH)」の子会社になった「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」を傘下に持つニューガーズグループ(NEW GUARDS GROUP)の共同創立者でもある。「アン ドゥムルメステール」とは交渉段階に入っているところで、「取引はまだまとまっていないが、夏の終わりまでには実現する見通しだ」とアントニオーリは話している。また、後任デザイナーについてのコメントは避けたが、“アントワープシックス(Antwerp Six)”のひとりとして知られるブランドの創設者、アン・ドゥムルメステールの復帰の可能性については否定した。
フランス生まれのムニエは自身のブランドを手掛ける一方で、「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」で経験を積み、2010年に「アン ドゥムルメステール」に加わった。アンの下でメンズ・コレクションのデザインを手掛け、13年にディレクターに就任。同年にアンがブランドを去ってからは、メンズとウィメンズの両コレクションを担当し、ブランドをけん引してきた。アン・シャペル(Anne Chapelle)最高経営責任者(CEO)は「ムニエが10年前にブランドに加わって以降、献身的に成し遂げてきた全てのことに感謝する」とコメントしている。なお、デザイナー退任以外の変更点については一切触れられなかった。
7月9〜13日にオンライン形式で行われる21年春夏パリ・メンズ・コレクションの公式スケジュールに、「アン ドゥムルメステール」は名を連ねていない。スポークスパーソンは今後のコレクションやショーについて、「全てのことが進められているが、私たちが当面の目標にしているのは1月のコレクション発表だ」とコメントした。
シャペルCEOは、1994年から同ブランドのビジネス面でのマネジング・ディレクターを務めており、2005年には未公開株を取得している。なお、シャペルCEOは別会社で「ハイダー アッカーマン(HAIDER ACKERMANN)」も運営しているが、情報筋によると「ハイダー アッカーマン」の売却も考えているという。
アントワープ王立芸術アカデミーを卒業し、1985年に会社を設立したアンは、自身初のコレクションを87-88年秋冬シーズンで発表した。翌年にはシューズとアクセサリーもスタート。92年からはパリでショーを披露し、96年にはメンズを発表した。最近では2019年に、黒や赤の筆使いでキアロスクーロ(イタリア語で明暗の意味)のエフェクトを生み出したブランド「デ テーブルウエア(De Tableware)」を携えてホームウエア市場に参入している。