パタゴニア(PATAGONIA)は、中国による新疆ウイグル自治区への人権侵害が文化的大虐殺にあたるとして、当該地域からの素材調達をやめることを明らかにした。
中国当局は、180万人のウイグル人、カザフ人、その他トルコ系ムスリムの少数民族などを、当局がモデルとしている「北京語を話し、中国共産党を支持する市民」に変えるため、大規模収容所で再教育および強制労働を行うことで民族性を抹殺する計画を実行しているとされている。新疆ウイグル自治区では2017年中ごろから新たな収容所の建設や既存の収容所を拡張する動きが見られ、中国当局によるウイグル族の言語や文化、宗教的な慣習を取り締まる動きが顕在化していた。
「ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)」や「ウォール・ストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)」の過去の調査リポートでは、「パタゴニア」を含む多くのアパレルブランドが、新疆ウイグル自治区で事業を展開する企業や、中国政府の助成金を受けている施設、または当局が派遣する抑留者を低賃金で働かせている施設と関わりのある企業との取引があることが明らかにされている。
パタゴニアのキャラ・チャコン(Cara Chacon)ソーシャル/エンバイロメンタル・レスポンシビリティ担当副社長は、「この問題に深い悲しみを覚えるとともに憂慮に堪えない。原材料の供給源を明確にするのは難しいが、重要な仕事だ。パタゴニアは公正労働協会(Fair Labor Association)のガイダンスに従って新疆ウイグル自治区から撤退し、人権侵害のない、環境負荷を限りなく削減した形で製品を作っていく」との声明を発表した。
同社は当該地域で完成された素材を受け入れないことと、人権侵害が行われていない場所のみを供給源とする旨の声明を3月に発表しており、今回の決定でさらに踏み込んだ動きを見せた。また当該地域のサプライヤーに撤退の旨をすでに通告しており、世界中のほかのサプライヤーに対しても新疆ウイグル自治区での原材料調達および製造を禁止したことを伝えている。
米ワシントンD.C.の戦略国際問題研究所(Center for Strategic & International Studies)によると、中国産コットンの80%以上が新疆ウイグル自治区で生産されている。現在中国による繊維原料、糸、生地、衣服などの生産量は世界一で、専門家は新疆ウイグル自治区で生産された糸がバングラデシュやカンボジアといった国々に輸出され、中国国外のサプライチェーンに紛れ込む可能性があることを指摘している。しかし実際には、世界に流通しているコットン製品の5分の1に新疆ウイグル自治区原産の繊維や糸が含まれているという。
ブランドがこのような搾取から利益を生み出さないためには、当該地域からの撤退、そして中国当局による弾圧の事実上の支えとなっているサプライヤーとの関係を断ち切ることが重要だといえる。