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「ポジティブになっていない事柄に対して向き合う」 「ナギ」をプロデュースする石井リナ・ブラストCEOにフェムテック市場について聞いた

 女性向けエンパワーメントメディア「ブラスト(BLAST)」を運営し、生理用品ブランド「ナギ(Nagi)」を立ち上げた石井リナCEO(最高責任者)。「ブラスト」立ち上げから資金調達を実施し事業を推進。今年5月に発売した「ナギ」の第一弾のアイテムである吸水ショーツは、発売開始後1週間ほどで完売するほど人気を集め、直近の再入荷時でも1、2時間ほどで完売するほどだという。石井CEOに今、注目のフェムテック市場や増える起業家、投資家についての考えを聞いた。

WWD: ここ1年ほど、日本でも吸水ショーツの存在感が強くなってきましたよね。

石井CEO:女性にとって身近だけれどまだまだ選択肢が少なくポジティブではない問題のひとつに「生理」があると思います。海外では月経ディスクや吸水ショーツ、CBD入りのタンポンなど、新しい生理用品が多くあります。欧米ではフェムテック市場も盛り上がり、ブランドもプロダクトも多様化していて、ライフスタイルに合わせて自分に合うものを選択することが可能です。しかし、日本ではおよそ7割の女性が紙ナプキンを使用しています。加えて、日本の女性たちはほかの生理用品の種類や選択肢を知らないという状況を知り、自分の体をコントロールすることに対して選択肢を提示しようと思いました。

WWD:「ナギ」のこだわりは?石井さん自身の経験も生かされていますか。

石井CEO:実際に海外の吸水ショーツを使用した経験があり、機能面でまだまだ改善の余地があると思ったものの「生理を忘れる体験だ」と感動しました。そういう意味では、吸水ショーツを作る上で機能性をアップデートしながら履いても違和感のない厚みや仕様にこだわりました。

また日本では海外に比べて生理用品のプロダクトもデザイン性も選択肢が少ないと実感しています。例えば女性の用品=ピンクというブランドやモノもまだまだ多いと感じています。紙ナプキンでは経血を吸収するとハートが浮き上がるという経験もあり、女性性やステレオタイプの押し付けにうんざりしたこともありました。そういった意味では「ナギ」ではメインカラーをグリーンにしており、ラブリーさやフェミニンさは排除し、女性たちが自然に選択できるものを目指しました。「ナギ」のパッケージや世界観に共感いただけることが多いと実感しています。「これこそが女性の私にとって、本当に欲しいと思えるデザインだ!」などとツイッターで書いてくださる方もいました。またパッケージもスタイリッシュに仕上げており、ライフスタイルの中で再利用して使っていただいているユーザーの方も多いです。

WWD:公に話しにくい風潮のある生理の話題ですが、自身の悩みや経験を話すことに躊躇はありませんでしたか。

石井CEO:「ナギ」を始める前に女性向けエンパワーメントメディア「ブラスト」運営をしていました。メディアで取り上げるテーマは社会問題からセックスとしており、日本の女性をエンパワーメントするというミッションはその頃から変わりありません。当時から身体や性にまつわるコンテンツを多く取り上げており、生理や体のことについて話すことに躊躇はありません。

フェムテック分野の盛り上がりには
女性起業家に伴走する女性投資家も必要

WWD:これまでに3回の資金調達を実施していますが、フェムテック分野に関して投資家からはどのような反応がありましたか。

石井CEO:スタートアップ業界は企業家だけでなくベンチャーキャピタルや個人投資家に女性が少ないのが現状です。「そもそも生理の課題がわからない」「共感することが難しい」などと言われることも多かったです。生理の悩みを解決するといった事業アイデアをプレゼンしても必要性を理解されにくく、投資に至らないケースも多々ありました。ブランドのローンチ後は、プロダクトに対する反響がかなり大きかったため、その初動の数字や反響をもって男性の投資家にも理解されやすくなったと実感しています。

WWD:世界には遅れをとっている日本のフェムテック市場ですが、盛り上げていくために必要なことは?

石井CEO:9月にベンチャーキャピタルANRI(アンリ)と赤坂優氏が率いるファンドから資金調達を行いましたが、ANRIの担当は江原ニーナさんという女性でした。ANRIはこれまでに130社ほど投資していますが、そのうち女性企業家への投資は7社だけ。しかし、彼女たちもスタートアップ界のジェンダーギャップに関しては課題意識を持っていて、今後ファンドとして女性起業家への支援や投資も接客的に行っていくと明言していらっしゃいます。フェムテックの盛り上がりに関しては、女性起業家だけでなくそれに伴走する女性投資家の増加も必要だと思います。

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