ファッションビジネスの世界に生きていて、“サステナブル”という言葉を聞かない日はない。そして、日々なされる会話の代表格が「サステナビリティとクリエイティビティは共存するのか?」だ。作り手としては「NO」と言えず、ただし受け手としては「う~ん……」と頭を抱えてしまうこともしばしば。そんな中にあって、思わず「いいじゃない!」と身を乗り出したジーンズがある。それがサステナブルプロジェクト「キセキレーベル(KISEKI LABEL)」と日本を代表するジーンズブランド「エヴィス(EVISU)」が協業した一本だ。
最大の魅力は素材感で、パイナップル繊維が濃紺のデニムの上で白く毛羽立っている。ツイードを想起させる見た目と風合いで、20年間デニムを取材してきた僕も「こんなの見たことない」だった。これについて山根英彦エヴィスジャパン社長は、「シルクのように繊維長のあるパイナップルの特徴を生かした。セカンドサンプル、サードサンプルではこれを推し進めて、ネップ感を表現してみても面白いだろう」と話す。
「キセキレーベル」は、食品関連の研究・開発・販売を行うフードリボン(沖縄県、宇田悦子社長)が2020年7月にスタートさせたプロジェクトで、本来廃棄されるパイナップルの葉を再利用している。パイナップルの葉の60%は水分であり、残りの40%の内39%をバイオプラスチック化してストローやカトラリーに、さらに残った1%から繊維を抽出している。宇田社長は、「パイナップルの葉は水分が多く固いため燃やすこともできず、堆肥への転用も難しい“厄介者”だった。そのため畑に放置されていたが、『キセキレーベル』はそれを価値あるものに変える。すでにパイナップルの生産量日本一の沖縄県北部・東村に加工場を作り、機械を導入した。年始をめどに製造ラインを稼働させる。パイナップルの葉から抽出した繊維を大阪の紡績会社に持ち込み、オーガニックコットンと混ぜて糸にする」と話す。
「キセキレーベル」は「エヴィス」のほか、2021年春夏シーズンに沖縄のアロハシャツブランド「パイカジ(PAIKAJI)」とも商品を製作する。