三越伊勢丹が伊勢丹新宿本店で開催する恒例イベント、フレグランスの祭典「イセタン サロン ド パルファン」が今年、初めて全国を巡回している。11月4日からの伊勢丹新宿本店を皮切りに、三越日本橋本店や丸井今井札幌本店、伊勢丹新潟店、岩田屋本店、ジェイアール京都伊勢丹などを経て、最後は静岡伊勢丹で12月25日まで行う。また、これまでは催事場で行ってきたが、今回は化粧品フロアを中心に開催し、幅広い消費者にアプローチしている。
伊勢丹新宿本店は、コロナ禍にもかかわらず売り上げが前年比10%増、目標比20%増を記録した。昨年は会期が4日間だったのに対し今年は7日間行ったことが大きく影響した。また、コロナ禍での積極的な来店促進ができなかったことから来店者数の目標設定はしなかったものの、結果的には「想定以上の来場者数」だったと入月雅子・三越伊勢丹 化粧品グループ マーチャンダイジング部 計画担当 スタッフマネージャーは振り返る。今年はコロナの影響もあり、イベントを化粧品の自社ECサイト「ミーコ」と例年以上に連動させた。その結果、ECの売り上げは同350%増と4倍以上の売り上げを達成したという。
中でも人気だったのは、「ゲラン(GUERLAIN)」の“ドロップ”シリーズだ。「『ゲラン』のフレグランスをエントリー価格で購入でき、かつボトルのかわいらしさやカスタマイズが出来ることから自家需要に加え、プレゼントニーズもあり今回の『サロン ド パルファン』でナンバーワンの売り上げ数を記録した」と入月マネージャー。また、今年はサロン ド パルファンの来場者層の間口を広げるべく、1階のイベントスペース、ザ ・ステージではタブレットを用いたデジタルカウンセリングをはじめ、香水を手軽に体験できるコンテンツを用意した。予約制のスタイリストによるカウンセリングは全ての枠が埋まり、キャンセル待ちが出るほど反響があったという。「ブランド数が多く、種類も多数であることから、フレグランス初心者にとって香りは非常に購入しづらい商品であることを再認識した。そんな中、カウンセリングはお客さま自身に本当に合ったフレグランスを選定してもらえるという安心感が得られ、好評だった」。
当初の目的通り、フレグランス初心者でも楽しめるようにと企画したコンテンツは奏功したようだ。「『サロン ド パルファン』が掲げた『香りの文化の発信』を目標に、今年は化粧品フロアがある1階を中心に実施。性別・年齢を問わずさまざまな方に楽しんで頂ける結果となったことから、目標を達成したと考えている」と前向きだ。一方で「フレグランス上級者には物足りなかったのではと感じる」という懸念も。例年だと本国から調香師を招いて直接来場者と交流したり、香りに込めた思いなどを話す場を提供していたが、今年はコロナにより断念。一部のブランドのみ、限られた枠でデジタル上でのチャットを用いて調香師と来場者をつないだが、直接調香師に会えることが毎年目玉の一つであったことは否めなず、コロナの収束が見えない中で、今後の施策の課題となりそうだ。
「(巡回する店舗を含めた)全国的な傾向としてコロナ禍となりメイクアップ全般が苦戦するもフレグランスは好調に推移している。今までお客さまはリップを使って口元で個性を表していたが、自身を表現するのにフレグランスを使用したり、自宅での時間が増えたことからルームフレグランスを求めるお客さまが多い」と分析する。