イタリア発ジュエラー「ポメラート(POMELLATO)」から、日本の職人技である“金継ぎ”を施したジュエリーコレクションが登場した。割れてしまったジェットやカショロンなどの宝石に日本古来の職人技の“金継ぎ”を施して1点もののジュエリーとして紹介。「ポメラート」のクリエイティブ・ディレクターであるヴィンツェンツォ・カスタルド(Vincenzo Castaldo)が2019年に来日した際に、“金継ぎ”に触れて共感したのがきっかけでこのコレクションが生まれた。
彼は大の親日化で日本の文化や慣習に対して敬意を持っている。「壊れたものが“金継ぎ”という工程を経て、より尊くなるという考えに惹かれた。傷付き癒えることを強さの証とするのは、とても現代的な哲学だと思う」とカスタルド。壊れたものを捨てるのではなく再利用するのは、まさにサステナブルな取り組みだ。ジュエリー業界では、リサイクルされた貴金属やエシカルゴールドなどを使用する動きが徐々に広まってはいるものの、壊れた宝石をアップサイクルするというのは聞いたことがない。カスタルドは、「イタリアと日本は遠く離れているが、完璧なものに勝る多様性や不完全さから生まれる美を受け入れるという詩的なビジョンを共有している。だから、“金継ぎ”を『ポメラート』のジュエリーに取り入れ用と思った」と語る。「ポメラート」が使用する大ぶりの宝石は“金継ぎ”に適している。壊れた宝石は日本の職人により“金継ぎ”が施され、リングやペンダント、イヤリングとして生まれ変わる。
“金継ぎ”とは、15世紀に生まれた職人技で“金”と“つなぎ合わせる”という意味だ。言い伝えによると、将軍の足利義政が愛用していた茶碗が割れ、それを直すために中国へ送ったが、修理部分の見栄えの悪さに失望して日本の職人により良い方法を模索させたのが始まりのようだ。そして、職人は漆と金粉を使って茶碗を修復し、それが世界初の“金継ぎ”になった。“金継ぎ”は壊れたものに新しい生命と価値を与える修復で回復力や思いやりなど、日本の考え方を表現していると言われる。昨年9月の国際平和デーの演説では、アントニオ・グテレス(Antonio Guterres)国連事務総長がスピーチで“金継ぎ”について言及している。
“金継ぎ”には非常に高度な技術が必要とされる。漆は接着剤の代わりに使用され、数週間かけて固まる。さらに、表面と同じ高さになるように研磨され、最後に職人が熟練の技を用いてつながれた部分に金粉を蒔く。カスタルドは、「何世紀にもわたって受け継がれてきた工芸品の知恵だ。完璧を目指すのではなく個性的で自然であるジュエリー、それが真の一点もので私にとってプレシャスの真髄だ」と言う。
“金継ぎ”のコレクションは1月中旬から東京のポメラート銀座で先行発売され、ニューヨークやパリ、ロンドン、ミラノなどのブティックを巡回する。価格は、ペンダントトップが110万円、イヤリングが200万円、リングが170万円。