ファッション

H&Mが環境配慮型の新素材 サボテンレザーやヒマシ油のナイロン

 「H&M」は、サステナビリティの新コンセプト“イノベーション・ストーリーズ(Innovation Stories)”を発表し、2021年を通して複数のカプセルコレクションを展開する。いずれも“先進的な製造工程”にフォーカスを当てる。第一弾は3月18日、“サイエンス・ストーリー・コレクション(Science Story Collection)”と題して公式オンラインストアで限定発売する。全25型で1799~1万8999円。

 “サイエンス・ストーリー・コレクション”は「H&M」として初めて用いる素材も登場する。例えば、ヒマシ油を用いた糸や、サボテン植物から造られる植物由来のレザーの代替え品などだ。こうした新素材はこれまで「H&M」が用いたあとに、他のブランドも採用することも多く、これら新素材の今後に注目だ。

 同コレクションで用いた象徴的な素材は下記の通り。

デザート(Desserto)
メキシコのサカテカス州の有機牧場にて育つ丈夫なノパルサボテン(ノパレア属のサボテンの総称)の一部を用いて作られたレザーの代替えとなる植物由来の素材。特許取得済。ノパルサボテンは自然に土壌を再生し、成長過程で必要な水の量も他の作物と比べて少ないなど、環境への負荷が少ないサボテンといわれている。「デザート」の原料は成熟した葉で、サボテンから葉のみを収穫するため、同じ個体から6~8カ月置きに繰り返し収穫することが可能。

エヴォ バイ フルガー(EVO by Fulgar)
「エヴォ(EVO)」はヒマシ油から作られた100%生物由来のナイロン糸。ヒマシ油からポリアミドを作る技術は以前からあり、さまざまな企業がすでに製品化している。ヒマシ油はトウゴマ(別名:ヒマ)の種子から得ることができ、トウゴマは他の植物には適さないような乾燥土壌地で自然と育つ植物で、水を大量に必要とせず、また食用の農耕地も必要としない再生可能な資源。原料生産が低負荷であり、従来のナイロンと比べて環境負荷を軽減できるという点で、改めて注目を集めている。

エコニール(ECONYL)
漁網や使い古しのカーペットなど100%廃棄物から再生されたナイロン繊維でイタリアのアクアフィルが開発。環境への影響を減らし、海をキレイに保つサポートとなる。また、廃棄ナイロンを原料とすることから、天然資源の保護にもつながる。通常のナイロンに比べてエネルギー消費量は60%削減でき、製造するアクアフィルは自然エネルギーを用いているためCO2排出量も90%削減できる。

アグラループの「ヘンプ バイオ ファイバー」(Agraloop〈HEMP BIOFIBRE〉)
アグラループは、米国のスタートアップであるサーキュラーシステムズの展開する、作物の廃棄物を織物用の繊維「バイオファイバー」に変える技術のブランド。油糧種子、CBDヘンプ、バナナ、パイナップルなど、さまざまな食物や薬用作物の廃棄物を活用できるという。サーキュラーシステムズは繊維・アパレル業界25年のベテランであるアイザック・ニコルソン(Issac Nichelson)が2017年にLAで創業。18年にH&Mファウンデーション(H&M Foundation)が主催するイノベーションコンペ「グローバル・チェンジ・アワード」を受賞している。

 エラ・ソッコルシ(Ella Soccorsi)H&Mコンセプト・デザイナーは「“イノベーション ストーリー”は、私たちの実験を次の段階へと押し上げるためのプラットフォーム。科学者や開発者の方々と共に行っている研究に希望を与え、私たちの進歩的な発想に光を当ててくれるものだ。“サイエンス・ストーリー”は、長年の研究と実験に敬意を表した」と説明し、アン・ソフィー・ヨハンソン(Ann-Sofie Johansson)H&M クリエイティブ・アドバイザーは「この新コンセプトは、H&Mのサステナブルで循環型のファッション・システムを目指す旅をつないでいくもの。“イノベーション ストーリー”は、私たちをさらに成長、発展させてくれるとともに、お客さまが愛し、誇りに思ってもらえるような魅力的かつ長く着用できる商品を作ることができる」とコメントを発表した。

 なお、「H&M」は2030年までに全ての素材をサステナブルな素材に切り替えると発表しており2020年は65%を達成している。21年は70%以上を目指すという。加えて、このほど、25年までに30%をリサイクル素材に切り替えると意欲的な目標も発表した。

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