私を大きく変えてくれた3人のデザイナー、アナ・スイ(Anna Sui)、トミー・ヒルフィガー(Tommy Hilfiger)に続く3人目は「3.1 フィリップ リム(3.1 PHILLIP LIM)」を手掛けるフィリップ・リムだ。
ニューヨークで新しい生活を始めた2011年8月、郵便受けには前の住人宛てとみられる数枚のハガキが届き、その中に“Mr. フィリップ・リム”の名前があった。
私は、日本にいた時から彼の大ファン。その名前を見逃すはずがなかった。「この世界には何人フィリップ・リムがいるんだろう?もしかして、本当に彼?彼はこのアパートで暮らしながらデザイナーの才能を開花させ、私は今同じ部屋でデザイナーを目指しているの?」と、ドキドキしながら考えを巡らせた。
そして、そのまさかだった。
ニューヨーク・ファッション・ウイークでの「3.1 フィリップ リム」のショーは、少なくとも10回は見たはずだ。念願の初対面は2016年。ブランド創立10周年を記念して、アーティストで環境問題研究家のマヤ・リン(Maya Lin)とコラボレーションした節目のショーだった。「Stop and Smell The Flowers」をコンセプトに、会場には毒素を含まないオーガニックな土約2tを使って、大地の壮大さや地層の重なりを表現。使用した土はショーの終了後、ニューヨークの市民農園に提供されて再利用されるなど、環境にも配慮されていた。
ショーの後、彼にインタビューする機会をもらえた。初対面の感動で涙が溢れる私に、フィリップとスタッフは感謝のハグをしてくれた。アパートについて聞いたところ、彼はその部屋を覚えていて、ニューヨークで新生活をスタートした時の思い出の部屋だと教えてくれた。
そして、関係者を招いた10周年記念パーティーにも招待してくれた。会場はブルックリンの野外で、普段はサステナブルな農園を営んでいる場所だった。お祭りライトと長テーブルが並び、ゲストが100人くらい集まっていた。モデルも編集者もその他のゲストも有名人ばかりで、「場違いかな……」と思い始めた私の心をほぐしてくれたのは、モデルのイリーナ・シェイク(Irina Shayk)だった。何を思ったのか、私の隣りにしゃがみこみ、この会場と今の世界情勢について色々と話した。そこに会場を設営した主催者も加わり、この農園に込めた思いと今後のビジョンを語ってくれた。みんなでより良い世界のあり方について語った、忘れられない思い出だ。
フィリップとはその後、2019年に「ヴォーグ(VOGUE)」主催のイベントFASHION'S NIGHT OUT(FNO)東京で再会。渡辺三津子編集長とフィリップ、私でファッション界のサステナブルについて語り合った。
私がオーガニックや新しいライフスタイル、サステナブルなモノづくりや届け方に気付けたのは、数々の芯のあるデザイナーに出会えたからだ。彼らは、私に次世代デザインへの気づきや、さらなる出会いを与えてくれた。
ファッションが教えてくれたこと。
それは間違いなくリベラルな未来であり、愛に溢れる未来への希望だ。今この場を借りて「ありがとう」と伝えたい。そして伝え続けたい。