オンワード樫山の20代後半〜30代向けEC専業ウィメンズブランド「アンクレイヴ(UNCRAVE)」が順調にファンを広げている。2020年春夏のスタートから1年余りでインスタグラムの公式アカウントのフォロワーは3万を超え、初年度(21年2月期)はコロナ禍以前に組んだブランドの売り上げ予算も達成した。価格と品質のバランスに加え、若手企画チームによる等身大目線の商品企画が、女性のリアルなニーズを捉えている。
ブランド名は“無駄なものを求めない”の意で、過度な装飾性を排したミニマルなセットアップ提案を主軸として打ち出す。「自社の百貨店ブランドと同等の生産背景」(国府美咲MD)による品質と、実店舗を持たないなどコスト抑えて実現する、リーズナブルな価格のバランスが武器だ。秋冬物のトップス、パンツ、スカートなどは1万〜2万円台が中心で、ウールコートでも4万円を切る。
プロモーション面では、広告戦略に頼らず、SNSを中心に口コミでじわじわと広める方針を取ってきた。国府MDは「新作やスタイリングの投稿をするたびに、熱心なリアクションが多数ある。純粋に服のよさが伝わり、エンゲージメントの高いファンを増やすことができる」と手応えを話す。
ストロングポイントは、お値打ち感だけではない。大事にしているのは、「ターゲット(20代後半〜30代の女性)と同じ目線に立つこと」。20-21年秋冬では、厚手のウールメルトン素材を使用したコート類がヒットした。メルトン素材特有のごわごわした着心地を排除し、撥水・撥油性も備えるなど、顧客の声を元に機能面を重視した。ダッフルコート(税込3万9600円)は4000件以上、ピーコート(同3万7400円)は1700件以上の再入荷待ちが出た。21-22年秋冬も継続販売する。
「厚手のコートが市場で売れないと言われる中でも、他にないものが作れれば、お客さまに必ず響く」と自信を深める。国府MDは29歳ながら、ディレクターを除けば企画チームの最年長として中心的な役割を担う。「若いチームだからこそフランクに、のびのびと仕事ができている。今までのアパレルブランドのように、シーズンテーマはこれ、トレンドはこれ、と頭でっかちに考えず、私たちが本当に欲しいと思う服を突き詰めていきたい」。
21-22年秋冬は、従来の黒、ブルーグレーなどのシックなカラーリングに、ピンクやイエローなどのニュアンスカラーを取り入れる。一部のブルゾンなどはユニセックスで着用できるようにするなど、新しい試みで新客の獲得を目指す。