そごう・西武は9月、西武渋谷店にD2CブランドのOMO(オンラインとオフラインの融合)型売り場「チューズベース シブヤ(CHOOSEBASE SHIBUYA以下、チューズベース)」をオープンする。仕掛け人は、伊藤謙太郎・事業デザイン部新業態推進担当部長。広告代理店、IT 企業を経て、2018年夏に未経験の百貨店業界へ。 そんな伊藤氏からのプロジェクトの直談判に、林拓二社長が応えた。「既成概念に縛られた百貨店を“壊す”。そのためには、挑戦への熱量が原動力になる」と期待をかける。(この記事はWWDJAPAN7月19日号からの抜粋です)
WWD:D2Cブランドを扱う売り場では、すでにマルイにもスペースを構えた「ベータ(B8TA)」などがある。「チューズベース」はどんな点がユニークなのか?
伊藤謙太郎・新業態推進担当部長(以下、伊藤):ショールーミング機能に特化するケースが多い中で「チューズベース」はしっかり「売る」。ブランドから商品を預かってECと完全在庫連携し、基本的に、店頭の全ての商品をECで買えるようにする。このために、ゼロからシステムを開発した。百貨店の商品カテゴリーにとらわれず、まずは「サステナブル」というテーマで、共感していただいたブランドを編集展開する。ブランド側からは場所代としての月額料金と売り上げに応じた金額をいただく。
林拓二社長(以下、林):19年の夏ごろだったか。伊藤くんがこのアイデアを直談判に来たとき、何だかすごくワクワクしたのを覚えている。
伊藤:低身長向けの服など、ニッチな商品を売るEC専業ブランドでも、年商10億円を超えるケースもある。ただ、ある程度の規模から抜け出すにはリアルの接点が必要になってくる。百貨店ならではの編集力を生かした売り場を作れば、ウィンウィンの関係が作れそうだと考えた。
WWD:伊藤さんは前職では、そごう・西武は取引先だった。
伊藤:ITの領域では、クライアントについてシステム会社の方が実情に詳しいということもある。ただ開発者の立場では踏み込めないもどかしさもあって。一消費者の立場で考えても、世の中はスマホで買い物がどんどん便利になっている。ECならブランドをまたいだ買い回りも簡単なのに、リアル店舗ではAのお店に行き、Bのお店に行く。会計も、それぞれのお店で済まさなきゃいけない。もっと便利な仕組みがあるべきだと思っていた。また、オンラインベースなら購買までのプロセスが全てログに残るのは当たり前。AIカメラなどのテクノロジーを活用し、それをリアルでも実現していきたい。この仕組みは社外への展開も視野に入れ、百貨店、ないしは小売業全体のためになるサービスのひな型を目指す。
林:伊藤君からしてみれば、百貨店の商売は“旧石器時代”に見えたんだろうね。
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