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中国コスメブランドが宮脇咲良を起用、仕掛け人が語る「日本人インフルエンサーが“中国発アジアの顔”になる時代」

 日本で展開する中国コスメ「フラワーノーズ(Flower Knows)」は、そのファンシーでユニークな世界観を武器に、日本の若者の心を捉えている。6月には元HKT48で、韓国ガールズグループIZ*ONE出身の宮脇咲良をアンバサダーに起用し、日中で話題になった。中国コスメに韓国で活躍した日本人アイドルを起用する、という斬新な試みを実現したのは、東京発の広告会社モールドブレイキング(MoldBreaking)だ。モールドブレイキングは東京と中国・上海にオフィスを構え、美容業界に特化したトータルマーケティングを請け負う。郭兮若(かく・けいじゃく)代表は「社員は東京に10人、上海に22人おり、独自資本で経営している。主にビューティブランドのグローバル化をゼロから支援しており、請け負ううちの6割が日系ブランドの中国展開。美容分野に特化しているのが、総合商社とは違う当社の強みだ」と話す。

 モールドブレイキングではチャネル開拓からデジタルマーケティング、クリエイティブまで一元サポートをしている。「クリエイティブとデジタルマーケティング、どちらもできる企業は少ない。クリエイティブは属人的な能力であり、当社の強みの一つ」と郭代表。これまでの実績には「ケイト(KATE)」の商品イメージ動画制作や、タレント朱一龍を起用した「リファ(REFA)」のテレビCM制作などがある。

 「フラワーノーズ」は宮脇咲良の起用から支援を開始。郭代表によると「初期からグローバル展開を狙ったブランドで、アジア全土に展開していく狙いがあった」という。同ブランドの創業者は日本カルチャーの影響を受けた人物で、日本展開には意欲的で、2016年設立のブランドながら、18年には日本展開をスタートしていたという。

 さらなるグローバル展開にあたり、ブランドの持つ「少女心」という世界観を表現でき、中国を含むアジアで影響力がある人物として宮脇の起用に至った。各国で知名度の高い宮脇だが、最も反響が高かったのは中国内だった。「日本と同じく中国でも韓流が流行った時期があり、韓国アイドルは今も人気。正式発表の前には次期アンバサダーのヒントとして“桜の国から”というメッセージを発信したところ、宮脇ファンを中心に盛り上がった」とその反響を伝える。

 中国コスメの顔を日本人が務めることは異例で、反日感情からの反発も懸念事項だが「ある程度のリスクは背負うつもりで起用したが、実際には反日的なコメントはわずかで、ほとんどがいい反応だった」という。日本でもアンバサダー就任の話題はメディアやSNSで取り上げられ、宮脇本人の拡散も手伝って、ブランドの知名度を高めている。

アンバサダーはなぜ必要? 日中のプロモーションの違い

 中国ではブランディングから商品販売に至るまで、芸能人を起用することが鍵となっている。美容業界でもアンバサダーは欠かせない存在で、大きいブランドであれば複数人のスターを起用し、人気の高いスターは複数社と契約する。ファンの購買力だけでなく、人物イメージも重要だ。例えば中国コスメの代表格「パーフェクトダイアリー(Perfect Diary)」はラグジュアリーブランドなどに起用される女優・周迅(ジョウ・シュン)を起用し、高級感を植え付け、ブランドイメージを高めた。

 郭代表は「中国ではスターの“商業価値ランキング”が複数から出ているが、ランキングは発表時より、少し前の数値が出る。ランキングで上位でも、既に旬の時期は終わっているかもしれない。そのため、起用にあたってはこれからの成長見込みをSNSの反響などから図ることも必要だ」と説明する。成長見込みは一定の指標がなく、市場に精通した人の目で見極める必要がある。

 アンバサダーの起用を含め、ブランドのローカライズは中国進出企業にとって課題だという。「日本からの進出企業にとって課題はいくつかあるが、日本のブランドイメージを守ることに注力し、ローカライズできていないことが多い。ブランドイメージを変える必要はないがSNSでの発信や露出方法、タイミング、クリエイティブなどはローカライズできるはず」と郭代表。

 発信、露出方法においては、オフラインの捉え方も日中で差があるポイントだ。「中国はEC化率が高く、消費財もオンラインで購入する。しかし主な購入先はモールなので、企業にとってはブランディングしにくいという課題がある。そこで中国ではオフラインをブランディングの場として重視する。日本はリアル店舗での購買が中心なのでオフラインの出店は販路開拓の意味合いが強いが、中国ではタッチポイントの一つ」と郭代表。

 前提条件が大きく異なる市場のため、日本に進出してくる中国コスメにもサポートが必要だ。「まだまだ本格的に予算を立てて日本に進出してくる中国企業は少ない。本当に日本で売れるのか半信半疑だし、日本に注力して中国でポジションを落としたくないという考えもある。それでも成功事例を見て興味を示す中国コスメは現れている」と郭代表。

 このような背景から、モールドブレイキングが立ち上げたのが、「ビー ザ ネクスト(Be. the NeXT)」だ。日中の美容市場に関する情報に特化したオリジナル動画コンテンツを世界に向けて配信するほか、KOL(Key Opinion Leader)らインフルエンサーを束ねるMCN(Multi-channel Network)機関との業務提携によるキャスティングなど、プラットフォームとしてブランドの海外進出を支援。またアフターコロナに向け、日中コスメのオフライン接点を提供する美容複合施設の開設を予定する。コロナ禍で日中の化粧品企業の海外進出が進んでいるが、まだまだ溝の深い日中市場には多くのサポートが必要だ。

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