ファッション

ケリングと「カルティエ」がタッグ ウォッチ&ジュエリー業界の新たなサステナ指標を設立

 コンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT以下、リシュモン)傘下の「カルティエ(CARTIER)」と、大手ラグジュアリーコングロマリットのケリング(KERING)は6日、サステナビリティの共同イニシアチブを設立した。「責任ある宝飾品業のための協議会(以下、RJC)」と協力し、「ウォッチ&ジュエリー イニシアティブ 2030」を立ち上げた。

 同イニシアチブは、サステナブルな未来のために手を取り合い、より良い行動を開始することを目的とする。「気候レジリエンスの構築」、「資源の保護」、「インクルージョンの促進」という3つの分野を設けてアプローチ。RJCのほか「科学的根拠に基づく目標(Science Based Targets)」などを基にしており、業界全体を巻き込んだ変化を促す。国内外で展開するブランドからディストリビューター、サプライヤーなど、ウォッチ&ジュエリーに関わる全業態を対象に、賛同する企業らを募る。署名した企業やメゾンは、科学的根拠に基づく炭素排出量の削減目標の設定や、定期的に3つの分野での達成状況などを報告する。

 「気候変動レジリエンスの構築」の分野では、世界的な平均気温上昇を1.5度に抑える努力を追求する「1.5度目標」をもとに、二酸化炭素排出量の削減や、30年までに「ネットゼロ」の実現を掲げる。ネットゼロは温室効果ガス等の排出量から、吸収量と除去量を差し引いた合計を実質ゼロにすることを目指すこと。「資源の保護」は、自然や生態系への影響を視野に入れてビジネスを営む目標。署名企業は原材料の調達から生物多様性や水源に負担のかからない行動計画を策定することが求められる。最低限のコミットメントとして同イニシアチブが掲げるのが、「インクルージョンの促進」。バリューチェーン全体で包括的であることを念頭に、人権や労働者の権利、採掘慣行などを監査する倫理規範(Code of Practices、COP)認証の取得を2年以内と期限付きで設けた。

 シリル・ヴィニュロン(Cyrille Vigneron)「カルティエ」プレジデント兼最高経営責任者(CEO)は、「ケリングとともにより持続可能な業界を目指した取り組みを開始すること、そして同業他社と手を取り合っていけることを期待している。全てのメゾンとサプライヤー、ビジネスパートナーが、地球と人々にポジティブな影響をもたらすプロジェクトに協力して取り組むビジョンをこれまで以上に共有したい」と述べた。

 ケリングのフランソワ・アンリ・ピノー(Francois Henri Pinault)会長兼CEOの右腕を長年務めるジャン・フランソワ・パル(Jean-Francois Palus)=マネジング・ディレクターも、「ケリングでは、ラグジュアリーは環境や社会の基盤を作る存在であると考えている。地球を守るために必要な変化を起こすことが、業界をけん引する一企業としての責任だと信じている。ウオッチ&ジュエリーの分野でも、テーマを設けて持続可能なゴールを設定し、行動を起こすことが変化を起こす確かな方法であるはずだ」と語った。

 リシュモンは2017年に、ケリングのアイウエアの株式30%を購入することで、パートナー関係を築いた。ケリングとリシュモンは以前にもカラージェムストーンのトレーサビリティ(追跡可能性)の向上に努めるイニシアチブに参加している。19年にはケリングが「ファッション協定」を設立。自ら旗振り役となり、企業の枠を超えて気候変動、生物多様性、海洋保護の3分野で実践的目標を達成する同協定を主導する。21年現在、傘下ブランドの「グッチ(GUCCI)」「バレンシアガ(BALENCIAGA)」はもちろん、シャネル(CHANEL)、ナイキ(NIKE)、H&Mヘネス・アンド・マウリッツグループなど主要企業70社が署名する。

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