ファッション

「H&M」の会員向けサービス、遠隔パーソナルスタイリングの現場に密着

 「H&M」を運営するH&Mジャパンは5月から、アプリ会員である「H&Mメンバー」を対象に、スタイリストがZoom越しにファッション相談に乗ってくれるという「スタイリング・アドバイス・サービス」を行っています。単にどんな服を買えばいいかアドバイスしてくれるだけでなく、断捨離の助言や、相談者のクローゼットをベースに似合う服やスタイリングの提案もしてくれるとのこと。循環型ファッションを推進する「H&M」として、「お客さまの手持ちの服をもう一度見直す機会を提供することが、サステナブルな行動について考えるきっかけにつながれば」と、広報担当者は狙いを話します。まだまだ残暑が厳しかったある日、実際に同サービスを受ける都内の女性宅にお邪魔しました。

 女性は23区内在住、29歳のシオリさん。元々は美容関連の企業の営業担当でしたが、コロナ禍をへて、現在はフリーランスとして友人のアパレル業などを手伝いながら、占い師として活動しているという女性です。「会社員時代に比べて服装はかなり自由になった。でも、在宅時間も増えてカジュアルな服ばかり着るようになったことで、たまに夫や友人とレストランなどに行く時の服がない。自分で選ぶと、ザ・結婚式の2次会のような格好になってしまう」といったお悩みを抱えていました。占い師として、「顧客から期待される華やかな雰囲気の服がない」とも。

 これまで、類似のパーソナルスタイリングサービスを受けたことはないとうシオリさん。しかし、「私自身が占い師という一種の専門職なので、どんなジャンルでもその道のプロの言うことは取り入れるタイプ。パーソナルスタイリングサービスは受けたことがなくても、普段は売り場で販売員さんに『あなたから見て、私には何が似合うと思いますか?』とよく聞いている」とのことでした。

エアークローゼットの仕組みを活用

 H&Mジャパンは同サービスの実施にあたり、ファッションレンタルのエアークローゼット(以下、エアクロ)とタッグを組んでいます。Zoomでスタイリストに相談をする仕組みは、エアクロが事業化している遠隔パーソナルスタイリングサービス「エアクロトーク」をベースにしたもの。エアクロとしては「H&M」と組むことで「パーソナルスタイリングの体験を広げることができる」(エアクロ広報)ことなどが狙いと言います。

 実際にZoomをつないでスタイリストがカウンセリングをする時間は45分ほど。シオリさんは事前にお悩みや好きなブランド、テイストなどを記したシートを提出しており、その内容をもとにスタイリストはプレゼン資料を作成。Zoom上で資料共有しながらカウンセリングが進みます。カジュアルテイストに傾倒しており、いいレストランに着ていく服がないという悩みには、「シンプルを意識すると洗練されてくる。服はシンプルにして、小物で遊びを加えるのがおすすめ」という回答。スタイリストの提案の中でシオリさんから「すごく好き!是非挑戦したい」という声があがった鮮やか色のワンピースとロングジレのスタイリングは、レストランなどのシーンでも、また占い師ファッションとしてもハマりそうでした。

 スタイリストとのZoom終了後にシオリさんに話を聞くと、「普段自分では選ばないようなアイテムを提案してくれるのが面白かった。ジレも単品で見ただけでは恐らく興味をひかれなかったが、スタイリングで見せてくれるとイメージがわいて挑戦してみたくなる」との答え。今回のカウンセリングでは断捨離相談は出ませんでしたが、「スポーティーなトラックパンツを買ったが何を合わせればいいのか分からない」「キャミソールが好きで何枚か持っているが着こなしの幅がない」という手持ちアイテムの活用法には話が及び、「手持ちの服をもう一度見直す機会を提供したい」というH&Mジャパンの狙いも一定満たしていると感じました。


H&Mジャパン広報から
客と長期的な関係を築くためのサービス

 「スタイリング・アドバイス・サービス」は、今年の5〜11月の7カ月間の予定でスタートし、応募者の中から毎月35人前後に遠隔カウンセリングを実施している。好評を受けて、実施期間を来年5月まで延長することにした。また、当初はアプリ会員の中でも“プラスメンバー”(500ポイント以上の保持者。通常は購入金額100円に対し1ポイント付与)の方たちに、エクスクルーシブな体験を提供したいという考えで始まったが、より広く体験してもらうため、会員であればどなたでも応募できるように変更した。実際にサービスを受けたお客さまからは「友人や家族とは違う、客観的なアドバイスがもらえて新鮮だった」といった声をいただいている。なかなか買い物などに出かけづらい子育て中の女性からも「時間や場所を問わず受けられる点がいい」「自分のことは二の次だったので、自分のことを考える時間が持てたことが有意義だった」といったフィードバックをいただいている。ブランドがお客さまと長期的な関係を築いていく上で、非常に手応えを感じている企画だ。

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