ユナイテッドアローズ(以下、UA)はこのほど、オリジナルのヨガウエアを軸とした新レーベル「トゥー ユナイテッドアローズ(TO UNITED ARROWS)以下、トゥー」を始動した。同社の主な顧客層である30〜40代の女性の間で、ヨガへの需要が高まっていることや生活圏内で過ごす時間が増えているといったライフスタイルの変化を受け、「スポーツに寄りすぎず、都市での日常生活をクロスオーバーするブランド」として、アクティブウエアを中心としたオリジナルアイテムに、セレクトしたカジュアルデイリーウエアや雑貨を交えて提案する。
企画を担当した浅子智美「UA」ウィメンズファッションディレクター兼バイヤーは、ヨガ歴18年。オリジナル商品の構成は約6割で、浅子ディレクターの実体験に基づくリアルな気付きや工夫を随所に反映している。アクティブウエアのラインアップは、ハイウエストのレギンス2型(税込1万1000円、1万2000円)やブラトップ2型(同8250円)、カップ付きキャミソール(同8800円)など。日常着に取り入れてもらうことを想定し、ホワイトやブラック、ブラウンなどのベーシックカラーを採用した。サステナビリティを意識し、生地は再生素材を使用。梱包材やタグなどの副資材もバイオマス由来の製品を取り入れている。さらに、日本環境設計と連携してオリジナルウエアの回収・再資源化にも取り組む。
デザインは、“セカンドスキン”をコンセプトにファッション性を保ちつつ体に負担をかけない設計にこだわった。「例えば最近のヨガウエアはアシンメトリーなデザインも多いが、体は左右対称な状態がベスト。『トゥー』では体のバランスを邪魔しないことを優先した」と浅子バイヤー。また「お腹を出していた20代とは違い、今はお尻のラインや脇のお肉が気になるのが正直なところ。自分のリアルな視点を生かし、30〜40代の女性が自信を持って動けるようなシルエットやデザインを提案している」。
カジュアルデイリーウエアを中心とする仕入れブランドは、サステナブルなビジョンを共有することを軸にセレクトした。すでに「UA」の顧客層からも支持を得ている「ザ・リラクス(THE RERACS)」「チノ(CINOH)」のほか、今治タオルのメーカーが作るアパレルブランド「サナ(SANA)」、アパレル以外では吸水型ショーツ「ベア(BE-A)」の商品も取り扱う。浅子ディレクターは、「特に『サナ』は同レーベルの独自性につながると期待している。オーガニックコットンの生地を使用した1枚で着られるアイテムで、『UA』本体よりもカジュアルなテイストを着こなしたい層を狙う」と言う。これらのアイテムとアクティブウエアを交えたスタイリングを、他のスポーツブランドにはない強みとしていく。
同社は過去に、スポーツレーベル「サウンズグッド(SOUNDS GOOD)」や、モードカジュアルを切り口にランニングアイテムを打ち出した「アンルート(EN ROUTE)」などを手掛けてきたが、「サウンズグッド」は2011年に終了し、「アンルート」は18年に店舗を閉め、現在はメンズのみの販売に縮小した。3度目の挑戦といえる今回は、スポーツだけでなく、ウェルネスやサステナビリティの要素を取り入れて打ち出す。浅子ディレクターは、「スポーツとウェルネスが紐づいて考えられるようになったことは、以前の市場とは違う点だろう。心の健康を大切にするヨガの思想とも一致する。ヨガは、マタニティーヨガやリラックスヨガなどのジャンルが豊富で、ほかのスポーツよりも間口が広い点も特徴だ。ニューヨークのアスレジャー的な打ち出しは難しいかもしれないが、コロナ禍で生活圏内での暮らしを自然に楽しむ感覚は浸透している。私自身、生活圏内であればレギンスで移動していることも多い。そんなライフスタイルに寄り添うファッションの選択肢がもっとあってもよいはず。『トゥー』はヨガを軸にUAならではのファッションと都市をリンクさせた提案を強みにしていく」と話す。
従来のファッション以外のモノ・コトの提案を模索する同社にとって、同レーベルはウェルネスにまつわるコトコンテンツの発信基地の役割を担う。今後「トゥー」取り扱い店舗の六本木ヒルズ店や渋谷スクランブルスクエア店では、開店前に外部講師を招いたヨガ教室の開催を予定しているほか、各店舗で食事や睡眠、ビューティーなどを交えたコンテンツ発信に力を入れる。レーベルとしてスタートさせたことで出店のリスクを伴わないが、今後は「市場の反応を見ながら展開店舗を拡大させ、将来的には単独店舗の出店も目指す」という。