三越伊勢丹ホールディングス(HD)は、2024年度(25年3月期)を最終年度とした中期経営計画を発表し、営業利益350億円の達成を掲げた。コロナ下からの回復を急ピッチで進め、13年度の過去最高益346億円を更新する。優良顧客との結びつきの強化によって百貨店事業の再生を図るほか、10年後の長いスパンでは不動産事業、金融事業で営業利益の半分を稼ぐ構造に移行し、営業利益500億円を目指す。
「百貨店を科学する」「顧客を貯める」。10日にオンラインで開催した会見で、細谷敏幸社長が繰り返した中計のキーワードだ。
「百貨店を科学する」とは主に収支構造改革を指す。従来の百貨店の常識に照らした手法を抜本的に見直す。百貨店事業の売り場の収益を細かく分析した上で、従業員を配置する。マーケティング投資ついても顧客分類の収益に基づき予算を最適化する。百貨店事業の従業員シェアを減らし、強化分野とする不動産や金融など他の事業に振り分ける。この数年間の固定費の削減によって収益構造は改善された。その路線をさらに推し進め、稼げる分野に経営資源を集中的に投じる。
「顧客を貯める」とは、MIカードをはじめとした認識顧客を増やすこと。一等地の集客力に頼ったマス戦略から、深くつながることのできる個客戦略にシフトする。デジタルツールを活用して、店舗を離れても親密なコミュニケーションがとれるようにする。特に伊勢丹新宿本店と三越日本橋本店においては認識顧客の比率を現在よりも10ポイント増の60%超に高める。
現在MIカードの会員は約210万人。これにEC(ネット通販)の普及に伴い増加するデジタルIDの会員なども加えて認識顧客を拡大する。認識顧客による売上高は19年度で4512億円(MIカード会員)。これに24年度に5800億円(MIカード会員、デジタルID会員の合計)にする。
認識顧客の中で特に重視するのが、年間100万円以上の買い物をする上顧客だ。消費意欲が旺盛な外商などの上顧客へのサービスを手厚くする。年間100万円以上購買するMIカード会員の売上高は19年度に1806億円だったが、24年度には2300億円に増やす。
「科学」のデータと「顧客」のニーズに基づき、商品構成も変える。伊勢丹新宿本店と三越日本橋本店の両基幹店では、婦人服・雑貨の売り上げシェアを集約し、ラグジュアリーブランドや宝飾・時計の高級品を拡大する。ラグジュアリーブランドと宝飾・時計の売り上げシェアは19年度の23%に対して、24年度は27%を予定する。