中高生のためのファッション育プロジェクト「フューチャー・ファッション・インスティテュート(FUTURE FASHION INSTITUTE、以下FFI)」は、「ファッション育」を通じて子どもたちの感性を磨き、未来の業界を担う人材やセンスを生かして働く子どもの育成を応援している。展示会への訪問や業界人のお仕事インタビューなどを体験するメンバーは、自らの体験をシェアして友人に刺激を提供。ポジティブなループを通して、子どもたちが「未来の自分」を思い描き、夢に一歩近づくことを願う。今回は「バーバリー(BURBERRY)」を訪れ、“ラグジュアリーがラグジュアリーな理由”を学んだ。
「プレスルーム」って、どんな場所?
勇気を持って最新コレクションをタッチ&フィール
約10人の学生が訪れたのは、東京・銀座にある「バーバリー」旗艦店とバーバリー・ジャパンのオフィス。小田切賢太郎社長らスタッフが出迎えてくれた。最初に訪れたのは、プレスルーム。PR&コミュニケーションマネージャーから、最新コレクションが並ぶプレスルームには、雑誌などのメディアで紹介してもらうためエディターやスタイリストに洋服やバッグ、シューズなどをお披露目する役割があることを学んだ。目の前には未発売のサンプルも数多く、学生はなかなか手が出せない。スタッフは、「気になる商品は、ぜひ触って見てください」と微笑みながら促した。
ミーティングスペースでは、「バーバリー」の歴史やレガシー、こだわりの商品、そしてスタッフの仕事内容を通して、“ラグジュアリーがラグジュアリーな理由”を学んだ。まずは小田切社長が、「バーバリー」の歴史を紹介。創業者のトーマス・バーバリー(Thomas Burberry)がブランドを代表するトレンチコートの素材、ギャバジンを考案したのは1879年。以来ロンドンを代表するブランドとして世界に広がり、英国ではエリザベス女王とチャールズ皇太子から英国王室御用達(ロイヤルワラント)の認定を受けている。21年末時点でブランドを手がけるのは、マルコ・ゴベッティ(Marco Gobbetti)最高経営責任者とリカルド・ティッシ(Riccardo Tisci)チーフ・クリエイティブ・オフィサーのタッグ。小田切社長は、「クリエイティブを担う150人ものスタッフと一緒に働くリカルドは、リーダーとしてのマネージメント能力も高く、社会や経済、ビジネスを常に勉強している。一方の日本からは、そんなデザイナーがなかなか出てこない。業界全体で育成する意識を持たないと、現状は変えられない」など、日本のファッション業界が直面している課題も教えてくれた。
日本の「バーバリー」は2015年まで三陽商会によるライセンスブランドとして広がったが、現在は世界共通のラグジュアリーブランドへと進化を遂げている。その経緯について小田切社長は、「三陽商会とライセンス契約を結んだ1970年代は、輸入品が高価で、日本人にフィットする商品が求められた。ただ2000年代以降はラグジュアリーブランドのアジアにおける売り上げが大きくなり、アジア人の体型にも配慮した洋服が普及。日本人のためだけに洋服を作る必要性が薄れた」と語った。ブランドを代表するトレンチコートは、250もの手作業を経たラグジュアリーの象徴的存在という。小田切社長からは、日本のファッション業界ではラグジュアリーと手頃なブランドが成長する一方で中価格帯のブランドが苦戦していることなども学んだ。
ファンを増やし、関係性を深めてビジネスを広げるプロフェッショナルを直撃
小田切社長の次は、マーケティング&コミュニケーション、クライアント・エンゲージメント、そしてリテールのトレーニング&エデュケーションの担当者が、それぞれの仕事を紹介した。「1人でも多くのファンを作るのが仕事」というマーケティング&コミュニケーションの担当者は、仕事は大別してPRとニュースのリリース配信、インフルエンサーとのお付き合い、イベントの企画、LINEなども使ったデジタルマーケティング、そして広告の運用などに分けられると解説。特に「バーバリー」はラグジュアリーの中で初めてLINE公式アカウントを開設したブランドで、伝統を守りながらも革新的な挑戦を続けている。
クライアント・エンゲージメントとは、顧客との関係性を深めてビジネスを広げる仕事。データを分析し、「どんな人に、どんなサービスを提供したら、何度も買っていただけるのか?」を考えているという。目指すのは「特別なモーメント(瞬間)の提供」。パンフレットやステッカー、チャームなどのギフトから、商品への名前の刻印、特別な顧客にはランチやディナー、時にはファッションショーへのご招待など「ラグジュアリーブランドらしい、ラグジュアリーなサービス」を企画・実践している。リテールのトレーニング&エデュケーションの担当者は、店頭でラグジュアリーな体験を提供するため、ショップのスタッフと理想の接客を考えトレーニングに励んでいるという。目指すのは、「特別で、その人らしい体験の提供」。商品のストーリーを学ぶのはもちろん、その人に合わせた話題の引き出しを準備することも欠かせない。
銀座店も見学した学生は、「洋服を作るには、どのくらいの時間がかかるのか?」「デザイナーは、どんなことを考えて洋服を作っているのか?」などを質問した。洋服は、デザインから半年以上を費やし、多くの人の手を経て生まれるという。そしてリカルドは、例えば21-22年秋冬ではコロナで“おうち時間”が長かったからこそ自然に触れたいと願う人に寄り添い、アウトドアの要素を盛り込んだ。大勢が携わった洋服を、また大勢が特別な体験を考えながら接客・販売している。これが“ラグジュアリーがラグジュアリーな理由”だ。
参加した学生のレポートから
「ラグジュアリー」という言葉にインスピレーションを受けました。ラグジュアリーな体験は、さまざまな接客業に大切なものだと感じました。もし将来、人にサービスを提供する仕事についた時は「ラグジュアリー」という言葉を意識して接客したいと思いました。(Eri 中学2年生)
普段からラグジュアリーブランドにはそれぞれのカラーがあると感じています。時代が変化する中、それを保ち続けるのはとても難しいことだと思います。皆さんが「バーバリー」というブランドを理解し、自分を通して表現している姿を見て、「仕事」について新たな見方を得ることができたように感じています。自己を通して仕事と関わることが、会社にも自分にも良い影響をもたらす様子が伝わってきました。(Mutsuko FFIのOBの大学2年生)
素敵な経験をありがとうございました。皆さんはどのような経緯で今の会社に入ったのか、その道を行くきっかけや動機はあったのか、それから今の役職や仕事に満足しているのか?などの疑問が生まれました。お返事をいただけたら、今後に活かしたいと思います。(Momoka 高校2年生)
池田エライザさんがアンバサダーに就任されたと仰っていましたが、アンバサダーを選ぶ基準みたいなものはあるんでしょうか?モデルさんの選び方次第で、ブランドの印象は変わるのでしょうか?(Ayane 中学2年生)