モンクレール(MONCLER)の2021年12月期決算は、売上高が前期比42.0%増の20億4610万ユーロ(約2639億円)で、19年比では25.7%増だった。EBIT(利息及び税金控除前利益)は前期比63.5%増の6億306万ユーロ(約777億円)、純利益は同36.9%増の4億1136万ユーロ(約530億円)と増収増益だった。
ブランド別で見ると、「モンクレール」の売り上げは同26.6%増の18億2416万ユーロ(約2353億円)だった。アジアの売り上げが同24.6%増と引き続き好調で、中国、韓国、日本が成長をけん引した。特に中国は北京オリンピックによるウィンタースポーツへの関心の高まりが貢献し、10〜12月期は3ケタに近い成長率を記録した。日本もコロナ禍の制限が少し緩和され、2ケタの成長を達成した。アメリカ地域も同20%増と好調だった一方で、欧州・中東・アフリカ地域(EMEA)の売り上げは同3%落ち込んだ。
20年12月に買収した「ストーンアイランド(STONE ISLAND)」は同35%増の3億1000万ユーロ(約399億円)の売り上げを計上した。EMEA(欧州・中東・アフリカ地域)のビジネスが最も大きく、売上高の77%を占めた。
同社は昨年ECビジネスを内製化し、現在売り上げの15%を担う。今後はリアル店舗でのデジタル化も推し進める。また他社同様に値上げも行っており、22-23年秋冬コレクションから価格を10%上げたという。決算会見でルチアーノ・サンテル(Luciano Santel)=チーフ・コーポレート&サプライ・オフィサーは「生産コストや原材料の価格高騰、労働賃金の引き上げなどによるもの。22年春にさらなる値上げをする予定はないが、23年春にはその可能性がある」と説明した。
また同社は現在ルーマニアに工場を、ウクライナ・キエフに店舗を構える。決算会見はロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始する直前に開かれたが、ロシアのビジネスについて聞かれると、ロベルト・エッグス(Roberto Eggs)チーフ・ビジネス・ストラテジー&グローバル・マーケット・オフィサーは「心が痛むニュースだ。われわれはキエフに店舗を構えており、現地のチームと密に連絡を取り合っている」と話しつつ、ロシアとウクライナの売り上げは全体の2%にしかならず、大きな影響はないという。一方で今後はルーマニアの工場を倍の規模に拡大する予定で、サンテル=チーフ・コーポレート&サプライ・オフィサーは「(ウクライナ)に隣接するルーマニアの人々をとても心配している。しかし、サプライチェーンには影響はないだろう。現在ルーマニアの工場は全体の生産の15%を担うが、来年度中には20%、数年以内に30%まで引き上げる予定だ」と話した。
レモ・ルッフイーニ(Remo Ruffini)会長兼最高経営責任者(CEO)は「21年の業績は、大きく3つの言葉で説明することができる。グループ力、ビジョン、結果だ。買収した『ストーンアイランド』は早速業績に貢献し、グループ力の強さを示す。またコミュニティを強化し、ビジネスのあらゆる面においてサステナビリティを取り入れ、デジタル施策に注力するというビジョンもコロナ禍でもブレることなく掲げ、成長をけん引した。そして最後に素晴らしい結果を達成できたのは、あらゆるステークホルダーのおかげだ」とコメント。モンクレールは今年創業70周年を、「ストーンアイランド」は創業40年を迎える節目の年だ。新型コロナウイルスやロシアのウクライナ侵攻など不安定な情勢が続く中でも、「われわれのビジネスの未来は明るい」と自信を見せた。