田中文江による「フミエ タナカ(FUMIE TANAKA)」は16日、2022-23年秋冬のファッションショーを行った。20年春夏にブランド名を「ザ・ダラス(THE DALLAS)」から「フミエ タナカ」に改名後、ショーは初となる。会場の恵比寿ガーデンプレイス中央広場は、故カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)が20年前に「シャネル(CHANEL)」の東京でのショーの会場に選んだ特別な場所であり、もともと「フミエ タナカ」が(コロナ禍でキャンセルになった)20-21年秋冬ショーを計画していた念願の地だ。
35人のモデルたちが着こなす
無国籍でエキゾチックなスタイル
コレクションはビンテージ、クラシック、ミリタリー、アウトドアなどさまざまな要素を融合した「フミエ タナカ」らしいミックススタイル。スリットを入れたジャケットとパンツのセットアップがあれば、エキゾチックな花柄や幾何学柄のドレス、ミリタリーやアウトドアの要素を入れたアウター、ロマンチックなレースのフリルドレスまで豊富にそろう。カラーパレットは、ブラウンやカーキ、グレーを基調に、ブルーとシルバーの差し色がポイント。枠にはまらない無国籍でエキゾチックな持ち味が全面に出ていた。そのウエアの多様な個性を表現するように、肌の色もジェンダーも異なる35人のモデルたちがコレクションを着こなした。
東京発の「エフシーイー(F/CE.)」と初めてコラボレーションし、シルバーバックルとフリンジを施したバックパックやクラッチバッグも発表。コーディネートとして合わせた「レッド・ウィング(RED WING)」のシューズもスタイルを際立てた。
ラスト4ルックには、ブロンドのウィッグの毛を使った、ショーピースのスカートやドレスが登場。ブロンドは田中デザイナーを象徴するヘアカラーであり、幼い頃に人形遊びが大好きだったという自身のアイデンティティーが現れている。
テーマの“エリア23”と
フィナーレに込めた平和への祈り
今季のテーマ“エリア23(Area 23)”は、田中デザイナーのラッキーナンバーであり、“ふみ”の語呂でもある。また数字の2は“人への感謝”を、3は“周りには仲間がいるから、勇気をもって前に進める”を意味しているという。
フィナーレでは、ランウエイに一筋の光が差し込み、モデルたちが広場に集合していく。そして大きな輪になり、静かに空を見上げた。「今、世の中で起こっていることを考えて、生きていることが当たり前ではないということを、モデルやスタッフ、来場者のみんなで再認識する時間にしたかった。ショーが開催できたこの一瞬の幸せを噛み締めて、日々の感謝を伝えたかった」。モデルが退場すると、涙を流す田中デザイナーも姿を見せた。その姿に「ブラボー」と歓声が上がり、涙ぐむ者もいた。平和への願いを込め、感情に訴えかけるコレクションと共に、「フミエ タナカ」は強く前進する。