毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2022年3月14日号からの抜粋です)
藪野:2022-23年秋冬トレンドはミラノから完全にテーラリングでした。伝統的なメンズウエアの要素と掛け合わせることで女性性を際立たせるスタイルが本当に多かったです。パリでも初日の「サンローラン(SAINT LAURENT)」を見て、「決定的だ」と確信しました。
村上:売れるかどうかについてはどう思います?メンズでは在宅勤務が増えて、スーツの意味が変わった。スーツが非日常になってきたからこそ、主張のあるデザインがイケそうなんだけど。
藪野:2年間のコロナ禍のリラックスした(だらけていた)ファッションから、「再びちゃんと服を着こなしたい」というムードはあると思っていて。ドレスはデイウエアではないので、テーラリングで日常にかっちり感を取り入れるのは広がるんじゃないでしょうか。スタイルのバリエーションも増えていますし、テーラリングを自分らしく取り入れるという流れは秋冬に来そうです。
村上:確かに「グッチ(GUCCI)」や「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」もそんな感じがありましたね。
藪野:新生「ボッテガ・ヴェネタ」、よかったです!百年以上前の彫刻から着想を得たシルエットで、新しいプロポーションが作れるんだと感心しました。
村上:全体的なバランスがよかったですよね。マチュー・ブレイジー(Matthieu Blazy)はフィービー・ファイロ(Phoebe Philo)の下で働いていたから新しいプロポーションを作る力がある。
藪野:まさに!ラフ・シモンズ(RAF SIMONS)の下で培った奇抜な素材をコレクションに落とし込むセンスなど、これまでのキャリアが垣間見えるコレクションでした。
村上:アイコンバッグ“カバ”の復活など、ブランドのヘリテージもしっかり組み込んでいて、本当にバランスがいい。
藪野:でも、値段を見てビックリしましたね。ファーストルックのバッグは、なんと80万円台後半でした。
村上:“フィービー門下生”としてのセンスも発揮してたから、彼女が復活したら面白くなりそう!
藪野:確かに、フィービーの新ブランドに先んじたデビューでよかったですね。彼女のカムバックは皆が心待ちにしていますが、それによって勢力図もまた変わりそうです。